米配信サービス初の連合体 政府からの規制に備える Apple、Amazon、ROKUは不参加

編集広報部
米配信サービス初の連合体 政府からの規制に備える Apple、Amazon、ROKUは不参加

Netflixやディズニーなど米配信事業者大手が結集し、この分野で初の業界団体「Streaming Innovation Alliance」(SIA)を9月末に発足させた。リニアからインターネット配信へとコンテンツの視聴方法が急激に移行するなか、これまで政府の規制からほぼ無縁だった配信業界もその対象となる動きがあることから、業界が結集して政府への発言力を高めていこうというのが目的だ。

創設に参画し、初代のボードメンバーに名を連ねるのは、大手がNetflix、パラマウント(Paramount+、Pluto)、ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー(Max)、コムキャスト(ピーコック)、ディズニー(Hulu、Disney+ほか)、テレビザユニビジョン/ユニビジョン(Vix)、小規模の事業者はForUsByUs Network、Vault、Afroland.tvといった顔ぶれ(冒頭の画像は公式ウェブサイトのメンバー一覧)。

上級顧問としてSIAを支えるのはフレッド・アプトン元連邦下院議員(共和党)とミニョン・クライバーン元FCC委員長代理(民主党)。SIAの創設に尽力したのは、モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA/旧アメリカ映画協会)のチャールズ・リヴキンCEO兼会長だ。MPAは米国大手映画スタジオ5社とNetflixで組織する業界団体。リヴキン氏は声明文で「MPAはSIAと協力して連邦・州政府が配信サービスを発展させる方向で動くよう働きかけていく。政府の規制で消費者が楽しんでいる配信サービスが損なわれてはならない」(抜粋翻訳=編集部)と話している。

デジタル時代の進展に伴い、規制当局が時代に即した新たな法律を模索・検討するなか、SIAに参加する"プレミアムコンテンツ"に特化した配信事業者は、TikTokやMetaのように"ユーザー生成コンテンツ(UGC)" のソーシャルメディア・プラットフォームとは異なることを強く訴えようとしている。政府の規制は往々にしてデジタルというくくりで配信もソーシャルメディアも一緒にしているというのがSIAの懸念だ。

例えば、今年初めに米議会で提案された「Kids Online Safety Act 」(KOSA)法案は、過激派や危険なオンラインコンテンツから児童を守るためのもの。しかし、米国の消費者団体らからは、法律の適用範囲が広すぎるとの批判もある。きちんとキュレートされ、審査された配信サービスのコンテンツまで不必要に取り締まることになるからだと指摘している。

さらに当面の懸案として配信業界が直面しているのが、全米のローカル放送局が従来の法律が対象としていない配信サービスにも規制をかけるようFCC(連邦通信委員会)に訴えていること。SIAとしては、まずこれを何とかしのぎたいところ。SIAが今後、業界でどのように発言力を高めていくか現段階では不明だが、Apple、Amazon、ROKU、FOX傘下のTubiといった、広告入りサービスの大手が不参加であることからも、決して一枚岩ではないことが窺える。

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