南日本放送 「8・6豪雨災害デジタルマップ」 災害の記憶を伝承

編集広報部

南日本放送(MBC)は8月1日から「8・6豪雨災害デジタルマップ」の運用を開始している。1993年8月6日に鹿児島県を襲った集中豪雨によって、鹿児島市内の河川が氾濫し、街は水没。電車や車が土石流に巻き込まれ、死者・行方不明者は49人にのぼった。「8・6(ハチロク)水害」、「8・6豪雨災害」と語り継がれている。このとき、MBCの局舎が浸水したほか、ラジオ中継車が水没するなど、大きな被害を受けた。93年は同水害を含めて風水害による死者・行方不明者は121人と甚大な被害だった。この経験を経て、MBC は95年5月に全国の放送局で初めて、気象事業所の認可を受けるなど、防災のための情報提供機能の整備に注力している。

デジタルマップは、同水害の映像を場所ごとに地図上にマッピング。発災から30年がたち、風化が懸念されていることから同水害の記憶を伝承する取り組みとして立ち上げた。学校の防災教育での活用や自主防災組織での活用などに期待を寄せる。

今年2月ごろ、発災から30年となる8月6日近辺に自社枠で特番を制作することを企画。MBCには当時の状況を撮影した取材テープが400本以上保存されており、1本ずつ視聴し、当時どのように災害が起こったのか、場所ごとに時系列で整理する中で、これらの映像をデジタルマップに落とし込む構想が生まれた。

6月上旬に具体的な作業を開始し、7月上旬にシステム構築に着手。夕方ニュース『MBCニューズナウ』の同水害特集で制作したVTRや、8月2日に放送した特番『どーんと鹿児島 2時間スペシャル8・6豪雨から30年 あの夏、鹿児島は~400本の取材テープから~』で紹介するために編集した映像を分割してデジタルマップに入れ込んだ。

同マップは、MBCのデジタルメディア部、技術部(IT班)、報道部の計13人で内製した。アイコンが地名などにかぶらず、橋の表示などがわかりやすいことからオープンデータの世界地図OpenStreetMapを利用している。現在は、鹿児島市を中心に30カ所をマッピング。川からあふれた濁流が津波のように押し寄せる映像や、濁流で身動きがとれなくなったトラックの運転手がロープで救出される様子など最大で6分程度にまとめた映像が視聴できる。

「まだデジタルマップに落とし込めていない素材もある。視聴者からの写真や映像も可能な限り入れ込みたい」と語るのは切通啓一郎・報道局長。また今後について、福満隆・制作局長は「撮影された現地でもQRコードの設置やGPSなどの位置情報をもとに映像を見ることができるような展開を目指す」と熱を込めた。

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