毎日放送 スポーツ生中継番組で「解説放送」を初めて実施 <全国高校ラグビー決勝戦>

木村 敦
毎日放送 スポーツ生中継番組で「解説放送」を初めて実施 <全国高校ラグビー決勝戦>

「花園」は日本ラグビーの原点

毎日放送では2024年12月27日に開幕し、2025年1月7日に決勝戦を迎えた「第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会」の桐蔭学園高等学校(以下「桐蔭学園」、神奈川県代表)×東海大学附属大阪仰星高等学校(大阪府代表)をJNN系列28局ネットにて生中継で放送しました。

全国から予選を勝ち抜いた全代表51校が高校ラガーマンの憧れである東大阪市花園ラグビー場=通称「花園」に集結し、今大会も真冬の熱き戦いが繰り広げられました。

日本ラグビー界は2015年のラグビーワールドカップ南アフリカ戦での歴史的勝利、2019年日本開催で初の決勝トーナメント進出を果たし、列島各地を熱狂の渦に巻き込んだ「ラグビーブーム」も記憶に新しいところです。現在、日本代表で活躍する選手たちもかつては「花園」に憧れ、「花園」で活躍した選手が多く、この意味で日本ラグビーの原点と言える「高校ラグビー」を当社では1978年から全国ネット放送でお届けしています。

副音声を利用しての解説放送

2015年ワールドカップ以降の日本代表の躍進などで、日本代表戦をはじめとして地上波中継の機会も増加傾向にあります。ただ、その一方で「ルールが難しくて、よくわからない」という声も多く聞かれるのがラグビー中継です。

当社では、選手プロフィールのテロップの充実、試合中に発生する反則の詳細についてアニメーションを利用することで、視聴者の方に少しでも身近に感じてもらえるように毎年、試行錯誤を重ねてきました。

さらに、今大会での新たな試みとして解説放送を実施し、より幅広い視聴者に高校ラグビーを楽しんでいただきたいと考えました。

解説放送に必要な「サポート」の確認

実施にあたり、社会福祉法人日本ライトハウス情報文化センターの林田茂さんを講師にお招きし、決勝戦のおよそ2カ月前の11月12日にスタッフを対象に勉強会を開催。

ここで日本における目の不自由な方の現状を確認し、およそ88%が見えにくい人(ロービジョン)であることがわかりました。この事実が解説放送を制作するうえで、実況ならびに制作スタッフにおいても大きな指針となりました。

「画面上に見えにくい箇所がある」という前提で、前回大会の決勝中継を見ながら高校ラグビー中継において必要とされるコメント量のポイントを整理しました。
 ① テレビ画面の映像に合わせた説明を心がける(グラウンドと観客の状況、両チームの
   ベンチの様子や控え選手の動き)。
 ② プレー中の解説では、グラウンドのどの位置にボールがあって、どういう動きをして
   いるのか?具体的にタッチラインが何メートルなのか?などを詳細に伝える。
 ③ プレー中のスロー映像が再生された場合には、その映像を見て補足・説明する。
 ④ 実況については、プレー解説に偏らず、解説者との会話のキャッチボールも適宜織り
   交ぜる。
 ⑤ テロップが掲出されている場合は、その内容を説明する。
 ⑥ 試合終了時は、選手や監督、観客についてのコメントを画面に合わせる。

放送終了後に寄せられた感想

決勝戦の実況はラジオ中継で経験が豊富な近藤亨アナウンサーが担当し、解説は元ラグビー日本代表選手で現在スポーツコメンテーターの大西将太郎さんを起用しました(冒頭画像、大西さん㊧と近藤アナ㊨)。

大西さんの地元は、花園ラグビー場がある東大阪市。高校2年生の時に準優勝を経験するなど「花園」のスタープレーヤーです。今回の解説放送のテレビ番組出演をオファーした際には、ラグビー少年だった小学生時代に毎日放送(現MBSラジオ)のラジオ中継を聴きながら、「花園」でラグビー観戦に夢中になっていた思い出がよみがえるとのことで、快く引き受けてくださいました。決勝戦当日は、林田さんも放送席に同席していただきました。

放送後に寄せられた社内の感想をいくつか紹介します。
 ◆ 両チームのユニフォームカラーの紹介があり、試合中も適宜チームカラーで説明されて
   いたので、グラウンド内のイメージがつかみやすかった。
 ◆ 試合のメリハリが効いており、特にアナウンサーの実況と解説者との会話のバランスが
   良かったため、聴き疲れることなく試合を楽しむことができた。試合(プレー)状況だ
   けだと聴いているだけで疲れてしまうので、会話を交えた解説が助かった。
 ◆ 22メートルライン内の攻防やゴールライン付近では、数十センチ単位での説明があり、
   ラインアウト時の位置情報もメートル単位で伝えられ、プレーの現在地が非常にわかり
   やすかった。
 ◆ 反則の説明イラスト、テロップ情報もくみ取って、視覚的情報をサポートされていた。
 ◆ ハーフタイム中に「スクラム」の表現について解説の補足をお願いし、後半戦の実況で
   適切かつ十分な情報を視聴者に届けることができた。
 ◆ 時折目を閉じたり、開いたりして陣地のイメージを確認しながら試合自体をエキサイト
   して楽しむことができた。先制点のトライシーンでは、フォワードとディフェンスの攻
   防の緊迫感がとてもよく伝わった。「あと30センチ! あと10センチ! 審判がボールを確認
   している!!」 ――興奮しました。

これからも多くの人に熱い戦いを届けていきたい

今回、当社のスポーツ番組の生中継で初めて解説放送を行った結果、当社で中継している他競技の団体からも問い合わせがあり、他競技での実施に向けて検討を開始しています。

手に汗握る展開となった今大会の決勝戦は、桐蔭学園の大会連覇で幕を閉じました。高校生のスポーツ競技は毎年、選手の入れ替わりがあり、どの学校も安定したチーム力を継続させることが難しいなか、桐蔭学園の盤石の試合運びは高校生離れしたものがあり、チームとして素晴らしい完成度を見せてくれました。

ただ忘れてならないのは、高校3年生のラガーマンにとって「花園」は高校最後の大会。惜しくも負けて「花園」を去っていったチームも含めて、すべての出場校選手たちのチームメイト・保護者・関係者の思いを背負い、青春のすべてをかけて戦う姿に今年も魂を揺さぶられました。

その選手たちに負けない熱い思いと責任感を持って、これからも「高校ラグビー」を愛し、多くの人にその熱い戦いが伝わる中継を届けていきたいとあらためて感じました。

<編集広報部注>
解説放送は、テレビ放送のユニバーサルサービスのひとつで、おもに目が不自由な人がテレビ番組をより楽しんでいただくために、映像に関する説明(出演者の表情、情景描写など)を、副音声によるナレーションで伝える放送サービスです。

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