【トライアル枠特集】フジテレビ『水曜NEXT!』 1カ所でも光るところがある企画書を見逃さない

編集広報部
【トライアル枠特集】フジテレビ『水曜NEXT!』 1カ所でも光るところがある企画書を見逃さない

近年、若手制作者を中心にチャレンジの機会を与える番組や放送枠がみられる。民放onlineでは、こうした番組・放送枠の企画意図や、実際に企画が採用されて制作の機会を得た制作者の思いなど紹介していく。

今回は、取り上げるのはフジテレビ『水曜NEXT!』(水、24・25―24・55)。2020年10月から「フジテレビらしい」「置きに行かない」「新しい笑いを追求」をテーマにスタートした同放送枠について、竹内誠さん(編成制作局編成センター編成部部長職)、同放送枠で『ここにタイトルを入力』を企画した原田和実さん(編成制作局バラエティ制作センター)に話を聞いた。

『水曜NEXT!』について(竹内誠さん)

――『水曜NEXT!』をスタートした経緯は?

新企画を生み出すトライアル枠としてスタートしました。バラエティ制作センターを中心に企画書を定期的に募集しています。企画は、ターゲットとする視聴者層を特に絞らず、自由な発想で受けつけています。プライム帯や23時台を目指せるような完成度の高い企画書を優先しながら、1カ所でも光るところがあるような‟ひっかかり"のある企画も見逃さないようにチェックします。

――放送後、企画者にどんなフィードバックを行っていますか?

番組は基本的に1つの企画を2週連続で、前後編に分けて放送します。放送後、編成企画の担当者でレビューを話し合い、企画者にフィードバックを行います。企画者がもつ長所や可能性を多面的にチェックし、番組の続編がなくとも、可能性を感じた制作者には違う形でチャンスを与えるようにしています。

――今後の展望は?

特に若い制作者にチャンスを与える狙いもありますが、外部の優秀な制作者とフジテレビの若手をマッチする狙いも持ってやっています。若手から良い企画書が提出されてきているので、これからも多くの才能を発掘していきたいです。

制作者が感じるトライアル枠の魅力
(原田和実さん)

フジテレビに入社して3年目の原田和実さんは、『水曜NEXT!』で昨年11月24日、12月1日に『ここにタイトルを入力』を企画・演出。1週目は「スケジュールが合わないため、収録済みのひな壇の出演者に対し、MCが後日その映像と掛け合う」、2週目は「番組収録中に視聴者の意見を全て反映させる」番組を放送。この放送がSNSなどで話題となったことなどから、今年4月、5月に『月曜PLUS!』枠で6週にわたって放送した。

――原田さんからみた『水曜 NEXT!』の魅力は?

僕のような若手からしたら、このようなチャレンジ枠はありがたい限りです。内容の制限や、演出の年齢を飛び越えて企画重視での選抜なので、非常にフラットで自由な魅力があります。このような枠での募集があると、企画立案に対するモチベーションが高まりますし、これまでだったら無謀と思われていた企画が現実味を帯びてくるので、考えの幅が広がります。

――『ここにタイトルを入力』を放送した手応えは?

SNSで話題となり、さまざまなメディアに取り上げていただいたり、TVerのランキングに入るなどの反応がありました。また、配信もたくさん見てもらえたので、「こんな番組の形があってもいいのかな」と視聴者への届け方について考えるきっかけになりました。放送後に社内外で声をかけてもらうことも増え、テレビが持つ影響力の大きさにも感動しました。ただ、深夜ということを踏まえても、数字はそこまで良くなかったと認識しているので、まだまだ課題は多いように思います。

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<収録済みのひな壇パートと掛け合うバイきんぐ小峠さん>

――どのように企画を考えましたか?

もともと、メタ的な視点での笑いが好きだったこともあって、既存のフォーマットを崩して再構築するような企画を入社当時から出していました。その中で『ここにタイトルを入力』は「テレビの作り方を引き算で考える」というプロセスを多く踏んでいたように思います。「時間がなかったら」「お金がなかったら」「人がいなかったら」など、テレビの作り方に制限があったら、という仮説を丸ごと笑いにして、それを架空の番組として放送することで、今までテレビを見ていた視点よりも一歩外側で楽しむことができる点で、実験的だったのではないかと思っています。

企画説明を最低限にすることや、番組自体の画力の強さによって、視聴者の皆さんとまるで放送事故を楽しんで見ているかのような共犯関係を結ぶ狙いがありました。思わず人と共有したくなるようなこの仕掛けは、SNSとの相性が良かったと感じています。

――制作での苦労や工夫はありましたか?

僕より、実現に向けて一緒に動いてくれたプロデューサーやディレクターをはじめチームスタッフの方が苦労は大きかったと思います。毎回、テイストやキャストも全く別の架空番組を作り続けたので、実働面での苦労が非常に大きかったです。途方もない稼働量だったので、一緒に乗り越えてくれた制作チームには頭が上がりません。

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<原田和実さん>

個人的には、企画の構成を練るときに、左脳的な構造の面白さと、右脳的なバカバカしい絵の面白さ、そのバランスを視聴者目線で探るというプロセスに一番労力をかけました。どこで仕掛けに気づいてもらって、どこで笑ってもらって、どこでもう一段階ギアを入れるかなど。視聴者が飽きてしまったり、置いてきぼりになる可能性がある企画だったので、展開を考える際には見ている側の感情を整理するという過程を大切にして作りました。

――企画・演出を経験して、気づいたことは?

テレビを見ない層にSNSを通じてリーチすることができたことが気づきでした。テレビの視聴者のパイを増やすという意味では、今後も深夜ならではの企画性が高い番組を作っていけたらと考えています。

一方で、会社に所属するテレビマンとしては、マスを意識した企画を作ることが使命だと思っています。その面で『ここにタイトルを入力』は、GP帯に上がれる企画ではないと自覚もしています。やりたい企画を、より多くの人に見てもらえるための演出力の向上は、これからの課題として向き合う必要があると感じています。今後、番組作りの経験値を上げながら力をつけていきたいです。

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