民放onlineは地上テレビ127社に、「地域課題解決に向けた取り組み」についてアンケートを実施。回答があった中から一部の事例を3回にわたって紹介する。第3回は、SDGsに関する取り組みを紹介する。
広島テレビは「広島に、魅力的な海を作り出す」を目指すプロジェクト「海ッション・インポッシブル」を2023年6月からスタート。瀬戸内海の海洋ごみ問題に対し、実効性のある取り組みを行う。日本テレビ系『24時間テレビ46~愛は地球を救う~』の企画として、ボランティアとの海岸清掃や、海ごみを活用したスナメリ型オブジェの制作を実施。オブジェは職人やアーティストに加え、地元の子ども15人で制作した。
また、平日ワイド『テレビ派』のコーナー「かき小屋コットン」では、お笑いコンビのコットンが瀬戸内海に浮かぶ江田島でカキの養殖に挑戦する模様を通じ、瀬戸内海の現状を親しみやすく発信(=冒頭写真)。2024年2月に開催される「第1回牡蠣―1グランプリ」での優勝を目指す。コーナー内に収まり切らない情報などを含めた番組を月1回放送している。営業局メディア企画部の松岡英明氏は「海の生態系を支える海草アマモの再生や、カキの養殖など、『生物多様性』を当面の目標に展開していきたい」と意気込む。
テレビ愛知は「スポーツのチカラで未来を変えよう」を合言葉に、2021年から特番を通じ、プロスポーツチームやアスリートが取り組むSDGsを発信している。複数回放送している特番『丸山桂里奈のチャレンジSDGs』から派生した「レトルトカレープロジェクト」では、Jリーグ「名古屋グランパスエイト」や、なでしこリーグ「ラブリッジ名古屋」とともに、地元の規格外野菜を使ったレトルトカレーを制作した。
主な参加者はチームのアカデミーに所属する次世代の選手で、「スポーツの可能性」「社会課題」について選手に学びの場を提供しながら、収益の一部をチームの次世代育成に還元し、持続性を意識したという。2023年6月には名古屋グランパスの試合日に豊田スタジアムで販売イベントを開催し、在庫900個が試合開始前に完売。中西諒平・企画開発部プロデューサーは「ローカル局の番組企画と地域のプロスポーツチームがハブとなることで、大きな推進力が生まれた」とし、「『スポーツ×SDGs』は多くの人にとって共感性が高く、私たちローカル放送局が取り組むべきジャンルだと確信している」とコメントした。
<『丸山桂里奈のチャレンジSDGs』>
テレビ山梨は2023年から、食をテーマにした「SDGsキャンペーン~おいしい!がある未来~」に取り組んでいる。フードロス削減や地産地消を目的に貧困家庭の支援に取り組むNPO法人「フードバンク山梨」の活動に賛同し、本社ロビーでフードドライブ(家庭や職場から余剰の食品を集める活動)を実施し、食品を寄付している。また、11月11日には「エコフェス」を同局の駐車場で開催。「もったいないマルシェ」と題し、地元農家や高校生による規格外の農作物や加工品の販売、山梨の特産品をアップサイクルした原料をもとにしたラーメンの試作品などを提供した。
初開催のため小規模を想定していたが、約1,000人が来場したという。山本太・経営管理室総務部長兼SDGs委員会委員長は「全社一丸で関わったことで、部署間でのコミュニケーションが深まり、社内に一体感が生まれた」とコメント。今後については「問題意識などをいかに共有していくかを、深化させていきたい」と意気込む。
<「エコフェス」の模様>
とちぎテレビは、2022年10月から番組内での手話に関する取り組みに力を入れている。平日夕方ワイド『イブ6+(プラス)』でコーナー「手話でシュワッチ!」を設け、地元の手話サークル「ジュニアあすか」の小学生による、季節や時期にあわせた"ひとこと手話"を届けている。「全国障害者スポーツ大会」が22年に栃木で開催されたことをきっかけに、より多くの人々に放送を届けるとともに、視聴者が手話を学ぶ機会を作りたいとの思いからスタートした。
また、「ジュニアあすか」の児童や保護者とのつながりから、県民参加型カラオケ番組『うたの王様』で2023年1月から小中学生による手話ソングを放送。同番組の審査員を務める地元出身ミュージシャンや、あいみょんの楽曲に手話を付けて歌う。さらに、手話サークルの児童が主体となり、クラスや部活仲間、校長先生、担任の先生に出演交渉を行い、学校内で撮影し、その模様を放送することも。とちぎテレビ放送本部制作部ディレクターの目加田友子氏は「児童の学校生活の思い出の1ページに参加できることをうれしく思う。テレビ出演の特別感が再認識され、ローカル局の存在意義を感じる」と手応えを語る。
<手話ソングの模様>