各地の放送局と放送文化基金が共催する「制作者フォーラム」が、9月から12月まで、全国5地区(北日本、北陸・甲信越、愛知・岐阜・三重、中・四国、九州・沖縄)で開催されている。フォーラムでは、制作者同士の交流の場を設けることを目指し、若手制作者によるミニ番組コンテストと、ゲスト審査員のトークセッションが行われる。民放onlineでは各地区の模様を伝える。今回は「北日本」。
なお、各地区から制作者が集う「全国制作者フォーラム」は2025年2月15日(土)、東京の如水会館で行われる。(編集広報部)
「北日本制作者フォーラムin あおもり」は、青森市の青森市男女共同参画プラザ・カダールで11月1日に開かれた。北海道・東北エリアの民放とNHK計40局が協力し、約40人の制作者らが参加した。
恒例のミニ番組コンテストは、レギュラー情報番組のコーナーや夕方ニュースの特集などを中心とした10分以内の番組で、震災の記憶の伝承、調査報道、クマ出没など多岐にわたるテーマが並んだ。予選を通過した番組21作品を上映し、番組ごとに審査員が講評、この中から最優秀賞1本、優秀賞2本、審査員特別賞3本、放送文化基金特別賞1本が選ばれた(詳細はこちらから)。審査員は、ゲストの丹羽美之(東京大学大学院情報学環教授)、松原文枝(テレビ朝日プロデューサー)、石原大史(NHKチーフディレクター)の3氏に加え、北日本各地区代表幹事7人が務めた。25年2月に開かれる「全国制作者フォーラム」に招待される最優秀賞1本と優秀賞2本は次のとおり。
【最優秀賞】
▶テレビユー福島 木田修作氏=『「百年後の子孫(こども)たちへ」帰還困難区域の記録誌 住民たちの13年』
【優秀賞】
▶福島中央テレビ 王国屹氏=『福島第一原発事故と中国企業 処理水に揺れる日中関係』
▶北海道テレビ放送 須藤真之介氏=『自衛隊車両海外流出問題 独自の追跡取材で防衛省が動く』
最優秀賞のテレビユー福島『「百年後の子孫(こども)たちへ」帰還困難区域の記録誌 住民たちの13年』(映像はこちらから)は、原発事故で帰還困難区域となり人の立ち入りが厳しく制限されている福島県浪江町の赤宇木(あこうぎ)地区の元住民たちが原発事故後10年かけてまとめた記録誌を取り上げた。記録誌の編集委員を務めた方を中心に住民の声を集め、ふるさとへの思いを聞き、原発事故で何が奪われたのかを浮かび上がらせた。審査員を務めた丹羽氏は「記録誌を通して住民の無念や怒りが伝わる優れた番組だ。長尺の番組にできる内容だった」と評価。ディレクターを務めた木田修作氏は、「東日本大震災、原発事故関連については、われわれが伝えなければとの思いを皆持ちながらローカルニュースで伝えている。この賞を糧に取材を続けたい」とコメントした。
続いて行われたトークイベントでは、参加者から事前に集めた質問にゲストの3人が答える形で進められた。「番組取材と日々の業務との折り合いをどうつけるか」「取材が行き詰まったらどうすればよいか」といった日常業務にまつわる問いから「テレビが生き残るためにどうすればいいか」といった現在のメディア状況をめぐるものまで話題が広がった。
「デイリーニュースの質を上げるためにどうしたらいいか」との問いに石原氏は「スクラップ・アンド・ビルドが必要」と指摘、インターネット上にも出ている発表もののニュースの必要性に疑問を感じると述べ「そこでしか見れないもの」が求められると応じた。これを受けて松原氏は、発表もののニュースでも、「その真意は何なのか、付加価値、違いのあること」を伝える重要性を指摘した。丹羽氏は、「地域の視聴者が何に困っていて、何を見たいと思っているのかがファーストプライオリティになる。それを社内で議論してほしい」と呼びかけた。
<トークイベントに登壇した審査員(右から石原氏、松原氏、丹羽氏)>
次回は福島県郡山市で開催される。
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