九州朝日放送(KBC) 「ふるさとWish」「Glocal K」の両プロジェクトを解説 地域のネットワークが財産に

編集部

10月6日、「テレビ局は地域ときずなをどう深めるか~KBCふるさとWishとGlocal Kの試み~」と題したウェビナーが開かれた。地域とテレビの未来をテーマとしたウェビナーの一環で、九州朝日放送(KBC)が展開する2つの事業について担当者が解説し、立ち上げの背景や得られた成果、今後の見通しなどを語った。主催はメディアコンサルタントの境治氏。

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KBCは2019年1月、福岡県内の全60市町村をめぐり、特定の市町村の魅力を1週間にわたって取り上げる「ふるさとWish」を開始。現在は3周目に入っており、県民の認知度は約6割に上るという。

地域共創ゼネラルプロデューサーとしてプロジェクトを立ち上げた大迫順平取締役は、「テレビ離れや人口減少、減収予測などの要因をふまえ、地域課題の解決を目的に企画した」と経緯を説明。これまでに福岡・佐賀の全80自治体を訪れ、首長や自治体の関係者と顔の見える関係を築くことで、現場からさまざまな情報が得られるようになったことなどを成果に挙げた。

プロジェクトはテレビ、ラジオ、CM、イベントやSNSなどで多角的に展開。制作費の一部には自治体の予算や国・県の事業費、企業の地域支援予算が充てられており、ブランドの確立とともにマネタイズの基盤強化に今後も取り組むと展望した。

続いて、地域の発信力の強化と課題解決への貢献を目的とするKBCの100%子会社「Glocal K」(グローカル ケイ)について、持留英樹代表取締役社長がプレゼン。かつてはKBCの報道担当で大迫氏の部下だった持留氏は、「出来事を報道するだけでは課題解決につなげることは難しいと感じていた」と、昨年春の同社設立の背景にあった思いを吐露。放送局が持つ企画や編集などのノウハウ、継続性のある情報発信の方法などを活かし、自治体や企業のブランディング強化を手掛けているという。

同社はこの夏、福岡県内の旅のルートを検索、シェアできるウェブサービス「たびつく」を開始。「ふるさとWish」を担当していた際、自治体側から「紙の観光情報誌を作成したが効果が見えない」「有名なスポット以外に観光客が来てくれない」などの悩みを聞いており、ユーザー同士がコミュニケーションできる仕組みを作ることで解決を図った。主なターゲットは20~30代の女性。利用データを自治体にフィードバックすることもでき、「自治体への恩返しができれば」と持留氏。

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<ウェビナーの模様>

ウェビナーにはNHK放送文化研究所の村上圭子氏がゲスト参加した。「Glocal Kとしていつまでに成果を出す見込みか」との問いに、持留氏は「2023年度の単年度黒字化を目指す」と回答。また、ブランディング支援に留まらず、"総合商社"のような機能もゆくゆくは担うのかを問われると、「既に催事の開催なども手掛けているが、どの領域まで踏み込むかは試行、実践を重ねている」(持留氏)と述べた。

最後に、「現場に足を運ばないと分からないことが多いのは記者の仕事と同じだ」と大迫氏。プロジェクトを通じて、そうした情報が得られる地域のネットワークがKBCの財産になっていると振り返った。また、持留氏は「ローカル局を取り巻く課題は多く、互いにライバルではあるものの、協力できる部分では連携を進めていきたい」と、局を越えた協調への希望を語った。

「地域とテレビの未来ウェビナー」は1~2カ月に一回程度のペースで開催していくという。

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