【2021年民放連賞 ラジオ準グランプリ受賞のことば】『オールナイトニッポン』を通じて全国のリスナーに寄り添う

冨山 雄一
【2021年民放連賞 ラジオ準グランプリ受賞のことば】『オールナイトニッポン』を通じて全国のリスナーに寄り添う

今から10年前、2011年3月18日(金)深夜1時、1つのラジオ特番が放送されました。番組名は『サンドウィッチマンのオールナイトニッポン』。東日本大震災から1週間、日本全体が未曾有の大災害に直面する中でした。震災発生から緊急報道が続き、全国ネットで放送する『オールナイトニッポン』も休止を余儀なくされました。そうした中で「東北魂」を掲げ、いち早く東北への義援金を立ち上げたサンドウィッチマンの気持ちをリスナーに伝えたいと、放送前日にオファーしました。

日々の放送をどう維持するか精一杯で、特番が決まった後にどのように準備したのかほとんど覚えていません。唯一覚えていることは、放送当日、緊急報道やライフラインに関する情報が続いていた宮城県のTBCラジオにて、急きょ放送が決定したことです。それは同時に数多くの避難所でもこの放送が流れることを意味していました。

番組冒頭でサンドウィッチマンの2人は、被災者に寄り添った言葉から入るべきなのか、楽しんでもらえるようにお笑いをするべきなのか放送直前まで迷っていました。結果、番組冒頭では「ショートコント、CD屋さん」というコントから入りました。少しでもラジオを通じて笑ってほしいという気持ちがそう決断させたのだと思います。そして裏番組のTBSラジオでバナナマンの2人が「今日だけはサンドウィッチマンの放送を聴いてあげてください」と呼びかけていました。私はスタジオでリスナーからのメールをチェックしていましたが、「バナナマンが裏番組で呼びかけていたので聴きに来ました」というメールが殺到したのです。

まさか裏番組からそんなエールが届くとは思っておらず、サンドウィッチマンの2人も番組スタッフも驚いたのを覚えています。被災された方からのメッセージも多く届き、「震災後に初めて笑いました」といった声や「2人の声を聴いているだけで落ち着きます」など、たくさんメッセージが届けられ、2時間の放送で次々と紹介していきました。番組の最後には「みんなで一緒に頑張ろうで、俺たちは強いぞ、大丈夫、大丈夫だ!」と力強い言葉で締めた2人。それから10年、ニッポン放送でラジオ番組「サンドウィッチマンの東北魂」を担当し、東北地方の人たちの声や暮らしを届けてきました。

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東日本大震災から10年を迎えた日の夜に再び、サンドウィッチマンの2人が生放送に挑戦しました。2021年3月11日深夜1時から放送された特別番組『サンドウィッチマンのオールナイトニッポン』。特に細かい企画を決めることなく、毎年3月11日に訪ねている気仙沼から有楽町に帰ってきて、感じたことをそのまま話したいという2人の希望もあり、あえて構成を細かく組まずに放送に臨みました。番組は2021年3月11日と10年前の2011年3月11日が交差するようなトークで進行。笑いを交えつつも震災に寄り添うということに取り組んできた2人の言葉は、ずしりと重いものになりました。話をうかがったのは、東北魂の活動をともにする狩野英孝さん、東北楽天ゴールデンイーグルスの銀次選手、そしてTBCの藤沢智子アナウンサーの3人。東北地方に寄り添ってきた皆さんの言葉は温かかったです。2人が震災時にラジオで聴いていたというTBCの藤沢智子アナウンサーには、当時どのような心境でお話されていたのかなどをうかがいました。

藤沢さんが話した言葉が印象に残っています。「停電になると、無音で真っ暗な中で不安になる。そうした時に知ってる人の声が聴こえると、あの人も今一緒にいるんだと不安を和らげることができる。普段からリスナーと近い所で信頼関係を持てればと思います。」

サンドウィッチマンの2人をはじめ、本当に数多くの皆さんの協力があって、このような特番を実施できたことを心より御礼申しあげます。これからも『オールナイトニッポン』を通じて、全国のリスナーに寄り添っていければと思います。


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