M9.0の地震により広範囲にわたる津波被害や福島第一原発事故が発生した東日本大震災から14年。今年も3月11日を中心に、民放各局は震災関連の特別番組や特集企画を放送した。14年前の震災を経験していない子どもたちへの継承、能登半島地震の被災地とのつながり、復興の後押しなどをテーマにした番組や、2月19日に発生した岩手県大船渡市山林火災との"二重被災"などをふまえた企画などが見られた。また、「3.11」という日にちや、番組ジャンルに捉われない多様な伝え方に各局の創意工夫があった。岩手、宮城、福島の民放各局の番組を中心に、編集広報部でピックアップして紹介する。(編集広報部)
ラジオ:ラジオならではのフットワークや音楽でも伝える
IBC岩手放送(IBCラジオ)は、特別番組『東日本大震災から14年 ~語り継ぐ3.11~』(3月11日13:05~15:00【第1部】、15:00~16:30【第2部】)を放送。2012年から毎年同番組に出演している齋藤徳美・岩手大学名誉教授をコメンテーターに迎え、直近に発生した大船渡市山林火災と避難所などの現状、洋野町における東日本大震災前後の防災・消防団の取り組みを取材。また、毎日放送報道センター記者/人と防災未来センター特別研究調査員の福本晋悟さんをゲストに迎え、津波・震災の際の避難のアナウンスメントについて、より受け入れやすい伝え方や視聴者・リスナーとの信頼関係の重要性を考えた。さらに、盛岡市で開催された「岩手県東日本大震災津波追悼式」からの中継や、大槌町の木碑(もくひ)プロジェクトのワークショップに参加した高校生へのインタビュー、災害時の民間燃料供給サービス、岩手県の復興に向けた取り組み、幼児向け防災絵本などの多様なテーマをゲストとともに掘り下げた。
エフエム岩手は、特別番組『未来へつなげるRADIO』(3月11日14:00~15:45)を放送。人、地域、伝承、防災、減災、備えをテーマとして、大船渡市などの山林火災の現状、東日本大震災14周年行事「祈りの灯火(ともしび)2025~手をとりあって~」の会場からの中継・インタビュー、陸前高田市の「防災減災フィールド」運営者へのインタビュー、3.11仮設住宅体験館での宿泊体験リポートなどを通じ、いつ起こるか分からない災害への備えや伝承のあり方、命を守る大切さを考えた。
東北放送(tbcラジオ)は、特別番組『3.11みやぎホットラインスペシャル』(16:30~18:45)を放送。ゲストコメンテーターに気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館初代館長の佐藤克美さんを迎え、▶地域における優れた防災教育を表彰する「ぼうさい甲子園」でグランプリに選ばれた岩沼市立玉浦小学校の防災教育をリポート、▶2024年3月に開館した伝承館「蒲生なかの郷愁館」に込められた思いを紹介し、▶失われつつある宮城県の伝統的な漁具漁法の記憶を小説として残そうと執筆活動を始めた男性にインタビューを行った。それぞれの事例を交えながら、経験や記憶を未来につないでいくために、何が必要なのかを考えた。
また、震災伝承施設をネットワーク化する団体「(一財)3.11伝承ロード推進機構」と連携し、被災地の建設会社がどのような思いで復興にあたったのかを語った『3.11伝承ロード~復興、その先へ』を2~3月に計5回放送した(青森放送、IBC岩手放送、ラジオ福島でも放送)。
エフエム仙台(Date fm)はエフエム石川との同時放送で『~被災地から被災地へ電波にのせて~ エフエム石川 & Date fm SPECIAL PROGRAM MUSIC is...』(=写真㊤ 3月30日20:00~20:55)を放送。エフエム仙台の番組『RAD Radio ALL Day』のDJ2人が、能登半島地震から1年を経過したエフエム石川を訪れ、同社の安地昭博さんにこの1年間の思いなどを聞いた。翌日には、輪島市門前町の總持寺通り商店街・禅の里交流館の宮下杏里さんを訪ね、地震で倒壊した建物から運び出されたピアノが、誰でも演奏できる「ストリートピアノ」として活躍していることなどを聞いた。ミュージシャンの斎藤和義さんへのインタビュー、"ゆず"の2人からのメッセージも。「音楽の力」というラジオならではのキーワードで2つの被災地をつないだ。
また、原則月1回放送の復興応援プログラム『Hope for MIYAGI』(3月9日19:00~19:55)ではNPO法人国際ボランティア学生協会の活動を取り上げ、毎年作成している『サバ・メシ防災ハンドブック2025』(※外部サイトに遷移します)を今年も発行した。
ラジオ福島は、特別番組『記憶つないで、今を伝えて。』(3月11日13:00~16:00)を放送。福島県出身のタレント・なすびさんと山地美紗子アナウンサーが進行し、福島市で開催された「東日本大震災追悼復興祈念式典」の模様を生中継したほか、双葉町などにおける除染土の処理問題や、楢葉町天神岬から復興の現在、南相馬町の旧小高教会幼稚園の資料館化の経緯、富岡町で語り部として活動する高校生、福島第一原発で働く東京電力社員、震災遺構・浪江町立請戸小学校など各地からつなぎ、取材・リポートした。24年10月に亡くなった西田敏行さん(福島県出身)の歌(『あの街に生まれて』)が胸を打つ。
エフエム福島(ふくしまFM)は、特別番組『おかえりがくえん in 生木葉ファーム 〜何度でも起き上がる、福島と。一緒に考える、農のこと、生きること。〜』(=写真㊤ 3月23日19:00~20:00)を放送。福島市生まれのシンガーソングライター・片平里菜さんが主催し、3月11日にいわき市「生木葉ファーム」で実施したイベントを収録。「福島の農業」をテーマに、福島で活躍している3人の農家の皆さんをゲストに招いて行ったトークイベントの模様を伝えた。「福島の農家が歩んできた震災からの14年の歩み」や、「わたしたちが普段購入している野菜・果実・衣服がどんな"てまひま"を経て作られているのか」などについて、リスナーとともに学んだ。
また、『RADIO GROOVE』内で「レディグル震災14年特集【未来に繋げる】」(3月5日~11日(水・木・金・月・火)17:05~17:20)を放送。福島県浪江町の水産仲卸会社社長とフレンチシェフ、福島大学のボランティア学生、震災をきっかけに消防士になった男性、浜通りのホテルを計画中のクリエイティブディレクター、福島県立医科大学演劇部に、それぞれの取り組みや思いを聞いた。
テレビ共同制作番組(岩手・宮城・福島):「当時の子どもたち」「それぞれの選択」「伝えたい想い」
ANN3局(岩手朝日テレビ、東日本放送、福島放送)は、共同制作番組『震災14年 あの日のこどもたちは』(=写真㊤ 3月11日14:53~16:05)を放送。当時は幼く現実を受け入れることもできなかった子どもたちは、それぞれ当時の記憶を胸に"あの時があったからこそ"選択した人生を歩んでいる。今何を思い、何を感じ、どんな壁に直面しているのか。ジャーナリストの柳澤秀夫さん(福島県会津若松市出身)が、▶岩手県釜石市で「語り部」となった女性、▶宮城県石巻市で復興に向けた交流拠点をつくるプロジェクトを始めた男性、▶福島県双葉町で町の職員として働く女性を取材し、それぞれの思いを聞いた。
FNN3局(岩手めんこいテレビ、仙台放送、福島テレビ)は、『岩手/宮城/福島合同特別番組 明日への羅針盤 2025~それぞれの選択』(=写真㊤ 3月11日14:50~15:45)を放送。今年は被災した宮城、岩手、福島3県の人々の「それぞれの選択」を通して、その意味と今を見つめ、復興の「羅針盤」を探った。▶岩手県(岩手めんこいテレビ)は文化財を未来につなぐ選択をした博物館の学芸員の思い、▶宮城県(仙台放送)は石巻市で大津波警報を知りながら避難しなかったが、救出された後「奇跡の生還」と呼ばれた少年(当時)の後悔、▶福島県(福島テレビ)は原発事故による避難指示からふるさとに帰還する選択をした人や被災地に移住してきた人を取り上げた。
NNN3局(テレビ岩手、宮城テレビ放送、福島中央テレビ)は、共同制作番組「NNNドキュメント'25『3・11大震災シリーズ(107)東日本大震災14年 私たちのあの日~紡がれる記憶 伝えたい想い~』」(=写真㊤ 3月9日25:05~26:00)を放送。「甘く見ていた...プロなのに」奇跡的に助かった潜水士が語る津波の恐怖と教訓。また、「もっと語り合いたかった」「あの時、手を離さなければ...」「自分の命は自分で守って」「災害を自分ごと化して」「ご近所を大切にして」など、被災者たちが伝えたい想い="メッセージ"の数々を伝えた。
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