岩手朝日テレビ・四戸俊行さん 岩手の魅力、あると思います!『Go!Go!いわて』が伝えたいもの【制作ノートから】⑮

四戸 俊行
岩手朝日テレビ・四戸俊行さん 岩手の魅力、あると思います!『Go!Go!いわて』が伝えたいもの【制作ノートから】⑮

作り手の思いに触れ、番組の魅力を違った角度から楽しむシリーズ企画「制作ノートから」。第15回は岩手朝日テレビの四戸俊行プロデューサーに、情報番組『Go!Go!いわて』(土、7:30~10:55 ※8:00~9:30は『朝だ!生です旅サラダ』を放送)について執筆いただきました。この5月に放送200回を突破し、すっかり岩手の土曜の朝に馴染んだ同番組について、番組の立ち上げから、人気の秘訣まで教えてもらいました。(編集広報部)


土曜の朝に生まれた、岩手の「今」を伝える番組

2021年4月、岩手朝日テレビの新しい情報番組『Go!Go!いわて』がスタートしました。毎週土曜の朝、岩手の「今」を生放送で伝える――そんなコンセプトで始まった、地域密着型の情報番組です。

司会を務めるのは、天津木村さん。あの"エロ詩吟"で知られる木村さんが、岩手で朝の情報番組を仕切る......。当初名前が上がったとき、社内でも戸惑いの声は少なくありませんでした。木村さんを起用したのは、弊社の畠山大社長。「なぜ岩手に縁もゆかりもない人を?」「情報番組なのに"エロ詩吟"の人?」という声に、社長は「木村さんの素の人柄、聞き役としての丁寧さは本物。むしろ真面目な岩手の空気にこそ合う」と断言しました。あえて"芸人"ではない木村さんの「素の姿」に賭けてみたい、という判断でした。

さらに、当然「新幹線通いだろう」と思っていた私たちに対し、木村さんは「移住します」とひと言。当時、芸人活動と並行し、ヒロミさんの運転手を続けていた木村さん。「通いでやっても地元には愛されないよ」というヒロミさんからの助言を受け、家族とともに盛岡に移住する覚悟を決めてくれたのです。その本気に「これは自分たちも中途半端な気持ちではいけない」と番組に向き合う覚悟を新たにしました。

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<番組MCの天津木村さんとアシスタントの石田瑠美子アナウンサー、中央は番組で33市町村の魅力をまとめた地図>

「当たり前」が当たり前じゃないことに気づくきっかけに

番組のテーマは、「岩手のいい人」「岩手のいい場所」「岩手のいいコト」。どれも特別なものではなく、すぐそばにある「等身大の岩手」です。自然が美しく、食べ物がおいしくて、人もやさしい――どれも、地元で生まれ育った私たちには「当たり前」でした。けれど、県外から来た木村さんの目には、その「当たり前」が全て新鮮に映って見えます。「なんでこんなに人が親切なんですか?」「この食堂、東京にあったら絶対行列ですよ」「水がおいしいって、すごいことですよね」......そんな素直な言葉が取材先の人を笑顔にし、私たち地元の人間にも「そういえば、自分たちもすごいものに囲まれていたんだな」と再発見をもたらしてくれます。自分たちが当たり前だと思っていた日常への新しいまなざし。それこそがこの番組で一番届けたいものだと日々感じます。

岩手の"今"に体当たり!街ブラが生むご縁と発信力

番組ではこれまで、地元のお祭りにガチ参戦したり(2024年9月28日放送※)、岩手の最高峰・岩手山に登頂したり(2023年9月23日、30日放送※)と、体当たり企画も数多くこなしてきました。芸人さんならではのユーモアと、地域と正面から向き合う誠実さが、木村さんの魅力をより際立たせています。

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<左:伝統の祭りに参加 右:番組メンバーで岩手最高峰に登頂>

そんな企画の中でも人気なのは、市町村を巡る街ブラ企画「天津木村のどっかええトコありますか?」。この企画では、必ず訪問先の首長さんにごあいさつし、話を伺うことにしています。リーダーの素顔や地元愛が伝わることは、普段は知ることのない土地の新しい魅力を発見するきっかけになります。さらには、ごあいさつがきっかけで、木村さんが地元のイベントやお祭り、講演会などに呼ばれることも増えました。こうして広がっていくご縁もローカル番組ならではのうれしさです。

スクリーンショット 2025-08-01 163011.png <人気企画「どっかええトコありますか?」は人とのふれあいも魅力>

「木村さんがいるから」が、岩手を変える!?

そして、木村さんが「岩手の中の人」になってくれたことで、他の芸人さんやタレントが岩手を訪れやすくなったことも、番組を作るうえでの大きなメリットになったと感じます。「木村さんがいるなら」と、視聴者にとってよく知ったゲストの出演が増えたことで、岩手の魅力を全国に発信できる機会が着実に広がりました。木村さんを通じて、岩手の良さが確かに"リアル"に伝わっていっています。あの"エロ詩吟"の芸人さんが、いまや岩手県民の隣人のような存在に――その光景は、ちょっとした奇跡なんじゃないかとも思っています。

さらに「うれしい誤算」がもうひとつ。実は、現場スタッフの多くはこれまでアナウンサー主体の番組づくりが中心。タレントさんと一緒に"ぶっつけ本番"のロケを回す経験は、ほとんどありませんでした。以前は、ディレクターがしっかり仕込まないとロケが成立しないのが当たり前。でも、『Go!Go!いわて』では台本なし、行き当たりばったりでカメラを回すうち、予想もしなかった面白さや発見がどんどん現場で生まれます。気づけば撮れ高は膨らみ、VTRの編集でスタッフが苦労する......という、うれしすぎる悲鳴も日常に聞かれるようになりました。

時間帯視聴率1位! 地道な積み重ねが実を結んだ

地道に地域と向き合い、その日常の魅力を発信し続けた積み重ねが実を結び、2023年からは時間帯視聴率でついに1位を獲得。ようやく県民に受け入れてもらえたのかな、と感じています。最近では、取材先やイベント会場などで、木村さんに「テレビ見てるよ」「岩手に来てくれてありがとう」と声をかけてくださる方が本当に増えました。番組の方向性が間違っていなかったという実感であり、県民の皆さんが「岩手のことをもっと知りたい」「もっと誇りを持ちたい」と思っていることの表れでもあると思います。

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<2025年5月に放送200回を突破>

日常の中にある誇れる岩手 視聴者と「一緒につくる」番組へ

その思いを形にしていくため、今、私たちが大切にしているのが、視聴者との双方向での番組づくりです。SNSやメールなどで寄せられる声に耳を傾け、そこから生まれたロケや企画も少なくありません。これまで以上に、地域の皆さんと一緒に番組を育てていけるような仕組みづくりを進めていきたいと考えています。

岩手には、大谷翔平さんのように、世界で活躍するスターがいます。でも、日常の暮らしの中にも、地元ならではのスターや、世界に誇れる魅力があると、私たちは思っています。これからも『Go!Go!いわて』は、そんな「日常の宝物」を木村さんと一緒にすくい上げ、笑いや驚き、ちょっとした感動とともにお届けしていきます。

岩手の魅力、まだまだ――「あると思います!」


<編集広報部注>
※記事内でご紹介いただいた放送回は、IAT岩手朝日テレビ公式YouTubeチャンネルでご覧いただけます。

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