2019年以来初の対面によるアップフロントが5月半ば開催され、各局がそれぞれニューヨーク市内の会場で広告主などにプレゼンテーションを行った。従来どおりならその年の秋のテレビ新番組を軸にするが、今年は内容がガラリと一変。リニア、配信、そして映画に至るまで、各局とも幅広いメディア環境を視野に入れたプレゼンテーションを展開した。映画がコンテンツとしてアップフロントで取り上げられるのは初めてのことだ。
今年の特徴は、主軸に配信サービスを据える局が多かったこと。NBCUはピーコック、ディズニーはDisney+・ESPN+・Hulu、パラマウント(前バイアコムCBS)はParamount+と、いずれも配信サービスのコンテンツの充実と成長ぶりを強調し、「リニアにとどまらない全メディアセット」を売り込んだ。唯一、合併したばかりのWarner Bros. Discoveryが「4大ネットワークに次ぐ第5のネットワークになる」とアピールし、テレビ局としての存在感を強調した。
秋の新番組については各局とも「詳しくはウェブサイトで」と簡潔に伝える程度。FOXに至ってはこれをスキップし、今年はFIFAワールドカップとスーパーボウル中継権を擁するだけに、主にスポーツ中継での広告枠をプッシュした。
新たなクロスプラットフォーム広告ツールについては、各局とも事前に開催したテックイベントで詳しく紹介済み。アップフロントでは、番組のスターを続々とステージに登場させ、派手な舞台演出で会場の広告主を楽しませることに専念する傾向にあった。
そして、YouTubeTVでリニアのvMVPD(ネット経由でテレビコンテンツを同時配信)を手がけるとはいえ、動画配信がメインのユーチューブも初めてアップフロントに参加。しかもディズニーと同じ日に実施するなど、まさにテレビ業界に斬り込んできたと考えられる。