ラジオ大阪(大阪放送)『It's SHOW TIME!』 少年隊ファン有志が企画した少年隊だけを流す番組

初田 実
ラジオ大阪(大阪放送)『It's SHOW TIME!』 少年隊ファン有志が企画した少年隊だけを流す番組

「えっ、少年隊って、あの少年隊ですか?」――この番組の立ち上げの中心的役割を担った馬場尚子さん(フリーアナウンサー)から相談を受けたのは、2021年3月26日でした。「はい、もちろんあの少年隊です。ファンのみんなが支える、少年隊の曲だけをかける番組をやってみたいんです」

馬場さんがそれを思いついたキッカケは、2020年末に発売された完全限定版のアルバム「少年隊 35th Anniversary Best」の発売告知が行き届かず、買えなかったファンが続出したことでした。1985年「仮面舞踏会」で華々しくデビューし、歴代ジャニーズの中でも卓越した歌唱力とキレのある華やかなダンスで、かのジャニー喜多川氏をして「ジャニーズの最高傑作」と言わしめた少年隊。しかし、シングルのリリースは2006年、グループ活動は08年が最後で、錦織一清氏、植草克秀氏は20年末をもってジャニーズ事務所を退所。ベストアルバムの告知が行き届かないのも、無理はありませんでした。CDを個別にダビングするわけにもいかず、どうすればファンの皆さんがこのCDを聴くことができるか? その答えが、ファンが支えるファンのための番組の企画でした。

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<少年隊のレコード・CDの数々

営業の私としては、もちろんありがたいお話でした。しかし、そのお金はどうやって集めるのか? いつまで放送できるのか? レギュラー化はできるのか?......
そこで私が出した答えは、
①    広告会社がファンから支援金を集め、ラジオ大阪はその広告会社の「買い切り番組」として放送する。
②    集まった金額で実施できる回数の放送とする。
この方法だと、放送局がリスナーから直接お金を集めることを回避できると考えました。馬場さんはファン同士のTwitterの中で、ある程度支援の輪が広がりそうな感触を得ていました。その結果、放送4回分の支援金が集まったのです。念のため申しあげると、この番組は、いわゆるクラウドファンディング(CF)ではありませんし、放送局が寄付金を直接集めるものでもありません。あくまでも広告会社がファンの自発的な支援金を集め、その集まった金額の範囲内で番組を買い切るという枠組みで実施したもので、目標金額なども定めていませんでした。このような経緯を経て、なんとか実施できる見込みがたちました。

ところが好事魔多し、番組の制作を手伝ってくれる実行委員会(ファンによるボランティア)のスタッフに対して「ジャニーズ事務所が認めていないのに、何を勝手なことをしているのだ」「番組を通じて実行委員会のスタッフがアーティストにすり寄ろうとしているだけではないのか」......そんな声が届くようになったのです。そのような嫌がらせに、私は支えてくれるスタッフを守るため、このように答えてくださいと伝えました。「番組で音楽をかけるのはラジオにおいてごく当たり前な行為であり、誰かにとやかく言われる筋合いはない。ましてこの番組でかける音源は、前述のベスト版のほか、30年以上前に当時のプロモーターが『かけてください』と置いていってくれたCDだ。かけないとむしろ失礼だ。文句は局に言ってくれ」......。以来、ラジオ大阪に対する苦情は現在までただの1通も届いていません。

かくして2021年5月20日、『It's SHOW TIME!』が木曜23・45―24・00にスタート。この「SHOW TIME」というワードは、少年隊が海外のテレビに出演した際に「ショウネンターイ!」と紹介されるのが「SHOW TIME」に聞こえるという理由で、ジャニー氏がとても気にいっていたというエピソードがあるのです。

進行にはラジオ大阪唯一の若手男性アナウンサー・藤川貴央を指名。てっきり馬場さん本人が思い入れたっぷりに自らDJを務められるのか? と思いきや、局アナとしての藤川の中立性をスタッフは重視。「タキシードを着たつもりで、しゃべってほしい」というオーダーを課しました。馬場さんが出演されないとはいえ、この番組は実行委員会のスタッフ、つまりファンの皆さんが選曲や構成を決めており、東京在住のスタッフ・ももさんと夜を徹して台本を作成しています。ももさんは毎回の収録に必ずリモートで立ち会われ、曲にコメントを乗せるタイミングなど細かい指示を出されています。

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<『It's SHOW TIME!』の収録

番組は初回からいきなり大反響で、毎週50―100通のリクエストが寄せられるほどに。そしてこの番組の存在を聞きつけた東山紀之氏が、第3回の放送の際「おしゃれ泥棒」をリクエストされたことがradikoプレミアムで全国に広まり、一気に支援金が増えてレギュラー番組にまで成長したのです。番組は各方面で取り上げられ、サンケイスポーツ(サンスポ)との紙面連動をはじめ、21年末には『令和の少年隊論』(アチーブメント出版)に藤川アナが14ページにも及ぶ熱い想いを寄稿。22年早々には、関西テレビ放送の『報道ランナー』でも特集を組んでいただきました。

今春には放送時間も21・45からに繰り上がり、迎えた番組1周年。少年隊リーダー・錦織一清氏がスタッフを通じて「1周年おめでとうコメント」の音声データを送ってくださる事態になり、データを受け取ったスタッフは泣き崩れたという逸話も――。コメントの最後には錦織氏本人が「ジングルにでも使ってください」と、タイトルコールもやってくださっていました。もちろん今も毎週、使わせていただいております。その直後には、植草克秀氏がファンの皆さんと番組をリアルタイム聴取するという出来事もあり、これでメンバー全員がアクションを起こしてくださったことになります。

「いつか、少年隊のメンバー御本人に番組に出演していただきたい」......その願いが、ついに叶う日が来ました。錦織一清氏作・演出の舞台『サラリーマンナイトフィーバー』大阪公演のPRで錦織氏が来阪された9月20日、サンスポさんの計らいで藤川アナによる単独インタビューが実現。その模様は10月1日に1時間特番として放送されたのですが、紙面連動企画として放送当日には全面記事が掲載。関西版の通販部数で、嵐を抜き歴代1位を記録するまでに至りました。もちろん番組宛てにも感謝のメールの山が――。

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<錦織一清氏と藤川貴央アナ

「3人揃った少年隊を、過去のものにしたくない。ラジオがあれば、みんなこうして3人の少年隊を現在進行系で愛でられる」と馬場さんは語ります。まさに馬場さんをはじめとする少年隊ファン有志の熱意が新たなラジオの可能性を見出してくださったのです。皆さんもぜひ、木曜夜にラジオ大阪に耳を傾けてください。そこには3人揃った少年隊が毎週帰ってきてくれています。さぁ、今週も「It's SHOW TIME!」――

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