東京・大阪以外の全国37社の民放AMラジオ局が加盟し、共同で番組制作に取り組んでいる地方民間放送共同制作協議会(火曜会)。その加盟局が制作する番組『録音風物誌』のコンクールの最終審査が8月2日に行われた。審査員は昨年に続き、放送作家の石井彰氏、フリーライターの武田砂鉄氏、歌人・作家の東直子氏の3人が務めた(=冒頭写真、左から石井氏、武田氏、東氏)。
2022年8月から23年7月までに放送された全49番組の中から最優秀賞に選ばれたのは、山形放送の『うけたもう!羽黒山伏 ティム』。山にこもって厳しい修行を積む修験道を実践する「山伏」。羽黒山で山伏となった外国人にフォーカスした番組だ。そのテーマ選びや、本堂まで続く石段を金剛杖で突く音、川でのみそぎの唱え、魔を避けるためのほら貝の音など、豊かな音の表現が評価された。
優秀賞は北日本放送の『げんじぃの手作りヤギ牧場』。72歳の時にヤギと触れ合える牧場を一人で作った「げんじぃ」こと村江元三さん(番組放送時77歳)の思いを取材した作品。ヤギの鳴き声による臨場感や家族など周囲とのつながりなどが見える点などから好評を得た。
新人賞には、高知放送の『牧野博士を愛する小学生のガイドさん』が選出された。NHKの連続テレビ小説『らんまん』のモデルになった「日本植物分類学の父」とも呼ばれる地元出身の牧野富太郎。牧野の名を冠した高知県立牧野植物園でガイドをしている小学生にスポットをあてた番組で、実際のガイドの声を届けた点などが評価された。
総評で、石井氏は「初めて聴く人にどうすれば"音"で伝えられるか、もっと考えてほしい」と制作者に求めた。「番組で扱うテーマとして良い話が多い」と振り返った武田氏は「良し悪しでいえば、悪しの人やモノにも目を向けてみるとよいのでは」と提案した。東氏は「今回は全体的にナレーションでの説明が多かった。もっと音の醍醐味を味わえる作品が聴きたい」と述べた。
受賞作品は、以下の日程で『録音風物誌』にて再放送する。
▷山形放送:10月9日(月)―15日(日)
▷北日本放送:10月2日(月)―8日(日)
▷高知放送:9月25日(月)―10月1日(日)。