放送文化基金が主催する第49回放送文化基金賞が6月7日に発表された。民放の番組がドキュメンタリー、ドラマ、エンターテインメントの3部門で最優秀賞に輝いた。同賞は、過去1年間(2022年4月―23年3月)の放送・配信された中から優れた番組・コンテンツや個人・グループに贈られる。
ドキュメンタリー部門で最優秀賞に選ばれたのは北海道放送の『性別は誰が決めるか ~「心の生」をみつめて~』。身体が女性で心が男性のトランスジェンダー男性と、身体も心も男性のカップルの生き方を描いた番組で、生殖腺がないことが条件とされる日本の戸籍の性別変更の現状を浮き彫りにした。被取材者との信頼関係を築き、「プライバシーにも触れる綿密な取材を可能にし、大きな問題提起ができた」点が評価された。
ドラマ部門は関西テレビの『エルピス-希望、あるいは災い-』が最優秀賞を獲得した。連続殺人事件で犯人とされ死刑が確定した男の冤罪疑惑を、スキャンダルによってエースの座から転落したアナウンサーとバラエティ番組の若手ディレクターらが追った骨太のドラマ。「映像、演出、演技、ストーリー、あらゆる点でこれまでとは違う一段レベルの高い」「冤罪と政治権力という実際の社会問題をえぐる批判性の高いドラマ」などが選考理由であった。
エンターテインメント部門の最優秀賞は、読売テレビと中京テレビの共同制作『~この後どうする?密着TV~ 終わりが始まり』。お祭りやイベントなど、人々が集う"熱狂"までの道のりではなく、終わった後を追跡し、「日常のかけがえない一瞬をカメラで捉え、人生を優しく肯定する珠玉のドキュメント・バラエティ」と評価された。
ラジオ部門では、ニッポン放送の『きたやまおさむ「イムジン河」スペシャル~音楽は時代(とき)を超える~』が優秀賞を受賞した。分断された国土、民族の想いを歌った『イムジン河』の意味や音楽の持つ力を語り、考えていく番組で、「深夜放送世代にはとても快い音楽プログラム」「フォーク世代たちのさまざまな言葉は興味深かった。楽しかった」などが選考理由に挙げられた。また、最優秀賞は和歌山県田辺市にあるコミュニティFM「FM TANABE」の『講談風大河ラジオドラマ「弁慶記」』が受賞した。
個人・グループの民放関係受賞者は、放送文化部門において、「radikoの開発・普及に貢献」で香取啓志氏(radiko最高技術顧問、メディアプラットフォームラボ取締役所長兼技術戦略室長)、「原爆ドキュメンタリーを学校の平和教材に活用」で広島テレビ制作スタッフ、20年にわたる地上波プライムタイムでの経済ドキュメンタリー番組の放送により『ガイアの夜明け』制作スタッフ(テレビ東京)が選ばれた。
放送技術部門では、制作系番組制作フローを効率化するDXツール『Alligator』の開発でAlligator開発グループ(日本テレビ、NEC、NTT東日本、オクルウェブ)と、AIモザイク編集ソフト「BlurOn」の開発でBlurOn開発チーム(日本テレビ、NTTデータ)が受賞した。
このほか、ドキュメンタリー、ドラマ、エンターテインメント、ラジオの各部門の奨励賞に民放の5作品が選ばれた(下記のとおり)。贈呈式は7月13日に(木)に行われる。受賞一覧等の詳細は放送文化基金のウェブサイトを参照。
放送文化基金賞 奨励賞
【ドキュメンタリー部門】
こどもホスピス~いのち輝く"第2のおうち"~
(朝日放送テレビ)
にっこり笑って~山あいの写真館 10年の物語~
(高知放送)
【ドラマ部門】
ブラッシュアップライフ
(日本テレビ)
【エンターテインメント部門】
THE 闘牛アワー
(琉球放送)
【ラジオ部門】
音で綴る復帰50年「民の謡 島に息づく琉球民謡」「沖縄のお笑い ~そこに込められた想いを辿る~」
(琉球放送)