BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会(=曽我部真裕委員長、以下「人権委」)は3月18日、テレビ東京が放送した警察密着番組に対して放送倫理上の問題ありとする見解(※外部サイトに遷移します)を公表した。なお、同様の事案についてBPO放送倫理検証委員会は1月17日、「放送倫理違反」の意見を公表していた(詳細はこちらから)。
審理の対象は、同局が2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時‼』のうち、人気アニメを連想させる商品の不正競争防止法違反事件への捜査のうち捜査会議など「事後撮影」の部分に限定。これは、テレビ東京がおわび放送・おわび文によって申立人の被害は一定程度回復されているのに対し、「事後撮影」部分については当事者間での話し合いが相容れない状況となっていたため。申し立ての内容は、捜査先の会社役員らが「信用、プライバシー、名誉感情を大きく毀損した」と主張したほか、捜査場面などが事後撮影で行われたことについて謝罪と経緯の説明を求めるもの。
人権委は、人権侵害に関しては、一部に申立人らの名誉を棄損する内容があったと判断したが、すでにおわび放送などでその被害は一定程度回復しているとし、本決定であらためて人権侵害があったと扱うことはしなかった。他方、放送倫理上の問題については、意図的に事実と異なる放送内容とする「やらせ」や「ねつ造」があったとは認められないとしたものの、▶正確さ・公正さに問題がある、▶取材される側への配慮に欠き過度に社会的制裁を加えるものになっている、▶視聴者の期待、信頼に反する、ことから放送倫理上問題があると判断した。
そのうえで、類似の警察密着番組が他局でも放送されていることを踏まえ、警察密着番組の意義や、警察への密着のため被疑者側の視点に欠け構造的に人権侵害につながるリスクがあることなど内在する危険性について、放送界全体として考えるよう求めた。
最後に、4期12年間、人権委の委員を務め、3月末をもって退任する曽我部委員長から「制作者は、よい番組を作ろうという思いはあるものの、制作会社との行き違いや、過酷な勤務状況による不手際について、問題点として指摘することが多かった」「多様な価値観が顕在化しているため、放送局は公共的な役割を担う存在として、価値観を常にアップデートする必要を強く感じる」との振り返りがあった。
テレビ東京は同日、「今回のBPOの見解を真摯に受け止め、視聴者の皆様の信頼を損なうことのないよう、より一層の再発防止に努めてまいります」とのコメントを発表した。