映画『ただいま、つなかん』公開 文化工房製作のドキュメンタリー

編集広報部
映画『ただいま、つなかん』公開 文化工房製作のドキュメンタリー

テレビ朝日の子会社である文化工房が製作したドキュメンタリー映画『ただいま、つなかん』が2月24日から宮城のフォーラム仙台で公開される。翌25日の東京・ポレポレ東中野を皮切りに、全国でも順次公開となる。

舞台は宮城県気仙沼市の唐桑半島鮪立(しびたち)にある民宿「唐桑御殿 つなかん」。元々は牡蠣の養殖業を営む菅野和享さん・一代さん夫妻の自宅だったが、東日本大震災の津波で3階まで浸水。学生ボランティアが寝泊まりする拠点として開放したことをきっかけに、2013年に民宿として開業した。女将となった一代さんの明るいキャラクターもあり、学生ボランティアらが相次いで移住。一代さんと、地域に溶け込んで生活する若い移住者たちの姿を描いた。

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<菅野和享さん・一代さん夫妻と元ボランティアたち©️2023 bunkakobo

監督は文化工房の風間研一氏。テレビ朝日『モーニングバード!』でディレクターだった頃、震災から1年の企画募集があり、河北新報で知った"ボランティアを支える被災者"である一代さんを題材に特集を放送。誰にでも分け隔てなく接し、全力の笑顔で迎えてくれる一代さんに惹かれてその後も取材を続け、放送のめどがなくても足を運んだ。海難事故で和享さんらを失い、コロナ禍ではつなかんの休業を余儀なくされる一代さん。『テレメンタリー』を含めて18年までに4回の放送で重ねたが、撮りためた素材は膨大な量に。19年、本作の構成を担当する放送作家の小林偉氏の打診を受け、「使いたい映像はたくさんあり、放送だけでは伝えきれないとずっと思っていた。これまでの記録を映像で残したい」と映画化の道を模索し始めた。

プロデューサーを務めた文化工房の柴﨑木綿子氏は、番組から派生した映画製作は同社では本作が初めてだと語る。IPビジネスの視点で既にある素材の活用方法を探る中、コロナ禍もあって判断には悩んだものの、22年に事業化を決断。「映画製作は初めてのことばかりで、情報収集から始めた。配給宣伝協力のウッキー・プロダクションからは、自主上映などを通じた中期的な収益化の道筋などを教えてもらった」と明かす。

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<風間監督㊧と柴﨑プロデューサー

風間監督が『報道ステーション』などの番組に派遣されていた期間の映像は、版権がテレ朝にある。このため、テレ朝から文化工房に出向している本作ゼネラルプロデューサーの齋藤隆平氏が調整を進めた。さらに、ウッキー・プロダクションが配給宣伝協力を担っていたつながりで、南海放送のドキュメンタリー映画『放射線を浴びたⅩ年後』(2012年)の伊東英朗監督からも映画製作のレクチャーを受けたという。

本作は宮城県や気仙沼市、商工会議所などが後援。監督とプロデューサーが直々に依頼し、地元での試写会、イベントでのPRなどの協力を仰いだ。「地元のバックアップを得て盛り上げてもらえる意義は大きい」(柴﨑プロデューサー)。ポレポレ東中野では、地元の味が楽しめるコラボ企画も展開する。

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<唐桑の伝統芸能・「松圃⻁舞」の太鼓を演奏する移住者©️2023 bunkakobo

移住者らが地元の伝統芸能・「松圃⻁舞」の太鼓を最前列に並んで叩くシーンがある。「土地のものである伝統芸能によそ者はなかなか入りづらい。受け入れる地元民と、そこに入っていく移住者。和気あいあいと語り合う場面にその特色が出ていて、気に入っているシーンだ」と風間監督。映画で初めて入れることができたという。さまざまな苦難に遭いながらも前に進む一代さんと、つなかんをきっかけに仲間となった移住者たちの10年間を115分にまとめた。

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