2023年度のテレビ、ラジオ営業収入見通しの改訂~テレビ、ラジオとも年初より大幅に下方修正~

井川 智宏
2023年度のテレビ、ラジオ営業収入見通しの改訂~テレビ、ラジオとも年初より大幅に下方修正~

民放連研究所は9月27日、本年1月に公表した「2023年度のテレビ、ラジオ営業収入見通し」を改訂したので、その概要を紹介する。

なお、民放連ウェブサイトの会員ページ(※閲覧にはユーザー名とパスワードが必要)に掲載している『民放経営四季報No.141(2023年秋号)』では、今回の改訂見通しについて、テレビ、ラジオの地区別の予測値も含めて詳細を記載している。民放連会員社の方はそちらもあわせてご参照いただきたい。

予測の手法について

民放連研究所では、毎年1月に翌年度のテレビ、ラジオの営業収入見通しを公表し、年度中盤に差しかかる9月にその予測を改訂している。予測手法がそれぞれ少し異なるため、説明する。

毎年1月に行う予測では、翌年度のテレビ、ラジオ営業収入全体に関して、GDP成長率などの経済全体の動向や企業収益の予測をベースにして、民放連研究所が構築した計量モデルを用いて予測を行っている。そのうえで、個々の地区別の予測については、会員社へのアンケート調査で得られた情報も加味して算出している。

一方、毎年9月の改訂予測は、8月に実施した会員社へのアンケート調査に相当程度依拠している。上期の実績がほぼ判明し、アンケートで得られた各社の見方がかなりの確度で年度の実績につながるためである。

2023年度のテレビ営業収入改訂予測
スポットが大幅減

図表1にテレビ全体の1月予測と9月予測の対比を、図表2に2022年度の実績と2023年度予測の東阪名15社、ローカル別および上下期別の内訳を示した。2023年度のテレビ営業収入は、年初予測の0.2%増から改訂3.8%減へ下方修正した。タイム、スポットともに下方修正であるが、特にスポットに関しては、年初0.2%減から改訂5.4%減へと大幅な下方修正となった。東阪名は営業収入全体4.0%減、スポット6.0%減、タイム3.9%減。ローカル系列局は営業収入全体2.9%減、スポット3.9%減、タイム2.5%減。特に東阪名スポットのマイナス幅が大きい。

スポットは、昨年度も、全社で4.8%減、東阪名4.6%減、ローカル系列局5.5%減と低調となり、特に昨年度下期は全社で6.9%減、東阪名6.4%減、ローカル系列局8.3%減と落ち込んだ。2023年度上期もこの不調が継続する形で、東阪名8.8%減、ローカル系列局5.9%減とマイナス幅が大きい。下期に入ると、東阪名3.5%減、ローカル系列局2.0%減といずれもマイナス幅は上期の半分以下に縮小するものの、プラス転換には至らないと予測する。

タイムは、昨年度、全社で3.2%減、東阪名4.1%減、ローカル系列局1.5%減と減収となったが、2023年度も引き続き減収となる。特に、昨年度下期にサッカーのFIFAワールドカップや野球のWBCなどの大型スポーツイベントがあった反動もあり、上期から下期にかけてマイナス幅が拡大し、東阪名では下期のタイム5.0%減と予測している。

なお、独立局(全国で13局)については、テレビ営業収入全体で、年初予測0.5%増に対して、4.9%減と下方修正している。スポット6.1%減(1月予測0%)、タイム3.8%減(1月予測0.2%減)とスポット、タイムとも下方修正した。独立局についてもスポットのマイナス幅が大きい。

タイム・スポット以外の収入については、東阪名全体で1.0%減、ローカル系列局全体で1.5%増程度の水準を見込んでいるが、不確定な部分が大きく、状況によっては上振れの可能性も残されている。

図表1_r_2023年度TV営業収入予測.jpg

<図表1. 2023年度のテレビ営業収入予測>

図表2_r_TV営業収入22年実績と23年予測.jpg

<図表2. テレビ営業収入の2022年度実績と2023年度予測(改訂後)>

2023年度のラジオ営業収入改訂予測:
中短波、FMともに減収へ

図表3、4に中短波とFM別に1月予測と9月予測の対比を、図表5に2022年度の実績と2023年度の上・下期別予測を示した。2023年度のラジオ営業収入は、ラジオ全体で年初予測の1.9%増から2.6%減へ下方修正した。スポットは年初0.2%増から改訂6.0%減へ大幅な下方修正、タイムは年初1.2%増から改訂2.0%減に下方修正した。

中短波は、営業収入全体2.9%減(1月予測0.8%増)、スポット6.3%減(1.6%減)、タイム2.5%減(0.3%増)といずれも下方修正した。FMは、1月予測では、営業収入全体3.3%増、スポット1.7%増、タイム2.4%増といずれも増収を予測していたが、今回の改訂により、営業収入全体2.1%減、スポット5.8%減、タイム1.3%減と一転していずれも減収予測となった。

上・下期別に見ると、中短波、FMともに、上期の落ち込みが大きく、下期に入るとマイナス幅は縮小する。この傾向はスポット、タイムともに同じだが、マイナス幅はスポットの方が大きい。

タイム・スポット以外の収入については、中短波は全体として1.3%減、FMは全体として1.0%増を見込んでいるが、不確定な部分が大きく、状況によっては上振れの可能性も残されている。

図表3_r_2023年度中短波営業収入予測.jpg

<図表3. 2023年度の中短波営業収入予測>

図表4_r_2023年度FM営業収入予測.jpg

<図表4. 2023年度のFM営業収入予測>

図表5_r_ラジオ営業収入22年実績と23年予測.jpg

<図表5. ラジオ営業収入の2022年度実績と2023年度予測(改訂後)>

最新記事