【メディアリテラシー】中京テレビ放送 メタバース空間で取材体験

編集広報部
【メディアリテラシー】中京テレビ放送 メタバース空間で取材体験

民放連は、会員社が実施するメディアリテラシー活動に対して助成を行い、民放各社の同活動のさらなる発展と定着を目指している。詳細は、民放連ウェブサイトに掲載している。

民放onlineでは、通年企画として各社が実施しているメディアリテラシー向上のための活動を随時紹介していく。


今回取り上げる中京テレビ(CTV)の「"リアル"と"仮想空間"で学ぶメディアリテラシー活動」は、2023年度民放連メディアリテラシー活動助成事業の一つ。CTVがメディアリテラシーの出前授業の一環で、児童や生徒がメタバース空間で取材を行い、ニュース原稿を作成し、その内容を"リアル"でカメラに向かって発表するというもの。取材体験を通して、正確な情報とフェイクニュースを見極める力をつけることを狙いとしている。

CTVは2023年6月27日に春日井市立神領(じんりょう)小学校の5年生90人、11月22日に第一学院高校四日市キャンパスの17人、12月13日に一宮(いちのみや)市立大和(やまと)中学校の2年生175人に授業を実施した。

民放onlineはこのうち、大和中学校で行われた授業の模様を取材した。

「メディアリテラシーを学ぼう」と題した約100分の授業は、同校の体育館で2年生175人を対象に3回にわけて実施。CTVの佐藤和輝(かずてる)アナウンサーが講師を務めた。

はじめに「ニュースができるまで」をまとめた約10分の映像を上映。テレビでニュースが放送されるまでの流れや、直接見聞きして入手した「一次情報」と、ほかの人や資料から入手した「二次情報」の違いなどについて学んだ。

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<佐藤和輝アナウンサー>

続いて、生徒は日ごろから学校で使用している各自のPCでメタバース空間に参加し、取材を行った。架空の町・百ノ宮(ひゃくのみや)市で、「農家が野生動物を捕まえて金儲けをしている」「巨大カジノが建設中」といった情報がうわさサイトに投稿されて、市民の間に広がっていることから、その真偽を調べるという設定。その後のニュース原稿の作成も含めて、6―10人程度のグループに分かれて取り組んだ。取材対象者は▷市役所職員▷農家▷動物の専門家▷うわさサイトの投稿者――の4人で、グループ内で分担して、質問を行った。

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<取材で使用したメタバース空間>

取材が終わると、生徒はメタバース空間から現実世界に戻り、グループ内で得た情報を共有。ニュースタイトルを決めた後、原稿の作成に取り組んだ。原稿は、CTVが用意したフォーマットに沿って、取材対象者の発言を引用しながら事実関係を明らかにしたうえで、取材を通してわかったことを述べて締めくくるスタイル。

最後に、完成した原稿を1分程度のニュースとして、各グループの代表者がカメラに向かって発表。その模様は、体育館の前方に設置されたモニターやスクリーンに映された。その際、持ち込んだ機材をスタッフがその場で操作し、実際のテレビニュースのように発表者の名前やニュースタイトルが画面上にテロップ表示されたほか、内容に合わせた参考映像が挿入される演出があった。

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<佐藤アナがプロの原稿読みを披露>

全3回の授業で合計20グループが発表。それぞれ「百ノ宮市の噂とその実態」「カジノ建設のデマ、その実態とは......」「百ノ宮市の情報をキャッチ!!」――などタイトルを工夫し、中には「TRUE or FALSE」「What's happening 百ノ宮!!」とタイトルに英語を使ったグループもあった。

佐藤アナは、それぞれの発表に対して、「原稿に具体的な数字が入っていた」「強調したいポイントが伝わる読み方だった」「カメラに目線を向けながら原稿を読めていた」など良かった点をあげて講評を行った。

なお、午後に行われた3回目の授業では、インターネットへの接続が不安定な状態となったため、急遽、取材をメタバースから"リアル"に切り替えて対応。体育館の四隅でそれぞれ車座になって、取材が行われた。

授業を終えて、講師を務めた佐藤アナは、「視聴者と直接触れ合う機会は少ないので、子どもたちの生の反応を見ることができて新鮮だった。中学生でもわかるようなニュース原稿を書くことが必要と感じた」とコメント。本事業を担当したCTVの葛山多美子・コーポレート局担当部長は、「3回目の授業が、急遽リアルでの取材となった。メタバース空間では、うわさサイト投稿者に対して『結局お金なんですか?』など強めの質問があった一方で、リアルで対面すると総じておとなしい対応となるなど、違いが表れて興味深かった。生徒が楽しみながら勉強できていたようで良かった」と振り返った。

大和中学校での授業は、CTVと同社のグループ会社であるCTV MID ENJINなどのスタッフ計9人体制で実施。スタッフは、メタバース空間の取材対象者4人の役を演じたほか、生徒の原稿作成の補助や撮影機材の操作などの対応も行った。

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<別室で生徒からの質問に答えるスタッフ>

参加した生徒からは、「同じ出来事を取材しても、取材した人によって発表内容が少しずつ変わることがわかった」「インターネットでの情報の信頼性を見極めることの重要性を学んだ」などの感想が寄せられた。

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