東海テレビ放送のドキュメンタリー映画『いもうとの時間』が、1月4日から東京のポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町、名古屋市のナゴヤキネマ・ノイほか全国で順次公開される。
1961年に三重と奈良両県にまたがる集落で起きた名張毒ぶどう酒事件。村の懇親会で振る舞われたぶどう酒を飲んだ5人が死亡した。東海テレビは1977年からこの事件を追い続けてきた。本作監督の鎌田麗香さんは同社で名張毒ぶどう酒事件を担当する3代目のディレクターとなる。担当し始めたときは「袴田事件」で拘留から解放された袴田巖さんを密着取材し、ドキュメンタリー映画『ふたりの死刑囚』(2016年)に結実させた。『眠る村』(2019年)では事件現場の村人たちの供述や物証を検証するとともに再審を棄却し続ける司法のあり方に目を向けた。本作では「基本に返って村人ら関係者の声を聴くことに力を入れた」という鎌田監督。事件当時の映像も交えて捜査や裁判のこれまでを振り返り、第10次再審請求も退けられ、再審の扉が開かない現状を伝えると同時に、犯人とされ死刑判決を受けた奥西勝さん(2015年に89歳で獄中死)の妹である岡美代子さん(95歳)をはじめとした関係者の証言から奥西さんの人物像を描き出す。
本作ではとくに 奥西さんの無罪を信じ活動してきた美代子さんの現在を映し出す。さらに美代子さんの夫・忠三さんが、逆転死刑判決となった二審(1969年)の後に奥西さんに送った手紙を紹介しているところも注目だ。鎌田監督は「有罪判決への無念の思いが込められた手紙の文面に触れてほしい」と話す。
<再審を求める岡美代子さん ©東海テレビ放送>
ナレーションは俳優の仲代達矢さんが担当している。『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』(2012年)で奥西さん役を演じたほか、『毒とひまわり〜名張毒ぶどう酒事件の半世紀〜』(2010年)などでナレーションを務めており、東海テレビドキュメンタリーは本作で5作品目の参加。
ポレポレ東中野で1月4日に行われた舞台あいさつで、ナレーションは「低い声で読んだ」と仲代さん。プロデューサーを務めた元東海テレビの阿武野勝彦さんは「仲代さんに読んでもらうことを意識したナレーション原稿」だと明かした。阿武野さんは2024年に同社を退職したが、最後のテーマに同社が半世紀近くにわたって追ってきた同事件を取り上げたという。「この映画がきっかけで(再審の流れが)変わったと言われるように」と本作への期待を込めた。
<1月4日ポレポレ東中野での舞台あいさつ(左から阿武野さん、仲代さん、鎌田さん)>
最新の上映情報はこちら(外部サイトに遷移します)。