放送日誌 2023年3月

編集広報部

放送界の動きを中心に、行政や海外の動向もあわせ、1カ月の動きを日誌形式で記録します。
*2023年3月分を掲載。


【民放連】
3.16 2022年度第9回理事会を開催。▷2023年度事業計画・予算▷4月1日付の「九州朝日放送」(分割準備会社の九州朝日放送から放送局免許を承継予定)入会(正会員)と、「BSよしもと」「BS松竹東急」入会(準会員)▷2023年度の「放送番組の違法配信撲滅キャンペーン」継続――などを承認。

3.16 遠藤龍之介会長、定例記者会見で放送法第4条の政治的公平に関する行政文書をめぐる動きに関連し、「放送法は放送事業者の自主・自律が大原則。番組内容に関する政治や行政の関与はあってはならない」「2016年の大臣答弁以降も報道情報番組に関わる部分が萎縮したとは思っていない」発言。キー局のリアルタイム配信スタートから1年の評価を問われ、「時間的・空間的広がりが出て視聴の自由度が増し、視聴者が立体的にテレビを楽しんでもらう状況になった」と分析。各局が視聴者のニーズを把握し、良質なコンテンツの提供が進むことを期待した。総務省の検討会でNHKのインターネット活用業務を必須業務化する議論が進んでいることには、「"必須業務化"という概念が先行することは望ましくない。理解増進情報やインターネット受信料、予算のキャップなどをどうするのか。NHKは考えを示してほしい」と要望した。

3.16 「民間放送の価値を最大限に高め、社会に伝える施策」の中間報告を発表。2022年9月の同施策決定後、各専門委員会で検討し、▷2023年4月施行の改正「民放連放送基準」の浸透に向けた取り組み▷BPOと各社の連携と情報発信の検討▷ラジオの経営課題に関する調査研究▷テレビ、ラジオの広告効果に関する研究――など各項目の進捗状況をまとめた。同施策は民間放送の価値を最大限に高めるだけでなく、それを社会に伝えることに力点を置き、「信頼される放送の堅持」「民間放送事業の持続性の向上」など4本柱35項目で構成。22-23年度の2年をかけて取り組んでいる。

3.16 FM補完中継局に関する「基幹放送用周波数使用計画」の一部変更案等に対する意見を総務省に提出。

3.24 放送基準審議会、全国考査責任者会議をオンラインで開催。2022年12月に改定された「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項」やCM出稿が増えている「オンライン診療」について、それぞれ消費者庁と厚生労働省の担当官が解説。考査事例研究部会からの2022年度の取り組み状況の説明や番組出演者保護検討WGから同年度の「番組出演者保護に関する施策」の検討状況報告があった。

3.30 民放連とNHK、日本視覚障害者団体連合による「第3回解説放送に関する意見交換会」をオンラインで開く。日本テレビは解説を付与した番組の一部を再生し、制作上の工夫やこだわりを説明。NHKも4つの番組を紹介した。障害者団体側からは「物の色や大きさなどの情報があるとイメージが広がりやすい」「ネット配信にも解説を付与してほしい」などの意見が出された。総務省地上放送課もオブザーバーとして出席。

―― 放送基準審議会、2023年度のメディアリテラシー活動助成対象事業として次の6件を決定。▶山形テレビ=自治体・大学・放送局による「郷土の遺跡アニメーション復元と番組制作体験」▶東海テレビ=みんなのテレビスクール2023~情報を読み解く方程式~(仮)▶中京テレビ="リアル"と"仮想空間"で学ぶメディアリテラシー活動▶南海放送=思いを知る、正しく発信する~ふうま君が伝えたいこと~▶熊本朝日放送=学校教育における情報活用教育に関する連携協定▶大分朝日放送=やさしくて深い天気の話

―― 『放送倫理手帳2023』を刊行。2003年の刊行以来21冊目。「放送倫理基本綱領」や民放連「放送基準」「報道指針」など放送人が心得ておくべき基本的な規範類を収録。4万500部作成し会員社の社員や社外スタッフに必要部数を配布。民放連ウェブサイトの会員ページにはウェブ版も掲載する。


【放送・マスメディア】
3.3 在名民放テレビ4局(東海テレビ・中京テレビ・CBCテレビ・テレビ愛知)、共同で運営する動画情報配信プラットフォーム「Locipo(ロキポ)」の2020年のサービス開始以来、MAU(マンスリー・アクティブユーザー)が2023年2月に100万を超えたと発表。

3.10 朝日新聞社の月刊誌『Journalism』が同日発売の2023年3月号で休刊。2008年10月の創刊以来、ジャーナリストや研究者が新聞、放送、出版、ネットのメディアのあり方に向き合ってきた。今後は朝日新聞本紙や朝日新聞デジタルなどで関連コンテンツを発信する。

3.13 南海放送、有料動画配信プラットフォーム「なんかいオンデマンド(NOD)」を開設。『ZIP!』内で放送された朝ドラマ『パパとなっちゃんのお弁当』の原作版ドキュメントを配信。個別課金やサブスクリプションを中心にオリジナルコンテンツの制作などサービス内容を充実させる。

3.21 野球の「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の決勝戦(米国時間)で日本代表が米国を破り3大会ぶり3回目の優勝。生中継したテレビ朝日の世帯平均視聴率は42.4%(ビデオリサーチ、関東地区)。テレビ朝日とTBSテレビが地上波で生中継した日本戦全7試合はいずれも40%を超える視聴率を記録、リアルタイムで視聴した人は全国で推計9446.2万人に(ビデオリサーチ調べ)。ライブ配信を行ったAmazonプライムビデオも決勝戦の配信初日の視聴者数が国内歴代1位となったと発表した。

3.27 日本テレビの石澤顕社長、定例記者会見で謝罪。3月24日放送の情報番組『スッキリ』で「那須どうぶつ王国」から生中継したタレントがペンギンがいる池に複数回入ったとして、園などから「動物への敬いの気持ちを忘れた単に笑いの対象とするような行為」と抗議を受けていた。石澤社長は「率直におわびし、再発防止に生かしたい」とした。

3.31 BPO(放送倫理・番組向上機構)の2022年度年次報告会をオンラインで開く。放送倫理検証委員会、放送人権委員会、青少年委員会の3委員長が22年度の活動を報告した。大日向雅美理事長はあいさつで2023年7月に設立20年を迎えるのにちなんでBPOの歴史を振り返った。認知度は向上した一方、放送事業者を規制・指導する機関との誤ったイメージによる視聴者意見も寄せられているとの認識を示し、「放送の自主自律を確保しながら、正確な放送と放送倫理の向上に寄与することで、放送の価値を高める後押しを続けたい」と語った。

3.31 テレビ朝日のバラエティ番組『タモリ倶楽部』が放送終了。1982年10月のスタートから40年余りの歴史に幕を下す。放送回数は計1,939回。


【行政・海外】
<行政等>
3.3 政府、放送法と電波法の一部を改正する法律案を国会に提出。複数の放送対象地域の放送番組の同一化を可能とする制度を整備するほか、複数の特定地上基幹放送事業者が中継設備を共同で利用できるようにする。総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」のとりまとめを踏まえた。

3.3 小西洋之参院議員(立憲民主)、予算委員会で放送法が定める「政治的公平」の解釈をめぐる総務省の内部文書をもとに「安倍政権の圧力で法解釈が変更されたことを示している」と指摘。同文書を公表(3.7 総務省、同文書を「行政文書」と認めたうえで公表、内容は精査を続けるとした。3.22 総務省、同行政文書に関する調査結果を参院予算委の理事懇談会で報告。「内容の正確性は確認できなかった」としつつ、高市早苗経済安全保障担当相〔当時の総務相〕が主張する「捏造」があったとは考えていないと結論づける。3.30 総務省の小笠原陽一情報流通行政局長、参院総務委で「政治的公平は番組全体を見て判断するとの従来からの解釈に変更はない」と見解を示す。松本剛明総務相も「局長の答弁が総務省の見解」と述べる)。

3.9 総務省、「AM局の運用休止に係る特例措置に関する基本方針案」の意見募集結果を公表。軽微な修正を除いて、原案どおり決定。

3.15 総務省「公共放送ワーキンググループ」の第6回会合でNHKのインターネット時代の公共放送と競争ルールのあり方を検討。オブザーバーとして出席した民放連の堀木卓也専務理事は議論の進め方について、「放送ではなく通信分野で新たにNHKの『必須業務』を設定するのであれば、その定義や放送のために独占的に徴収が認められた受信料との関係、さらに情報政策全般に関わることを放送制度の中で議論できるのかなど根本的に疑問だ。いまだ共通認識を得られていないのではないか」と発言。次回会合までに民放連としての意見と、これまでの議論への疑問点を整理して文書で示すとし、これへの回答を要望した。

3.28 政府、景品表示法が禁止する不当表示として「ステルスマーケティング(ステマ)」を新たに指定。2023年10月1日の施行に向けて運用基準を公表した。「広告」の記載がない場合などのステマ行為が規制の対象となる。テレビCMのように広告と一般的に理解できるものは対象外。

3.30 参院本会議、NHKの2023年度予算・事業計画が賛成多数で承認される(3.24衆院本会議でも承認)。事業収入は6,440億円(前年度比450億円減)。事業収入は6,720億円(170億円減)で280億円の赤字は財政安定のための繰越金を充てる。

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