BPO検証委 毎日放送『ゼニガメ』偽の買取現場への「密着コーナー」に「放送倫理違反」の意見

編集広報部
BPO検証委 毎日放送『ゼニガメ』偽の買取現場への「密着コーナー」に「放送倫理違反」の意見

BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会(=小町谷育子委員長、以下「検証委」)は424日、毎日放送の情報バラエティ番組『ゼニガメ』に、「放送倫理違反があった」とする意見書を通知・公表した(意見書全文はこちらから)。

検証委で審議の対象となったのは、家屋清掃と出張買取を一度に行う業者を密着取材し、放送した内容が業者による"偽装"や"仕込み"があったと判明した2023年11月29日、24年5月8日、同年7月17日の3回。

23年11月と24年5月の2回は、業者が顧客の要望に応じて不動産の買い取りを行ったが、この顧客は業者の社長の知人であり、この不動産とは無関係で、不動産は業者の関連会社の所有物であったことが後に明らかになった。この2回の放送では、不動産の買い取りに専門家である司法書士が同席していることから、不動産の権利関係の確認が適正に行われていることが担保されていると意味しており、さらなる確認まで必要だったとは言い難く、放送倫理違反があったとまでは言えないとした。

一方で、24年7月の放送では、家の清掃作業で発見した金庫とその中に入っていた金の延べ棒を業者が"仕込んでいた"と後日判明した。この放送について、基本的な事実確認などの取材が不十分だったと言わざるを得ないとして、放送倫理違反があったと判断した。

424日の会見(=冒頭写真)で小町谷委員長は、本件に対する検証委の考察として▼専門家(司法書士)が加わっていた偽装、▼不十分だった基本的事実確認、▼サービス利用者を業者から紹介されることの落とし穴――を挙げた。そのうえで、民放連放送基準の「報道活動は市民の知る権利へ奉仕するものであり、事実に基づき、公正でなければならない」(31)、「ドキュメンタリーや情報番組、スポーツ番組などにおいても事実に依拠する場合には、虚偽や捏造が許されないことはもちろん、過剰な演出などにならないように注意する」(民放連放送基準解説書)や、毎日放送の放送基準「情報の根拠を明確にし、正確性を追求する」を提示。「これらの基準に反して事実と異なる内容を放送したことにより、視聴者の信頼を大きく裏切ることになった」と指摘した。

また、会見に出席した検証委の米倉律委員は、「制作における一つ一つのプロセスでやるべき確認やコミュニケーションの積み重ねこそが重要になる。日常の仕事の中での基本部分を怠らない以外に特効薬はない」と述べた。同じく岸本葉子委員長代行は、「インターネットの倫理感覚でテレビの取材を受けたり、出演したりする人は多くなっていく。テレビの倫理感覚はそれらと一線を画すものであることを、制作の一つ一つのプロセスにおいて実践し、ときには言葉ではっきりと伝え、示していく必要がある」と発言。そのうえで、意見書に記載した「取材に協力してもらう関係であったとしても、取材対象者とは常に一定の距離感や緊張関係を保ちながら、裏付けは十分に行うと示すことが必要である。そうした努力が本件放送のような問題の発生を未然に防ぐことにつながるのではないか」は「放送に携わるすべての方に読んでいただきたい」と強調した。

 毎日放送は同日、「指摘を真摯に受け止め、今後の番組制作において事実確認の徹底など、引き続き再発防止策を実行してまいります」とのコメントを発表した。

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