熊本県民テレビのドキュメンタリー映画 「人生ドライブ」公開中

編集広報部
熊本県民テレビのドキュメンタリー映画 「人生ドライブ」公開中

熊本県民テレビ(KKT)が県内民放初となるドキュメンタリー映画「人生ドライブ」を制作した。「NNNドキュメント」やローカル情報番組などで放送を重ねてきた、熊本県宇土市の岸さん一家の暮らしを93分にまとめた。東京のポレポレ東中野や東京都写真美術館ホールをはじめ、全国で順次公開中だ。

7男3女、10人の子どもを愛情たっぷりに育てる岸英治さんと信子さん夫婦。その暮らしに21年間密着し、子どもたちの成長の過程に加えて、自宅の全焼、信子さんの入院など、困難に遭いながらも互いを思いやって前向きに生きる家族の姿を描いた。岸家の日常に焦点を当てるために、ナレーションやBGMを抑えた映像に語らせる編集と演出が効果的だ。監督を務めた報道部の城戸涼子氏は「普段のニュースは短く分かりやすく伝えるためのもの。同じ映像でもテレビと映画でこんなに違うのかと目から鱗だった」と制作した感触を振り返る。子育てで忙しい中でも、夫婦2人の時間をつくるためドライブに出かけて穏やかな時間を過ごす英治さんと信子さん。作中の随所に入る2人のドライブシーンから、シンプルなタイトルが生まれた。

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<KKTの城戸涼子監督

4月から先行上映を行っている熊本の劇場・Denkikanでは、舞台あいさつを通じて観客との交流を重ね、「家族に会いたくなった」「親に電話しようと思った」といった感想が多く寄せられたという。「他人の家の話ではあるが、自分の家族の誰かしらの姿を思い浮かべるのだろう。家族であってもなくても、大事な人が身近にいることを思い出してもらうきっかけになれば」(城戸監督)。

映画制作のきっかけはKKTの開局40周年を記念した企画募集から。岸家の膨大な取材映像を活用すべく映画化を決めた。事業に関わりたい有志を募り、入社1年目も含む約20人の社内横断チームを結成。日常業務と並行しながら、広報、制作、イベントなどそれぞれの得意分野で作業を進めた。「テレビで一回しかオンエアしないのはもったいないと感じていた。時間が経つと過去の映像の価値は変わってくる。テレビだけが映像ではない時代に、ローカル局のライブラリーは大きな財産。映画化はその発信手段だ」と城戸監督。映画化はテレビの意義を再確認する機会にもなるとみており、「熊本には水俣病などの埋もれた映像が多い。今回得たノウハウが2作目以降につながれば」と期待を語った。

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