「コロナ報道」を考えるセミナーを開催 放送ライブラリー

編集広報部
「コロナ報道」を考えるセミナーを開催 放送ライブラリー

放送ライブラリーは、新型コロナウイルス感染症の関連番組を特集する上映会と公開セミナー「制作者に聞く!新型コロナの記録~記者が見つめた2020~」を7月8日に開催した。新型コロナウイルスの感染が広がり、緊急事態宣言が出された2020年から3年がたち、23年5月には新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類へと移行した機をとらえた企画だ。札幌テレビ放送の『74例目と呼ばれて~"3密"を導き出したクラスター~』と関西テレビ放送の『ザ・ドキュメント「学校の正解~コロナに揺れた教師の夏~」』の2本のドキュメンタリーを上映した。続くセミナーでは両番組制作者が登壇し、当時の思い、コロナ禍の3年間などについて話し合った。司会は放送作家の石井彰氏が務めた。

『74例目と呼ばれて』は、2020年2月に北海道北見市で多くの人が罹患した「展示会クラスター」の一人が症状、闘病生活、周囲からの偏見などを語る。『学校の正解』は、大阪府池田市の中学校を取材、「3密回避」「熱中症対策」「体育祭実施」――難題が重なる中、葛藤しながら「正解」を探し求める教師と生徒たちの夏を見つめた。

セミナーは、『74例目と呼ばれて』と『学校の正解』の各ディレクター、札幌テレビ放送・村崎亜耶芽氏と関西テレビ放送・宮田輝美氏が登壇し、司会の石井氏と意見を交わした。両番組の取材をしていたのは、新型コロナの感染が拡大し始めた2020年。その頃の取材について「感染することが罪になるかのような状況だった」(石井氏)こともあり、「取材を受けてくれる人がなかなか見つからなかった」(村崎氏)、「会社として取材活動を制限していたため、報道にとってつらい時期だった」(宮田氏)と振り返った。

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また、番組を制作した目的は「コロナの感染をくい止めたいとの思いで、北海道で起きた出来事を全国に伝えたかった」と村崎氏。宮田氏は「全国一斉休校の中で学校はどうなっているのかをシンプルに知りたいと思った。先生たちの悩みや葛藤を映し出すことで他の学校にも考えてもらうことを期待した」と語った。

石井氏が「伝えることが不安をあおっていないか、あらぬ差別を引き起こすきっかけにならないか、ということを突きつけられたのでは」と報道機関のあり方を問うと、「皆でこれを守りましょうと伝えていたが、行政の発表をそのまま伝えることでいいのかと思う一方で、正解がよくわからないこともあった」(宮田氏)、「コロナ感染者が出た医療機関の建物にいたずら書きがされることが起きていたが、それを報じることがさらに助長することにつながらないかなど、毎日のニュースで、放送していいか悩むことがあった」(村崎氏)と、当時の悩みを語った。

「テレビの役割とは何か」との石井氏の問いかけには、「自治体の首長の会見を伝えるだけでなく、常に別の見方も提示することが大事。矛盾点があれば、それも併せて伝えるべき」(宮田氏)、「適切なタイミングで必要なことを伝えることが重要」(村崎氏)と話した。

会場には『学校の正解』の舞台となった中学校の校長も来場。石井氏が「なぜ、取材を受け入れたのか」と質問すると、「別の取材を受けたことがあり、宮田さんを信頼していた」と明かした。また、「善と悪に分けて相手を叩くような世の中の風潮は、子どもを型にはめるような教育に原因があるのでは」とし、「学校を社会に対して開いていきたい」と、積極的に取材に応じた理由を明かした。

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