BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会(=小町谷育子委員長、以下「検証委」)は7月11日、TBSテレビが2024年10月19日に放送した『熱狂マニアさん!』に、「放送倫理違反があった」とする意見書を通知・公表した(意見書全文はこちらから)。同番組が放送される2日前の10月17日、検証委はTBSテレビ『東大王』の一部について、番組と広告の識別が曖昧になっていると警鐘を鳴らす討議結果を公開しており(討議の結果、審議入りはせず)、同じ放送局で同様の問題が繰り返し表面化していることを重く見て、TBSテレビから報告書などを取り寄せ、検討したうえで今回の事案について審議入りを決定していた。
検証の対象になったのは、熱狂しているものや好きなことをマニアに紹介してもらう同番組のうち、家具・インテリアを扱う大手企業1社のマニアを取りあげた放送回。2時間のスペシャル番組全編が当該企業の特集であり、番組本編とは別に同企業の提供表示や本編と直結または近接してCMが放送されている。
検証委は、▼番組と広告の識別に関する番組制作者の認識が甘く視聴者から疑念を持たれる可能性が高い内容が放送されたこと、▼局内の情報共有が十分でなく特集した企業のCMが番組本編と直結もしくは近接して流れたこと、▼こうした事態を事前に防ぐ考査の役割を十分に果たすことができなかったこと――の3点が相乗的に作用し、民放連の放送基準「広告放送はコマーシャルとして放送することによって、広告放送であることを明らかにしなければならない。」(第92条)および「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」に反したと判断した。
会見(=冒頭写真)で、高田昌幸委員長代行は「広告と番組を明確に区分することは民間放送にとっての生命線にもかかわらず、その部分が曖昧になってしまったと感じる」、大石裕委員は「類似の番組が数多くの放送局で放送されていることで、番組と広告の識別に関する警戒感が薄れているのではないか」と発言。小町谷委員長は、「委員会の決定は対象局だけに向けられているのではく、放送業界全体に向けた意見であるので、あらためて自局で問題がないか振り返っていただきたい」と述べた。