東日本大震災から12年 福島編 原発再稼働や処理水放出を今一度考える

編集広報部
東日本大震災から12年 福島編 原発再稼働や処理水放出を今一度考える

東日本大震災発生から12年が経った。住宅や交通インフラの復興や、避難指示の解除が進んでいる。一方で課題はまだ多く、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出や、廃炉問題が解決しない中での原発再稼働の動きなどが見られ、賛否が分かれている。民放onlineは今年も岩手宮城・福島の民放各局に、3月11日を中心とした震災関連の特番や取り組みに関するアンケートを実施した。その結果を地区ごとに紹介。今回は福島の事例をまとめた。


ラジオ福島は11日、5時間の特別番組『忘れない、空を。』を公開生放送した(=写真㊤)。南相馬市の道の駅南相馬に特設スタジオを設置し、同市長や地域住民らをゲストに迎え、福島の今と未来を考えた。小野則昭・執行役員編成局長は「出演者・来場者の思いや涙に触れ、被災地の放送局としての責任をより一層感じた。公開生放送を実施してよかった」と手応えを語る。番組中盤には、TBSラジオの特番『伝える~東日本大震災から12年』と両局乗り入れで中継を行い、福島の現状を共有。このほか、県主催の追悼復興記念式やキャンドルナイトの模様を届けた。また、同局とエフエム福島、県内の新聞2社は2021年から毎年、復興支援を目的とする「ふくしまみらいプロジェクト」に取り組んでいる。昨年は「未来に残したい言葉」をテーマに県民から詩を募り、オリジナルソング「ファーストネーム」を制作。今年は、その制作についてまとめた特番を同局とエフエム福島で11日にオンエアした。

福島テレビは、夕方ワイド『テレポートプラス』の特別編を11日に編成し、「あの日の教訓」にフォーカス。震災発生時に津波警報発令に携わった気象庁の元職員(=写真㊦)の証言を拾った。当時の津波警報の問題点について、逃げ遅れをゼロにしたいとの思いから、初めてインタビューに応じたという。井上明・報道部副部長は「震災を経験した一人ひとりの思いが『教訓』として、『いま』と結び付いている。だからこそ私たちは伝え続けないといけない」とコメント。このほか、避難指示解除に向けた動きや根強い反対意見がある中で始まろうとしている福島第一原発の処理水の海洋放出を考えた。また、岩手めんこいテレビ・仙台放送との共同特番『明日への羅針盤~13年目の約束』を11日に放送。福島のローカル部分では、震災から約5カ月後に行われた「全国高校総合文化祭」の当時の出演者と実行委員を取材。現在はそれぞれ一児の母、小学校の教員となっており、番組では子どもへ教訓を伝える姿や心境を取り上げた。

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全編中継で特番を組んだ福島中央テレビは11日、『「ツナグ―ふくしま」 震災 原発事故から12年』(=写真㊦)を放送した。昨年8月に住民の帰還が始まった双葉町をメインに、福島第一原発や富岡町を中継で結んだ。デニム店を営む男性や語り部活動を行う女性など、若い世代の活動を中心に取り上げた。また、阪神・淡路大震災の継承活動に関する読売テレビの取材活動に密着して特集にまとめた。木村良司・報道部長は「若手記者を現地に派遣し、"知らない世代"にできることを考えさせる機会を設けた」と狙いを明かす。同局では、社内での継承活動として「記憶のリレー」を昨年から開始。当時を知る担当者が講師となり社内スタッフに経験を伝承している。また、3月初旬から11日にかけて放送したローカル特集や番組を、Yahoo!ニュースとLINEに掲載し県外にも届けた。

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福島放送は10日、夕方ワイド『シェア!』の枠を拡大し、県内で最も津波による犠牲者が多かった南相馬市から全編生中継。親族を亡くした語り部が伝える教訓や、防災の最新情報を届けた。また、大きな地震が想定されながら耐震化が進まない会津地方の現状や、首都圏で計画されている中間貯蔵施設の徐染土再利用など、未解決の課題を取り上げた。11日には『「命は、安全は」岐路に立つエネルギー政策』を「テレメンタリー」で放送。再生可能エネルギーによる発電事業に参入する喜多方市にある酒蔵の代表の思いを伝え、政府の原発再稼働への方針転換について問いかけた(=写真㊦)。岩手朝日テレビ・東日本放送との共同特番『あすへの一歩 被災地変える未来』の福島パートでは、震災当時9歳で現在は語り部として活動する女性が、なぜ被災体験を伝えるのかを掘り下げた。

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テレビユー福島は11日、夕方ワイド『Nスタふくしま』のスペシャル版を放送し、福島第一原発の処理水の海洋放出をテーマに選んだ。処理水の基本的な情報から始まり、漁業者が反対する理由や、政府・東京電力と漁業者の間で「関係者の理解なしには放出しない」という約束があることなどを取り上げた。東京でも取材を行い、街ゆく人々の理解度や、豊洲市場や鮮魚店の関係者から福島の魚介類に対する評価を聞き(=写真㊦)、多角的・客観的に処理水にまつわる課題を考えた。渡邊文嘉・報道部長は「処理水放出についてネットの反応などを見ると、問題の本質に目を向けていないものが多いと感じて企画した」と話す。番組内容は「TBS NEWS DIG powered by JNN」に掲載し、県外にも発信している。

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エフエム福島は5日、特番『THE INTERVIEW~原子力災害を見つめた過去、現在、未来~』を放送。震災発生後、長崎から福島へ向かい、「放射線健康リスク管理アドバイザー」として活動し、現在は双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」の館長を務める高村昇・長崎大教授にインタビューした。放射線疫学分野を専門とする高村教授が、福島とチョルノービリの原発事故の違い、放射能や放射線といった用語の解説、双葉町の復興の現状などを踏まえ、これまでの12年を振り返った。このほか、ラジオドラマ『12年前のわたしへ』を6―9日に全4回放送。福島県の広報事業の一環として、地元の「FUKUSHIMA CREATORS DOJO 誇心館」で学ぶ県内クリエーターと共同制作した番組だ。さらにエフエム岩手と『ラジオ朗読劇「銀河鉄道の夜」』を共同制作し、7―9日に放送した。

県内の民放テレビ4局とNHK福島放送局は2020年11月から共同キャンペーン「これからと、その先に」を実施している。2月20―24日には、各局のキャスターが他局の番組に出演し、事前に取材した被災地の模様を伝える企画を行った。

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