第38回民教協スペシャル テレビ朝日『君たちと見たもの~全盲先生...魂の記録~』を2月に放送

編集広報部
第38回民教協スペシャル テレビ朝日『君たちと見たもの~全盲先生...魂の記録~』を2月に放送

テレビ朝日が制作した『君たちと見たもの~全盲先生...魂の記録~』が2月10日(土)を中心に、民間放送教育協会(民教協)に加盟するテレビ33局で放送される。加盟局の制作者から寄せられた企画の中から1作品を番組化する「民教協スペシャル」の38回目で、今回は20局32企画の中から審査の結果、同作が選ばれた。

国語教師として普通中学校に勤めていた全盲の故 新井淑則さん(愛称:ヨシノリ先生)の歩みを記録した同作。大学卒業後、教師として日々を送っていたが、28歳で右目に発症した網膜剥離により、34歳で左目も失明して全盲に。自殺も考えたが、10年以上の訓練の末、盲導犬とともに普通中学への復職を果たした。ヨシノリ先生は生徒の声に耳を傾けて思春期の悩みと向き合い、また生徒たちは先生の学校生活を補助し、互いに助け合う様子などを映した。ディレクターを務めた猿渡研二氏が所属する制作会社フレックスではヨシノリ先生を2009年から長い間取材してきたが、その始まりは"見えない先生"が中学生にどう教えているのかという素朴な疑問だったという。

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<授業中のヨシノリ先生と生徒たち>

教師生活に終え、最後の勤務日となった卒業式の日。同僚に話したメッセージは「前例のない教師だったので頑張ってきたけど、いい父親、いい夫ではなかった」だった。番組後半ではベッドで寝たきりとなったヨシノリ先生の姿が描かれ、この言葉が意味するものを考えた。

猿渡ディレクターはヨシノリ先生を「生徒の優しさを引き出す姿だけではなく、飾らない人柄が魅力だった」とし、取材は「卒業式の直後から10カ月連絡が途絶えるなど、とまどうこともあった」と振り返った。番組については「生きることの尊さや重さが伝われば」と期待を込めた。

1月に完成披露試写会が開かれ、審査委員を務めた森達也(映画監督・作家)と星野博美(ノンフィクション作家)、次回から審査委員を務める大島新(ドキュメンタリー監督・プロデューサー)の3氏が講評した。番組終盤の展開に対して「もう少しやりようがあったとは思うが、一つの番組として完成させたのは努力のたまものだ」(森氏)、「複雑な問題に対する猿渡ディレクターの葛藤が見られた。視聴者も何か感じるものがあるはずだ」(星野氏)との評価があった。また、大島氏は制作者の立場から「自分ならどうまとめ上げるか、ドキュメンタリーのアウトプットについてあらためて考えるきっかけになった」とコメントした。

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<病床のヨシノリ先生>

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