【旧統一教会報道の現在地①】チューリップテレビ 富山政界と教団のつながりを追及 明らかになっていない事実を取材し続ける

武石 浩明
【旧統一教会報道の現在地①】チューリップテレビ 富山政界と教団のつながりを追及 明らかになっていない事実を取材し続ける

2022年7月8日、安倍晋三元首相が演説中に銃撃され死亡した。殺人罪などで起訴された山上徹也被告の供述をきっかけに、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)について指摘されている不当な布教活動などの問題があらためて注目され、政治家とのつながりや被害の実態が明るみになった。

事件からまもなく1年。放送局はどのように報道してきたか、そして今後は......。チューリップテレビ、読売テレビ、旧統一教会の問題に取り組んできた阿部克臣弁護士に、それぞれの視点から「これまで」と「これから」を執筆いただいた。今回はチューリップテレビの武石浩明報道制作局長。


県内政治家との関係

安倍元首相が銃撃された日は、私がTBSテレビからチューリップテレビに出向して8日目だった。「特定の宗教団体に恨みがあった」など容疑者の供述が伝わり、その宗教団体が旧統一教会であると判明。知り合いのつてをたどり、富山の元信者と連絡が取れた。そして、事件から3日後の2022年7月11日、教団への献金で崩壊した家庭はほかにもあることを報道。元信者の言葉からつけた「お金お金お金、献金献金で家庭ぐちゃぐちゃ」のタイトルの強さと、旧統一教会の名前を出したいち早い報道から、チューリップテレビの名前がクローズアップされることになった。

この宗教団体をめぐっては、私も縁がある。それは30年前の1992年、著名人が合同結婚式に参加することで話題が沸騰する中、元信者に興味を持ち、TBSテレビの朝の情報番組『モーニングEye』で元信者の女性2人に生出演してもらい、霊感商法の実態をテレビで伝えたのだ。その後も放送する中、TBSテレビに2日間で3万件以上の無言電話がかかってきたこともあった。取材は翌年、合同結婚式に参加した元新体操選手の山﨑浩子さんが教団を脱会し、同番組に生出演するまで続いた。

チューリップテレビはシリーズを立ち上げ、連日報道を続け、やがて報道の焦点は、県内の政治家と教団との関係に移っていく。地元で草刈り中に、カメラを向けられた県議は臆面もなく、教団から選挙応援を受けたことを話した。自宅で記者に直撃された富山市議は「あの人たちがいなかったら(選挙に)当選していなかったかもしれない」と明かした。選挙応援を受けた別の市議は、教団の関連団体である国際勝共連合の幹部を講師に、教団が推進する家庭教育支援条例の勉強会を開いていた。選挙応援をきっかけに、教団が関連団体やイベント「ピースロード」などで、県議や市議、自治体トップとの関係を強める構図も明らかにした。

県知事選の選挙応援の実態

一方、ベールに包まれていたのが県知事選の選挙応援の実態だった。新田八朗知事は、定例会見で教団側から選挙応援を受けたことを明かしたが、それはごく小さなものであることを強調、そもそも世界平和統一家庭連合と名前を変えた教団と、かつて霊感商法で騒がれた「統一教会」が同じ団体とは知らなかったと語った。保守分裂となった2020年の富山県知事選は、熾烈な戦いだったことで知られる。圧倒的不利と言われた新田氏が、形勢を逆転して勝利に至る背景にどのように旧統一教会が関わったのか、知事の発言をうのみにするわけにはいかなかった。

取材を続けるうちに、脱会したばかりの県内の元信者の女性たちに取材することができた。元信者の証言からわかったのは、知事選の選挙応援が教団の組織を挙げたものだったということだ。県内の教会に信者が集められ、用意された携帯電話で「新田八朗の選挙事務所です」と電話をかけ、後援会への入会を誘っていた。新田氏は教団内で「お母様(教団トップの韓鶴子)が選んだ候補」とされ、絶対に当選させなければならないと言われていたという。

一方、新たに判明した事実について新田知事は、会見で「私が関知することではない」と述べた。果たしてそれでいいのだろうか。選挙応援に駆り出された元信者の女性は、壺を複数購入、多額の献金をして、貯金を使い果たしていた。別の元信者の女性は、自らの貯金ばかりか、内緒で息子の貯金にも手を出して献金していた。献金のきっかけは、「悪霊がついている」「苦しむ先祖を救う」など恐怖を植えつけるもので、霊感商法の手口そのものだったのである。教団のコンプライアンス宣言は名ばかりだったことがはっきりした。ほかにも多額の献金をしている信者たちが新田氏の選挙応援をしていたという。

旧統一教会が選挙に力を入れるのは、政治への影響力を強めると同時に組織固めという側面がある。選挙は信者たちの結束を強め、新たな信者獲得にもつながっていく。教団内では、教団側が集めた新田氏の票が「6万票」と伝えられていたことも私たちの取材でわかった。「6万票」というのは、戦った前知事の石井隆一氏との票差とほぼ同じである。教団幹部の東海・北陸地区のトップが「現在、知事5人と関わりを持ち、その中の1人の知事は私たちの助けによって当選された方」と語る内部映像もある。状況からすると、それは新田知事にほかならない。

新田知事は、霊感商法の被害者から選挙応援を受けたという事実を直視すべきである。「教団と関係を絶つという発言はできない」と新田知事は言う。県知事の立場では政教分離原則の観点から問題があるとの理由だが、選挙応援を受けた「当事者」の発言としては疑念を生みかねない。新田知事は私たちの取材に対し、後援会名簿は廃棄したので「6万票」について検証できないと回答した。

"いつまで報道するんだ"という横やりがあっても

旧統一教会について県内のメディアは、NNN系列の北日本放送が、県議や市議にアンケートを行ったり、性教育の問題に切り込んだりするなどしていたが、総じて消極的だった。ましてや知事に関する独自取材はほとんどみられなかった。今回、知事を相手に報道を続けることが、いかに大変なことか思い知らされることにもなった。新田知事は私たちの報道について「印象操作するような映像を垂れ流している」「とても偏った報道」と言いながら、その理由を答えようとせず、「一連の報道を番組審議会の方々の評価にさらされたらいかがか」と会見の場で述べた。そして実際に番組審議会で取り上げられることにもなった。地元紙の富山新聞は、チューリップテレビの知事への質問を「挑発」と表現し、「あまりにしつこい質問を遮るくらいの毅然とした態度も必要だ」と、社説に書いた。私たちに対して"いつまで報道するんだ"という横やりも少なからずあった。

2023年4月の県議選では、前回の選挙で教団から選挙応援を受けた県議全員が当選、旧統一教会問題は争点にもならず、県民の関心も薄れていることを実感した。安倍元首相銃撃事件からまもなく1年がたつ。そして来年には県知事選がある。新田知事は、本当に霊感商法で社会問題になった教団とは知らずに、選挙応援を受けたのだろうか。2020年の知事選の選挙応援についてはほかにも明らかになっていない事実がある。私たちは取材を続ける。

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