放送日誌 2023年7月

編集広報部

放送日誌 2023年7月

放送界の動きを中心に、行政や海外の動向もあわせ、1カ月の動きを日誌形式で記録します。
*2023年7月分を掲載。


【民放連】

7.3 民放連・日本アドバタイザーズ協会・日本広告業協会で構成する「字幕付きCM普及推進協議会」、「字幕付きCM通信」の第1号を発行し、字幕付きCM PORTAL WEB SITEで公開。出稿する広告主をさらに増やし、普及推進に弾みをつけることを目的に、ニュースレターの形で関係者に広く配布することにした。なお、同協議会には2023年1月から日本ポストプロダクション協会が協力団体として参画している。

7.12 民放連、自民党の「情報通信戦略調査会」のヒアリングを受ける。NHKのインターネット活用業務について堀木卓也専務理事は総務省の検討会で示した▷業務範囲の具体的な提示▽費用上限の継続した設定▷「受信料・業務・ガバナンス」の三位一体改革の徹底▷必須業務化と受信料制度・財源の具体的な議論▷民放との協力関係の深化――などの考え方をあらためて主張。

7.20 2023年度第4回理事会を開催。▷総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」第2次取りまとめ案への意見提出▷総務省「700M㎐帯における移動通信システム導入のための制度整備案」への意見提出▷総務省「自動運転時代の"次世代のITS通信"研究会」中間とりまとめ案への意見提出▷第71回民間放送全国大会のプログラム等――を承認。

7.26 「民放連 放送基準」を改正し、2024年4月1日から施行すると公表。SNS等における出演者への誹謗中傷に関する条文(56条)を新設。出演者への注意喚起や精神的な健康状態への配慮を盛り込んだ。あわせて、会員各社の参考に資するため「番組出演者への誹謗中傷に関する留意事項」も策定。放送倫理・番組向上機構〔BPO〕の放送人権委員会が番組出演者保護への検討を放送界全体に求めた(21年3月)ことを契機に、放送基準審議会で検討してきた(7.25 放送基準審議会、「番組出演者保護に関する全社説明会」をオンラインで開催。「民放連 放送基準」の改正について条文や留意事項を解説)

―― 民放連会員社(地上波194社、衛星系11社、計205社/2023年3月31日現在)の2022年度決算状況をまとめる。地上波の売上高総額は2兆1,472億円で前年(2021年度、以下同)比0.4%減、経常利益は1,327億円で前年比が26.1%減の減収減益に。衛星系は売上高が1,863億円で前年比0.2%増、経常利益が213億円で前年比3.2%減の増収減益。地上波の売上高の内訳は、ラジオ放送事業収入が1,038億円で前年比0.6%増、テレビ放送事業収入が1兆7,620億円で前年比3.3%減、その他事業収入は21.9%増だった。


【放送・マスメディア】

7.1 BPO(放送倫理・番組向上機構)の新PRスポット「いい番組って?」篇、加盟の民放テレビ局・ラジオ局で放送始まる。設立20年を機に、BPOのロゴをモチーフに3年ぶりに新素材を制作した。テレビ版は15秒(字幕あり)、ラジオ版が20秒の計2種類。

7.6 第39回ATP賞のグランプリに『ETV特集 ブラッドが見つめた戦争 あるウクライナ市民兵の8年』(ドキュメンタリー部門最優秀賞)が決まる。民放からは『一軒家丸ごと壊す』(情報・バラエティ部門、テレビ朝日映像/テレビ東京)、『silent』(ドラマ部門、AOIPro./フジテレビ)がそれぞれ最優秀賞を受賞。

7.11 NHK、前会長の前田晃伸氏の退職金を10%減額するとともに、役員6人を厳重注意したと発表。インターネット活用業務実施基準で認められていない衛星放送番組のネット同時配信に向けた設備調達費用として約9億円を計上していた問題で、当時稟議にかかわったことへの社内処分。

7.12 日本新聞協会メディア開発委員会、自民党「情報通信戦略調査会」のヒアリングを受ける。情報空間で新聞・通信社が果たす役割や現在の厳しい経営環境を説明したうえで、NHKのインターネット業務拡大への懸念を訴えた。

7.14 民放テレビのローカル局13社が系列を超えた動画サイト「のぞいてニッポン」を開設。放送エリアに限定されていた各局の番組やオリジナルコンテンツを全国配信することで、地域経済への貢献をめざす。地方創生などのライブ配信事業を手がけるLiveParkや楽天グループとともに立ち上げたコンソーシアム「のぞいてニッポン運営委員会」が運営する。

7.14 BPO(放送倫理・番組向上機構)の設立20周年を記念したセッション「変わる視聴者 明日の放送は」が東京で開かれる。「SNS全盛時代!放送局は炎上やネット世論にどう対応していくべきか」「オワコン化しないために難題山積の放送業界が取り組むべきことは何か」の2部構成で有識者や放送局の制作者、BPOの委員が討論した。

7.18 BPO・放送人権委員会、あいテレビで2016年から2022年まで放送された深夜のバラエティ番組の女性出演者が番組内でのセクハラ発言で精神的苦痛を受けたと申し立てていた問題で、「人権侵害は認められず、放送倫理上の問題があるとまでは言えない」とする見解を公表。ただし、「放送局に問題点として指摘される部分がなかったわけではない」としたうえで、「出演者が悩みを気軽に相談できる環境やジェンダーバランスに配慮した体制を整備するよう同社に求めた。

7.24 日本新聞協会メディア開発委員会、総務省「公共放送ワーキンググループ(WG)」第11回会合に出席し、NHKのインターネット業務を必須業務化することにあらためて反対する意見書を提出。

7.24 Twitter、サービス名称を「X」に変更。親しまれた青い鳥のロゴも廃止した。

7.28  MBSラジオ・ABCラジオ・ラジオ大阪の在阪民放ラジオ3社、1997年4月から共同で設置・運営してきた京都中継局からの中波(AM波)放送の送信を2023年10月29日で終了すると発表。京都市や大津市の都市型難聴や海外混信対策として運用してきたが、状況が改善されたため。

7.- BS日テレ・BS-TBS・BSフジ・BS朝日・BSテレ東のキー局系BS民放5社とNHK、新4K8K衛星放送のPRキャンペーンを展開。NHKの番組で人気の「チコちゃん」がNHKを飛び出す特番『チコちゃんに叱られる!新4K8K衛星放送キャンペーン特別編2』を各局で放送したほか、PRスポットでさらなる認知と普及を訴求。


【行政・海外】

<行政等>
7.5 総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」第20回会合で第2次取りまとめに向けて意見交換。マスメディア集中排除原則をめぐって認定放送持株会社のBS放送事業者のトランスポンダ保有上限を現状の0.5から衛星放送事業者同士と同じ4に緩和する提案があり、複数の構成員が賛同した。

7.11 総務省「放送業界に係るプラットフォームの在り方に関するタスクフォース(TF)」第3回会合を開く。中継局の共同利用やインターネット配信についてテレビ大分と南日本放送からヒアリングを行う。

7.12 自民党「情報通信戦略調査会」を開く。インターネット時代における公共放送のあり方をめぐり民放連と日本新聞協会メディア開発委員会からヒアリング。

7.24 総務省「公共放送ワーキンググループ(WG)」第11回会合を開く。テレビを持たずインターネットで視聴する人にも費用負担を求め、放送番組を届けることをNHKの必須業務化することに、構成員からは適切な競争評価制度の導入を前提に「概ね賛成」とする意見が相次いだが、日本新聞協会のメディア開発委員会は反対の意見書を提出。

7.25 総務省「放送業界に係るプラットフォームの在り方に関するタスクフォース(TF)」第4回会合を開く。NHK衛星放送における外部制作事業者の活用と外部制作比率について、全日本テレビ番組製作社連盟〔ATP〕の意見を踏まえて意見交換。論点整理として示された「インターネット配信」で、NHKと民放が連携するプラットフォームの具体化を求める意見が相次ぐ。「中継局の共同利用」には、NHKと民放、総務省による協議の場をつくるべきとの意見があった。

<海外>
7.11 韓国の国務会議(重要な政策の最高審議機関で大統領、国務総理、国務委員で構成)、公共放送の受信料を韓国電力の電気料金と統合徴収していた制度を廃止する「放送法施行令の一部改定案」を議決。翌12日には施行され、公共放送の受信料が分離徴収されることに。公共放送KBSは収入減などを懸念し反対を表明、憲法裁判所に判断を求める。

7.14 米国の映画俳優組合(SAG-AFTRA)が43年ぶりのストライキに突入。報酬の引き上げや配信事業・AI利用に関して制作会社側との交渉が決裂したため。5月から始まった脚本家組合のストライキとのダブルストになり、秋からの新番組編成や配信、映画製作への影響が出始めている。

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