英オックスフォード大学のロイター・ジャーナリズム研究所が6月17日に発表した年次リポート「Digital News Report 2024」(外部サイトに遷移します)によると、ポッドキャストのリスナー数が世界的に増えており、教育水準・所得ともに高い若者層を中心に伸びているという。同リポートは市場調査会社YouGovが47カ国、9万5,000人に調査した結果をもとに、GoogleやFacebookをはじめ、あらゆるデジタルメディアにおけるニュースの接触状況を分析したもの。
2018年から調査してきた20カ国(英国、米国、日本、欧州各国など)の平均で、2024年は35%の人が1カ月以内にポッドキャストを聴いていた。ただし、ニュース系のポッドキャストにアクセスしているのは13%。過去7年間のコンテンツ別推移をみると、ニュース系ポッドキャストの利用率は18年に11%で、24年の13%とほぼ横ばい。その他のポッドキャストの利用者は18年の29%→24年35%と上昇幅がやや大きかった。
男女別にみると、男性の39%、女性の32%がポッドキャストを利用している。ポッドキャスト市場の特徴として、男性の進行役が圧倒的に多く、ニュースや政治関連のコンテンツが主に男性リスナー向けに制作・発信されていることがその理由として挙げられている。年齢別にみると、18〜24歳は58%がポッドキャストを利用しており、以下25〜34歳が55%、35〜44歳が44%、45〜55歳が32%、55歳以上が20%――と年齢が高くなるにつれて利用者が減る傾向にある。
ニューヨーク・タイムズ紙など大手の新聞・出版メディアが新たな情報発信ツールとして、比較的低コストで制作できるポッドキャストに続々と進出する傾向にあるのが発信者側の近年の特徴だ。また最近は人気ポッドキャストの多くが映像化され、YouTubeやTikTokといった動画プラットフォームで配信されるようになっている。音声プラットフォームと映像プラットフォームの境界があいまいになり、ポッドキャストのコンテンツを自動的にYouTubeにアップロードするツールも開発されているということだ。
今年3月には、音声メディアを調査するEdison Researchの年次レポート「2024 Infinite Dial」も発表され、ここでもポッドキャストのリスナー数が増え続けていることが示された。ロイターのリポートが世界を対象としているのに対し、こちらは米国内の12歳以上の1,086人に24年1月、英語とスペイン語で行われた。サンプルが小さいため、その結果を12歳以上の米国人口統計に加重平均して全体像を浮かび上がらせている。ロイターがデジタルメディアの調査であるのに対し、こちらはオーディオに特化した調査だ。
これによると、米国内では1億人近い成人が「毎週ポッドキャストを聴く」と答えている。12歳以上に広げると1億9,200万人に及び、米国の総人口の3分の2にあたる。10年前のポッドキャストリスナーは総人口の30%だった。リスナーの主要年齢層はこれまでと同じ12〜34歳で、10人に6人(59%)が「毎月聴く」と答えた。
さらに、成人の約3分の1が「車内でポッドキャストを聴く」と答えており、かつてラジオ放送が独占していた車内オーディオ市場にポッドキャストが仲間入りしてきたことも示された。パンデミックで車内での接触は一時減少したが、ここにきてまた復調傾向にあるという。また、12歳以上の米国人のうち2億4,100万人がポッドキャストを知っており、その認知度も上昇の一途だ。この数字は総人口の84%にあたり、6年前は64%だった。
調査では、女性リスナーが増えて全体の底上げを促していることも指摘されている。ロイターのリポート同様、米国でもポッドキャスト人口は男性の方が多いが、今回のリポートで「毎月ポッドキャストを聴く」のは男性48%、女性45%だった。男女間の差は3㌽。23年には7㌽だった差が1年で4㌽も縮まっている。最近は女性リスナー向けの番組も増えているという。しかも、女性の方がより多くの番組を聴いているとのデータも示された。「毎週聴く」と答えた人(男女)の平均番組数は8.3だが、男女別に見ると女性が9.5、男性が7.2だった。
世界市場と米国市場では多少傾向は異なるものの、いずれもポッドキャストのリスナーは増加しており、若者層への浸透が進んでいることが示されている。