IBC岩手放送 自治体と共催する「ほっとゆだ北日本雪合戦大会」 人類最古のウインタースポーツ(かもしれない)

石川 美樹
IBC岩手放送 自治体と共催する「ほっとゆだ北日本雪合戦大会」 人類最古のウインタースポーツ(かもしれない)

はじめに、2024年1月1日に発生した「能登半島地震」の被災者の皆さまに心からお見舞い申しあげます。復興に向けて長い取り組みになると思いますが、一日も早く日常が取り戻せるように心からお祈りしています。雪合戦大会をご紹介するにあたり、震災復興の絆を感じたエピソードから始めたいと思います。

雪合戦の絆

「ほっとゆだ北日本雪合戦大会」は、秋田県境の岩手県西和賀町(にしわがまち)で毎年1月最終週に行われているスポーツ雪合戦の大会で、今年で30回目を迎えました。IBC岩手放送と開催地・西和賀町の共催で、大会の模様をテレビ番組化しダイジェストで伝えています。今年は1月27、28日に大会を実施し、2月12日にテレビ番組を放送しました。

東日本大震災後初めての大会となった2012年大会は、「絆いわて ふるさとは負けない!」というキャッチフレーズで行われました。岩手県沿岸部は雪の少ない地域ですが、それでも雪合戦のチームが少なからず存在します。彼らの無事を確認して、再会を喜び合った大会となりました。

そして翌13年からしばらくの間、全国から復興支援で岩手県に派遣された「応援職員」の皆さんが大会に参加してくれるようになりました。ともに復興に取り組んだ仲間たちに雪国ならではの雪合戦を体験してもらい、感謝とともに思い出を作ろうというのが参加の動機です。まさに「雪合戦の絆」を感じたエピソードでした。

「スポーツ雪合戦」誕生

1987年、北海道壮瞥町(そうべつちょう)では、冬場に激減する昭和新山の観光客誘致に頭を悩ませていました。何か新しい、他の地域でやっていないイベントはないかと議論しているときに、外国人観光客の話になったそうです。「暑い国から来て、初めて雪を見た外国人は必ず雪を握ってぶつけ合うよね」「雪を丸めて投げるのはもしかすると人間の本能なのかな」「つまり雪合戦は人類最古のウインタースポーツということにならないか?」その着想から同町では雪合戦のスポーツ化を決定し、89年に「昭和新山国際雪合戦」を開催しました。勝負は雪球を当ててアウトにした数が多い方が勝ち、相手陣地のチームフラッグを奪っても勝ちという、シンプルながらもゲーム性を持たせたスポーツ雪合戦の誕生です。

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<雪合戦コート>

*(一社)国際雪合戦連合・国際ルールより

そのころ当社では新たなスポーツイベントへの取り組みが検討されていました。そこに「北海道で雪合戦大会が開かれる」との情報が入り、すぐに北海道に飛び現地を視察しました。壮瞥町の皆さんは岩手にも来てくださり、ご指導をいただいたと聞いています。

そして「昭和新山国際雪合戦」に遅れること3年。92年に当社が主催する第1回北日本雪合戦大会が雫石町の小岩井農場で開催されました。ところが第2回大会は暖冬で雪不足となり、雨も降る散々な大会となりました。その大会に参加していた県内随一の豪雪地帯・旧湯田町(現・西和賀町)のチームが「雪ならナンボでもあるから、おらほさこ(私の所に来なさい)」と声をかけてくれたのです。旧湯田町はその名のとおり温泉の町。壮瞥町と同様に冬の宿泊客誘致のきっかけを探していたのです。こうして95年、自治体と放送局が手を携えて開催する「ほっとゆだ北日本雪合戦大会」として岩手の雪合戦大会は再スタートを切ったのです。

二つの事務局

当社の企画事業部には「北日本雪合戦大会事務局」と「岩手県雪合戦連盟事務局」の2つの事務局があります。大会事務局は、共催の西和賀町と連携して大会運営を担当します。岩手県雪合戦連盟は、県内の雪合戦協会を統括し、スポーツ雪合戦のルールや審判、競技進行を司る団体で、会社とは別組織です。参加チーム募集や運営のアルバイト管理は大会事務局の業務で、審判員募集、試合の記録員アルバイト管理は連盟事務局の業務というように分かれています。それを同じ企画事業部員3人で回しているので、最初は区別がつかず苦労しました。10年近く経験してようやく両輪が回せるようになってきました。

ほっとゆだ2024北日本雪合戦大会

この冬は豪雪地帯の西和賀町でも記録的な雪不足。ようやく大会直前にまとまった雪が降り、町中から雪をかき集めるようにして何とか「北日本雪合戦大会」は開催にこぎつけました。今年の参加は50チーム。以前は100チーム以上の参加がありましたが、コロナ禍で2回の中止を経てほぼ半分に減ってしまいました。

ガシャンガシガシガシャン――。会場に響き渡るのは、巨大タコ焼き器のような製造機で雪玉を作る音。1セットにつき90球が使用できます。

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<雪玉製造機(左上)と雪玉の製造風景>

試合は1セット3分の2セット先取で行います。時間内(3分以内)に相手コートのフラッグを抜くか、雪球を相手チーム全員に当てた時点で勝ちとなり、そのセットは終了します。時間切れ(3分終了)の場合は終了時に残っている選手が多い方が勝ちです。選手は7人でフォワード4人、バックス3人がコートの中に入ります。

試合開始の合図とともに、フォワードがコートに配置されたシェルターと呼ぶ身を隠す壁に向かって猛ダッシュ。これはセンターを取った方が有利になるからで、試合の最初の見どころです。

バックスは後ろからフォワードに雪玉を転がして補球します。雪玉の作り方が甘いと、転がっている間に壊れて使い物になりません。勝負は雪玉作りから始まっているのです。シェルターに身を隠している最前線の選手は、相手から見えませんが自分も周りが見えません。「(球のある場所は)右足かかと2個」「頭の上(球)来るよ!」「右注意して」と声をかけ合い、互いにフォローし合うチームワークがとても重要です。だから男女や年齢、運動能力に関係なくひとつのチームになれる、そこがスポーツ雪合戦の醍醐味だと思います。

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<シェルターを挟んだ攻防>

雪合戦の未来~夢は大きく~

今年も2月24日と25日にスポーツ雪合戦発祥の地・北海道壮瞥町で「昭和新山国際雪合戦」が開催されます。岩手の強豪チームはこの大会で優勝することを目標にしています。この大会を主催する「国際雪合戦連合」には北海道や岩手など国内7つの雪合戦連盟に加え、フィンランド、カナダ、中国の雪合戦団体が加盟しています。そのほかにも国際雪合戦連合の努力により、ノルウェー、スウェーデン、アメリカ等世界各地でスポーツ雪合戦の大会が開催されています。

雪合戦は雪という自然の恵みで球を作るので、まさにSDGs、持続可能なスポーツと言えるかもしれません。そして国際雪合戦連合の夢は「スポーツ雪合戦」を冬季オリンピックの種目にすることです。今笑ったあなた、一度でいいから北日本大会か昭和新山国際雪合戦を見てください。

最後になりましたが、資料をご提供いただいた国際雪合戦連盟に心から感謝申しあげます。

※「ほっとゆだ2024北日本雪合戦大会」初日の模様を伝えたIBC岩手放送のニュースはこちらから。

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