数々の名作ドラマを生み出し、2023年11月29日に亡くなった脚本家・作家の山田太一氏の3回忌にあわせて、横浜の放送ライブラリーは12月12日から「山田太一・上映展示会~名もなき魂たちを見つめて~」を開催する。
『男たちの旅路』(NHK、1976~82年)、『岸辺のアルバム』(TBSテレビ、1977年)、『想い出づくり。』(TBSテレビ、1981年)、『ふぞろいの林檎たち』(TBSテレビ、1983~97年)など放送史に残る名作を手がけた山田太一氏は、市井の「名もなき人々」の日常を見つめ、その時代やそこに生きる人々の姿を常に描き続けた。会場では山田太一氏が手がけたテレビドラマ全作品の紹介と、貴重な台本、初公開の直筆原稿や資料のほか、山田氏が木下惠介監督や俳優の大原麗子さん、沢村貞子さん、八千草薫さんなどと交わした手紙を展示する。また、同氏の作品に影響を受けた次世代の脚本家やメディア人(岡田惠和、宮藤官九郎、鈴木敏夫、宇多丸の各氏ら)のメッセージを紹介する。
また、上映会場では同ライブラリーの公開番組からセレクトした名作を日替わりのプログラムで上映する。
会期は12月12日(金)~2026年2月11日(水・祝)、月曜日は休館(祝日の場合は翌平日休)、12月29日(月)~1月5日は年末年始で休館。時間は10時~17時。会場は横浜情報文化センター8階の放送ライブラリー イベントホールと映像ホール。入場無料。詳しくは同ライブラリーのウェブサイトから(外部サイトに遷移します)。
「山田太一のバトンを繋ぐ会」も始動、
上映展示会にも協力
放送ライブラリーを運営する放送番組センターと同上映展示会を共催するのは「山田太一のバトンを繋ぐ会」。山田氏が残した作品やその資料を「次世代に役立てたい」と、山田氏の次女・長谷川佐江子氏(同会代表)とプロデューサーで演出家の合津直枝氏(テレビマンユニオン)が中心となって始めた。今後は▶ドラマ・戯曲の直筆原稿や山田氏が大学生時代から書き続けた「読書ノート」を早稲田大学演劇博物館に寄贈、▶早稲田大学演劇博物館主催で2026年1月に作品の連続上映会を開催、▶書斎を、山田氏が10歳から18歳まで過ごした神奈川県湯河原町の町立図書館に再現、▶小説の直筆原稿を神奈川県近代文学館に寄贈(予定)、▶神奈川県川崎市の円真寺に「山田太一の碑」を建立、▶母校の神奈川県立小田原高校の中等教育史料館に「山田太一コーナー」を常設(事前予約制)――などを行う。同会は放送文化基金の「2025年度イベント事業部門」(前期)の助成も受けている(既報)。
今回の展示で「繋ぐ会」は、山田氏の小・中学校時代の作文やイラスト、前述の「読書ノート」をはじめ、直筆原稿や仕事仲間との往復書簡など初公開となる貴重な資料を提供したほか、数々の名作が生まれた書斎や書庫から原稿用紙、筆記用具、眼鏡などの愛用品の展示にも協力した。12月10日に放送ライブラリーで行われた活動報告会で長谷川氏は「『次の世代に何かを渡していく、前の世代と次の世代の自分は"つなぎ目"なんだ』という父の言葉を会の活動を通じて継承していければ」、合津氏は「偉人を書かず、名もない庶民に寄り添った山田さんのドラマは今こそ求められているような気がします。膨大な資料や作品はいずれ"バーチャル山田太一資料館"のようなものに発展させるのが夢」と話した。
<「山田太一のバトンを繋ぐ会」の活動を報告する
長谷川佐江子氏㊧と合津直枝氏/12月10日、横浜で>
山田太一氏の作品は現在、BS-TBSで『想い出づくり。』(1981年)を放送中(月~金、7:00~7:54)。12月25日からは『深夜にようこそ』(1986年)を放送する(放送曜日と時間は同じ)。
