総務省の「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」は、5月30日に第21回会合を開催し、デジタル空間の情報流通に関する課題や取り組みについて、民放連にヒアリングを行った。
民放連はデジタル戦略特別部会の山田克也副部会長(日本テレビ放送網・取締役執行役員コンプライアンス推進室長)と本橋春紀事務局長が出席。はじめに「民間放送も、デジタル空間における情報流通の健全性は、今後の社会のありようを考えるにあたって大切なテーマであると考える」と述べ、インターネット上への広告出稿における課題、コンテンツ違法アップロードによってライツホルダーに適切に広告費が還元されない問題、生成AI技術を悪用した民放ニュースコンテンツの改ざん――など、デジタル広告のエコシステムに重点をおいて指摘した。
民放事業者からプラットフォーム事業者(PF)への要望として、①違法アップロードへの対応、②透明性を高める取り組み、③広告に関する基準の公表――の3点を挙げた。
①では、著作権や知的財産権を侵害する違法アップロードの削除要請に、民放事業者自身の大変な労力がかかっていることを訴え、効果的な削除や抑止する工夫を求め、②では、PF自身が偽・誤情報の掲載や拡散を未然に防ぐ措置や、掲載されたら速やかに削除する措置を取り、公開が必要とした。③では、PFは広告取引に関して収益をあげている以上、「より重い責任を負っている」と指摘。「広告産業や広告行為に対する信頼感やイメージを毀損しないよう、広告に関する審査やモデレーションの基準を整備して、公表してほしい」とした。
そのうえで、表現の自由を侵さないことを前提としつつも、PFによる一定のルールの策定と履行を求める制度の必要性を訴えた。
構成員からは、「大手広告主の広告が著作権を侵害している動画に付いているのは広告主のブランドセーフティの点で問題。民放事業者は広告主と問題意識を共有したり会員社の意識を高めたりする取り組みがあるとよい」といった指摘や、「コンテンツを無断使用される被害者の側面が深刻であることがよくわかった」「PFと連携・協力し、信頼できるコンテンツをPFがプロミネンスすることはディスインフォメーション対策においても重要」との意見があった。
同日の検討会では、下部組織のワーキンググループの検討状況について報告と意見交換も行った。PF上のなりすまし広告や投資詐欺広告に関する問題を踏まえ、広告の事前審査基準の策定や公表をPFに義務付けるための議論を行い、夏ごろに取りまとめる。
同検討会は2023年11月の設置以降、デジタル空間における偽・誤情報対策や広告エコシステムに起因する課題などについて議論を続けている。民放連は2024年4月からオブザーバー参加している。
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