中国放送 「拝啓 20年後のあなたへ。」 リスナーから大切な人への手紙 20年後にお届けします

松原 芳充
中国放送 「拝啓 20年後のあなたへ。」 リスナーから大切な人への手紙 20年後にお届けします

中国放送(RCC)は今年、開局70年を迎えました。広島県民との結びつきをより強めたいという思いを込めて「広島大家族プロジェクト」と銘打ち、さまざまな周年プロジェクトを進めています。昨年、周年プロジェクトを考えるワーキンググループ(WG)にて、とあるメンバーの「2022年は、あの手紙を届ける年だ」という言葉から、本企画がスタートしました。

思いを温かく伝える

さかのぼること20年前、2002年にRCC開局50周年のラジオ企画として「20年後のあなたにつたえたい」をテーマにリスナーから手紙を募集しました。障害がある娘や、生まれたばかりの子どもにあてた手紙など、大切な人への思いが詰まった415通が集まりました。手紙はタイムカプセルに入れて、当時新設された江田島市の沖美送信所に保存、20年後に開封し、お届けするという企画でした。当時の社報をひも解くと、担当ディレクターのコメントとして「20年後のスタッフよ、沖美送信所のタイムカプセルに収められた聴取者からの手紙、その思いを温かく伝えて下さい」と記されていました。

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<送信所に20年間保管されていたタイムカプセル>

今年がその20年後にあたることからWGでは、手紙を届けるとともに「思いを温かく伝える」という先人たちのメッセージを周年企画としてどのように落とし込むかを議論しました。その過程で、20年前の企画の詳細を知ろうにも、当時携わった社員が退職したり、また関わっていても記憶が曖昧だったりと、20年という時の長さを感じざるを得ませんでした。そんな紆余曲折がありながら、ラジオ・テレビでレギュラー展開することが決まりました。

20年前にRCCラジオへあてた
お手紙を覚えておられますか?

ラジオでは、生ワイド番組『おひるーな』(月―木、11・40―14・55/金、11・40―16・50)の木曜日コーナー「拝啓、20年後のあなたへ。」で毎週、手紙を書いた本人に電話出演していただき、20年前に手紙にしたためた思い、これまで歩んできた20年を振り返ってもらっています。出演を依頼すると、驚かれながらも受けていただき、温かい声を聞かせていただいています。ハガキやFAX、メールと自分でつづった思いをパーソナリティが読んでくれる温もりが、ラジオメディアであることを理解し、快く受けていただいているのだと感じます。

自ら書いた手紙に何をつづったのか記憶にないという方もいれば、送った手紙をコピーして持っているという方も。何気ない日常や未来の自分にあてた手紙。孫や子どもの将来を案じる手紙。障害のある自分の子どもへあてた手紙。ガンを患い20年後、家族と一緒にはいられないかもと、家族への思いを寄せた手紙――などさまざまです。生まれてくる子どもにあてた母親の手紙をアナウンサーが代読し、20歳になった娘がそばで聴くという放送回もありました。目頭が熱くなり、お互い照れくさそうな親子の心をアナウンサーとのやり取りで解きほぐします。

ある夫婦は揃ってラジオが好きで、妻が20年後に手紙を託しました。出演をお願いすると、その日は夫の余命を病院で聞いて来たばかりでした。「20年前に書いた自分の手紙をアナウンサーに代読してもらい、病床の夫に聞かせたい。ぜひ、読んでほしい」と、熱望。放送の1カ月後、夫が亡くなられたことと、ラジオを聴かせることができた感謝がつづられた手紙をいただきました。日常的にリスナーと信頼関係を築いてきたラジオの存在が実を結んでいるこの手紙企画は、われわれメディアがその人、その家族の未来を紡ぐ大事な役割を担っていると実感します。

「手紙を届けるタスキリレー」
言葉で未来をつなげていく

テレビでは、夕方のワイド番組『イマナマ!』(月―金、15・40―18・56)内で放送されていたコーナー「原晋の県人ことば駅伝」の新企画としてこのプロジェクトを展開しています。広島県出身の原晋・青山学院大学陸上部監督が広島の街の人たちとふれあい、その人たちが大切にしている言葉をつないでいくという元々のコーナー趣旨をベースに、原監督がこのプロジェクトの監督としてアナウンサーたち(イマナマ女子駅伝部)とともに手紙を届けにあがり、その方の20年を掘り下げていくという内容です。

初回のロケでは、原監督がイマナマ女子駅伝部とともに沖美送信所でタイムカプセルを開封しました。その中には一つの文集が保管されていました。この文集はタイムカプセルを設置した際に、地元小学校の4年生の児童が手紙をつづって入れたものでした。文集を手がかりに小学校、そして当時の先生を訪ねた結果、手紙を書いたひとりの児童の現在にたどり着きました。

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<20年の時を経て、手紙は本人の元へ>

30歳になったその女性は、父親・母親・妹に対しての思いを手紙に記していました。「20年後のお父さん、お母さん、20年前のお父さん、お母さんはたくさん面白いことをして20年前の私を楽しませてくれていましたね。20年後のお父さんお母さんは、20年前のお父さんお母さんのままでいてくれてるのでしょうか?」(原文ママ)笑顔が絶えない家庭が20年後も続いていることを願って書かれた手紙。女性が20年後への思いをつづった父親は、病気で7年前に亡くなっていました。手紙を涙ながらに読みながら、女性はいまの思いを口にしました。「母親に迷惑かけてばかりで申し訳ない。ケンカもするけど楽しいです。また20年間、家族3人で楽しく過ごします」自分が書き記した20年後とは違ういまかもしれないけど、20年前の自分が残した言葉を胸にこれからを生きていく......取材を通じて、この企画の本当の意味を知った気がしました。

手紙とともに振り返る20年、
そしてこれからの20年

415通をすべて直接お返しできるわけではないので、1通1通思いが込められた手紙を郵送でお返しする準備に取りかかっています。一方で、次の20年後にあてた手紙をリスナーや視聴者から再び募集しています。また原監督をはじめとした出演者、広島東洋カープの選手などの著名人、地元企業の社長にも手紙を書いていただき、それをインフォマーシャルとして放送しマネタイズ化するなど、企画は広がりをみせています。

「拝啓 20年後のあなたへ。」特設サイト

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<原監督も20年後の青山学院大学駅伝部監督にあてた手紙を執筆>

20年後、放送局を取り巻く環境がどのように変化しているかわかりません。新型コロナウイルス感染拡大により、いまは「密」がマイナスイメージと捉えられる時代になっていますが、20年後はリスナーや視聴者との関係は変わらず密であり続けてほしいと思います。

「20年後のスタッフよ、タイムカプセルに収められている視聴者・リスナーからの思いの詰まった手紙、その思いを温かく伝えて下さい。そして、熱い思いを持って届けて下さい」

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