放送日誌 2023年6月

編集広報部

放送界の動きを中心に、行政や海外の動向もあわせ、1カ月の動きを日誌形式で記録します。
*2023年6月分を掲載。


【民放連】
6.1 ㈱新潟放送が民放連に入会(正会員)。旧新潟放送のテレビと中波・FM補完中継局の免許を継承。認定放送持株会社に移行した旧新潟放送は退会し、会員社総数207社は変わらず。

6.5 「青少年に見てもらいたい番組」を公表。会員社のテレビ139社が2023年春改編に合わせて選定した「青少年に見てもらいたい番組」を取りまとめたもの。在京テレビ5社は31番組、それ以外の134社は1,008番組を選んだ。各社が選んだ延べ1,039番組は民放連ウェブサイトに選定理由や放送日時とともに掲載している。

6.7 民放連の堀木卓也専務理事、総務省「公共放送ワーキンググループ(WG)」第9回会合のヒアリングで4月に提出した「見解と質問」への回答後に意見陳述の機会を設けるよう要望。NHKのインターネット活用業務を必須業務化した場合の業務範囲に関する前回(5月26日)の説明に対し、▽報道サイトにおける「放送と同一の情報内容」は判断基準が不明確▽「放送と同様の効用」は概念が曖昧で、理解増進情報と同様、際限なく拡大する危険をはらむ--などと主張。受信料制度と財源の関係にあらためて疑問を呈する。

6.9 2023年度第1回会員協議会で㈱新潟放送の入会などを報告。放送計画、ラジオ、知財、経営の各議長・委員長からの活動報告も行われた。

6.9 2023年度の定時総会を開催。2022年度の民放連事業報告を了承、同決算(経常収益16億3,014万円、経常費用15億5,417万円)などを承認した。上口宏副会長と和氣靖理事の辞任に伴い、三村孝成・TBSラジオ社長(同21日付で会長)と森君夫・九州朝日放送社長の両氏を理事に選任。三村理事にラジオ委員長が委嘱された。

6.9 2023年度第3回理事会を開催。副会長に三村理事を選定するとともに、7月5日に臨時総会を開催することを承認した。

6.9 遠藤龍之介会長が定例記者会見。総務省の検討会で議論が進むNHKのインターネット活用業務について、「必須業務化が必要かどうかの議論は、NHKの情報公開を前提に行ってほしい」と要望。際限のない業務の拡大に至らぬよう「NHKは何をやり、何をやらないかを示すことが肝要」と述べる。

6.19 民放連の堀木卓也専務理事、総務省「デジタル時代の放送制度の在り方に関する検討会」の下に設置された「放送業界に係るプラットフォームの在り方に関するタスクフォース(TF)」の第1回会合にオブザーバーとして出席。▷NHKネット活用業務の必須業務化やそれを前提とした議論を容認したわけではない▽NHKはBS同時配信予算問題の再発防止策を講じ、「受信料・業務・ガバナンス」の三位一体改革を確実に進めるべき▽NHKとの協力は必須業務化の議論とはまったく別の課題▽民放とNHKの協力のあり方は当事者間で検討し合意形成することが重要▽民放のネット配信は個別企業の経営判断の領域で、ネット上のプラットフォームのあり方はこの場の議論になじまない――などの考えを示す。

6/29 民放連の本橋春紀事務局長、総務省「放送業界に係るプラットフォームの在り方に関するタスクフォース(TF)」の第2回会合にオブザーバーとして出席。民放事業者とNHKとの協力について説明し、民放とNHKとの共同事業においては、当事者間で協力のあり方を検討し、合意形成することが重要と説明。行政には動向を見守ったうえで当事者のニーズに合致した環境整備の後押しを求めた。

―― ラジオ委員会、報告書「米国ラジオ業界動向2023」を作成し、会員社限定で配布した。


【放送・マスメディア】
6.1 新潟放送、認定放送持株会社に移行し、商号を「㈱BSNメディアホールディングス」に変更した。テレビと中波およびFM補完中継局の免許は100%子会社の「㈱新潟放送」に承継。

6.1 NHK放送技術研究所、最新の研究開発成果を一般公開する「技研公開2023」を開催(4日まで)。「メディアを支え、未来を創る」をテーマに研究成果14項目を展示した。

6.7 第49回放送文化基金賞が発表される。民放の番組がドキュメンタリーとドラマ、エンターテインメントの3部門で最優秀賞を獲得。ドキュメンタリーの最優秀賞に輝いたのは北海道放送『性別は誰が決めるか ~「心の生」をみつめて~』、ドラマは関西テレビの『エルピス-希望、あるいは災い-』、エンターテインメントは読売テレビと中京テレビの共同制作『~この後どうする?密着TV~ 終わりが始まり』が最優秀賞を受賞。

6.8 NHKの稲葉延雄会長、2023年度予算にインターネット活用業務実施基準で認められていない衛星放送番組のネット同時配信に向けた設備調達費用として約9億円を計上していた問題を衆議院総務委員会で陳謝。

6.9 チューリップテレビ、初のドキュメンタリー上映イベント「ドキュメンタリーフェスティバル2023」を富山市内で開催(11日まで)。同社制作の『はりぼて』などに招待作品3作を加えた映画5本と、同社制作のドキュメンタリー番組7作の計12本を上映。制作者と参加者との質疑応答やゲストを交えたトークセッションも。

6.17 山梨放送、テレビ山梨、エフエム富士、NHK甲府放送局、山梨日日新聞社、日本ネットワークサービスがイベント「みんなで備えようやまなし防災・減災フェス」を甲府市で開催。6者を含む行政機関や地元の企業など計28のブースが出展して約2,500人が来場した。

6.21 日本新聞協会の新会長に中村史郎・朝日新聞社社長。任期は2年。

6.24 日本メディア学会の新会長に水越伸・関西大学教授。任期は2年。

6.27 NHK、2022年度決算を経営委員会で議決。事業収入は6,965億円で21年度比43億円(0.6%)減、事業支出は6,702億円で同93億円(1.4%)増。事業収支差金は263億円で全額を翌年度以降の財源として繰り越す。財政安定のための繰越金は22年度末で2,618億円(21年度末2,231億円)に。

6.29 日本新聞協会メディア開発委員会、総務省「公共放送ワーキンググループ(WG)」に意見を提出。NHKのネット業務について、メディアの多元性や言論の多様性を損なう可能性を指摘。こうした疑念を払拭する回答がWGの議論で示されていないとし、速やかな議論と回答を求める。


【行政・海外】
<行政等>

6.2 気象庁、台風2号の接近に伴い静岡県、愛知県、三重県、奈良県、和歌山県、高知県の6県で「線状降水帯」による大雨への警戒を呼びかける「顕著な大雨に関する気象情報」を複数回発表。5月25日に運用を開始した予測技術を活用した。

6.7 総務省「公共放送ワーキンググループ(WG)」第9回会合を開く。5月26日の第8回会合でNHKから示されたインターネット活用業務を必須業務化した場合の考えをめぐって意見交換。ヒアリングに出席した民放連や日本新聞協会メディア開発委員会から受信料制度と財源の関係や「放送と同様の効用」などに疑問が相次ぐ。

6.7 総務省「デジタル時代の放送制度の在り方に関する検討会」第19回会合が開かれる。民放連が放送事業者のコーポレートガバナンス強化のための取り組みを説明。報道機関である放送事業者の経営基盤強化を行政の場で検討する際は、放送の自主・自律を尊重した慎重な対応を求めた。NHKはネット空間の偽情報対策について説明。電通と博報堂DYメディアパートナーズはそれぞれ広告会社からみた民放ビジネスの現状と課題をプレゼンテーションした。

6.19 総務省「デジタル時代の放送制度の在り方に関する検討会」の下に設置された「放送業界に係るプラットフォームの在り方に関するタスクフォース(TF)」が第1回会合を開く。"良質な放送番組を国の内外に発信するプラットフォーム"の構築に向け、①地上波放送の中継局、②衛星放送の番組制作、③インターネット配信、④衛星放送、⑤国際発信――が論点に。構成員からは、民放とNHKが協力してインターネット上で放送を届けるプラットフォームの構築を志向する意見が相次ぐ。

6.21 総務省、NHKの受信料値下げと学生対象の免除拡大を認可。いずれも10月からで月額受信料を「地上波契約」が125円、「衛星放送」を220円値下げする。親元から離れて暮らす被扶養の学生からの徴収を新たに全額免除する。

6.23 総務省、2022年度の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」を発表。平日、休日ともに1日あたりのメディアの平均利用時間はインターネット利用がテレビのリアルタイム視聴を上回る。

6.29 総務省「放送業界に係るプラットフォームの在り方に関するタスクフォース(TF)」が第2回会合。民放連、TOKYO MX、テレビ神奈川、Netflixからヒアリング、上智大学の音好宏教授が衛星放送の今後の展望についてプレゼンテーションした。構成員からは中継局の共同利用について検討の場として協議会の設置を提案する意見が複数あった。

6.30 総務省「公共放送ワーキンググループ(WG)」の第10回会合で、NHKはインターネット活用業務について、必須業務として想定する範囲を補足し「必須業務化によって放送とインターネットに主従はなくなり、どちらでも等しくNHKの価値を享受してほしい」と説明。構成員から、NHKのインターネット関連業務を必須業務化した場合、NHKには重い責務を課すことになる旨の発言や、放送法の規律への具体的な提案があった。


<海外>
6.22 カナダで「オンラインニュース法」が成立。GoogleやMetaなどデジタルプラットフォーム事業者と報道機関との公正な収益分配、両者の自主的な商業契約締結の促進、報道機関による団体交渉の容認などを規定する。6カ月後の施行を目指す。

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