北海道テレビのドキュメンタリー映画『奇跡の子 夢野に舞う』が1月19日から北海道のT・ジョイ稚内、イオンシネマ旭川駅前、イオンシネマ江別、イオンシネマ釧路、シネマ太陽帯広、シネマ太陽函館で先行公開され、1月20日から札幌・シアターキノ、苫小牧・ディノスシネマズ苫小牧、室蘭・ディノスシネマズ室蘭で公開される。このほか、2月23日から東京・丸の内TOEIでの公開が決まっている。
<沼田監督>
本作の舞台は、北海道の札幌近郊に位置する長沼町。明治期の乱獲などで姿を消してしまったタンチョウを再び町に呼び戻そうと奮闘する農民たちの姿を描く。北海道テレビは、この取材をもとにしたドキュメンタリー番組『たづ鳴きの里』を2020年6月に北海道で放送し、さらに取材を重ね、本作につなげた。同番組は科学技術映像祭の最高賞「内閣総理大臣賞」、グリーンイメージ国際環境映像祭の「グリーンイメージ賞」などを受賞している。
監督は同社報道部の沼田博光さん。取材時に「鳥嫌いの俺たちがタンチョウを呼ぶだなんてな」と農家の皆さんが笑いながら話すのを聞いて、映画製作を決意したと話す。農家にとって鳥は害をもたらす厄介者でもある。撒いた種をほじくり、新芽を食べつくし、フン害にも困らされる。それでも、タンチョウを呼び戻そうとするのは......。
本作は、絶滅危惧種のタンチョウが生息できる生態系を回復させ、実際にタンチョウが飛来しヒナを育てるようになるまでの7年間の記録だ。タンチョウの生育環境を整えるために治水用につくられた遊水地に湿地をつくり、タンチョウのエサとなる生物が育つように減農薬農法に取り組む。すると、渡り鳥も来れば、思わぬ外来生物も現れる。タンチョウが姿を見せれば、カメラを構えた人の姿も......。
長沼町の農家14人の挑戦を軸に、長沼町が水害に苦しめられ、国の政策に翻弄され、自然保護の団体などと対立してきた過去とその理由も明かされる。地域の歴史もひもとき、厚みのあるドキュメンタリーに仕上がっている。さらに、人と自然の共生という普遍的なテーマを投げかける。
<長沼町の遊水地につくった湿地にタンチョウが飛来、足元には卵が>
タンチョウをはじめとする動物たち、四季折々の長沼町の美しい農村風景の映像がふんだんに使われている本作。中でもドローンを使った俯瞰の映像を見ると、まさに鳥の目を持ったかのような気持ちで画面に引き込まれる。加えて、映画の大画面を意識して広いサイズで撮ったという映像は、北海道の広大な大地を体感させてくれる。沼田監督は「タンチョウの生息地域が北海道外にも広がったら第2弾を作りたい」と夢を語る。
なお本作は、令和5年度文部科学省の選定(「少年向き」「青年向き」「成人向き」)のほか、映画作品には17年ぶりとなる環境省の推薦を受けている。
1月20日(土)と27日(土)には、札幌・シアターキノで、2月23日(祝日)には、東京・丸の内TOEIで舞台あいさつを予定している。