放送日誌 2023年12月

編集広報部

放送界の動きを中心に、行政や海外の動向もあわせ、1カ月の動きを日誌形式で記録します。
*2023年12月分を掲載。


【民放連】
12.1 放送計画委員会と技術委員会、「テレビ中継局の共同利用に関する説明会」を開催。総務省、NHK、民放連で構成する「中継局共同利用推進協議会」に関する対応の一環で、3者からそれぞれ経緯説明や同協議会の概要などを情報共有した。

12.6 総務省の「デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会」の検討課題に関する意見を提出。「周波数移行・再編・共用の在り方」で既存無線システムへの十分な配慮を求めるとともに、「電波利用料制度の見直し」で基幹放送局の負担軽減と小規模中継局の共同利用型モデルやブロードバンド代替を電波利用料財源で支援・推進するよう要望した。

12.21 2023年度第7回理事会を開催。「人権に関する基本姿勢」の策定や「中継局共同利用推進協議会」の全国協議会に民放連が参加・協力することを承認。緊急対策委員会の下に「デジタル戦略特別部会」を設置することを了承した。

12.21 「人権に関する基本姿勢」を決定。大手芸能事務所の元代表による人権侵害行為に対して民放各社の意識が希薄だったことを踏まえ、会員社が人権尊重の重要性を再認識し、報道や事業活動を展開していくための指針とする、「人権の尊重」「人権侵害の防止」「メディアとしての社会的責任」――の3点を宣言。民放にかかわるすべての取引先にも賛同を求めている。

―― 民放連研究所、「民放経営四季報」2023年冬号で2023-2030年度の地上波テレビとラジオの営業収入中期見通しを発表。テレビ放送事業収入は2025年度以降2030年度まで1.0%未満の微減程度の水準で推移すると予測。ラジオは2025年度以降2030年度まで-0.6~-1.1%の水準で推移すると予測。


【放送・マスメディア】
12.1 NHK、BS放送再編の一環で「NHK BS」(BS101ch)と「NHK BSプレミアム4K」(4K101ch)の両チャンネルをスタートさせた。これまでBSプレミアムを放送していた103チャンネルは2024年3月31日まで「番組の移設や停波時期を説明・周知するチャンネル」として活用し、同年4月以降停波する。

12.4 BPO(放送倫理・番組向上機構)、「芸能事務所における性加害問題について」理事長見解を公表。特定の芸能事務所にとどまらず、メディアや個人を含めた成熟した市民社会のあり方が問われているとし、放送局と議論する場を設けたいとしている。

12.5  BPO・放送倫理検証委員会、NHK『ニュースウオッチ9』が2023年5月15日に放送したコーナー「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常 それぞれの思い」で放送倫理違反があったとする見解を公表。取材の基礎やサポートが不十分でチェック機能も働かなかったとして「遺族の心情を大きく傷つける結果を招いた」と判断した。

12.5 日本新聞協会メディア開発委員会、総務省の「公共放送ワーキンググループ」第16回会合で、NHKの地上波ラジオ・BS・国際放送のネット配信を必須業務化することに反対する意見書を提出。

12.6 NHKの元ニュースキャスターで外交評論家の磯村尚徳氏が死去。94歳。1974年にスタートした『ニュースセンター9時』の初代キャスターとしてテレビニュースのスタイルを変えたといわれる。

12.12 第32回「FNSドキュメンタリー大賞」に長野放送『最期を生きて-「看取り」支える訪問診療-』が選ばれる。

12.18 日本海テレビの田口晃也代表取締役会長が辞任。元経営戦略局長が「24時間テレビ」の寄付金など約1,118万円を着服していた問題で引責。

12.19 NHK、報道局社会部に所属していた元記者が経費を不正に請求していた問題で、調査報告書を公表。不正請求は410件、約789万円に。元記者は11月に懲戒免職。当時の報道局長らは役員報酬を自主返納、歴代の社会部長らに懲戒処分。

12.22 群馬テレビ、取締役会で武井和夫代表取締役社長を解職。後任に中川伸一郎専務取締役兼報道局長が就任した。武井前社長の過度な人事異動や団体交渉への不誠実な対応で労働組合が県の労働委員会に救済を申し立てていた。

12.25 「中継局共同利用推進全国協議会」が発足、初会合を開く。民放連、NHK、総務省などで構成し、放送法・電波法の改正で可能となった地上波中継局の共同利用や放送ネットワークの効率化に向けて検討する。


【行政・海外】
<行政等>
12.5 総務省「公共放送ワーキンググループ」第16回会合を開く。民放連、日本新聞協会、J-WAVEからヒアリングを行い、NHKのラジオ放送、衛星放送、国際放送のネット配信などをめぐって議論。

12.12 総務省「日本放送協会のインターネット活用業務の競争評価に関する準備会合」第2回会合を開く。構成員からの「放送とネット配信でほとんど変わらない情報と効用だと考えてよいか」との質問にNHKは「放送と同一の情報内容に限る。ネット独自のコンテンツを作る考えはない」と明言。ただし、「補完情報」や「密接関連情報」の定義と範囲は精緻の議論を求める声も。

12.14 総務大臣に松本剛明氏が就任。鈴木淳司前大臣が自民党安倍派の政治資金パーティー収入の裏金化疑惑で辞任したことに伴うもの。

12.15 総務省、「複数地域の放送番組の同一化」「中継局設備の共同利用等」などを盛り込んだ放送法施行規則等の一部を改正する省令案等に関する意見募集を開始(~2024年1月18日まで)。

12.21 総務省「衛星放送ワーキンググループ」第2回会合を開く。衛星放送協会、NHK、放送サービス高度化推進協会〔A-PAB〕などからヒアリング。

12.26 総務省「公共放送ワーキンググループ」第17回会合を開く。NHKのガバナンスに関する制度の現状と論点についてNHKからヒアリング。

<海外>
12.1 米ディズニー、コムキャストが保有するHulu株を86億1,000万ドル(約1兆2,900億円)で買収、単独株主に。金額はHulu株の評価プロセスを経て確定する。(12.6 ディズニーは米国内のDisney+とHuluのバンドル契約者向けに合体版アプリの提供を開始)

12.1 米パラマウントグローバル社の配信サービス「Paramount+」が日本でスタート。WOWOWの加入者限定無料配信「WOWOWオンデマンド」、J:COMのVODサービス「J:COM STREAM」を通じて提供。

12.19 カナダでオンラインニュース法が施行。報道機関を保護するためニュース記事の使用に対する公正な対価の支払いをIT企業に義務付けるもの。Google社は同国の報道機関に年間約110億円を支払うことで合意している。

12.― 米Netflix、視聴データを公開。2023年1-6月のコンテンツごとの視聴時間に加え、公開日や配信されている国などで1万8,000タイトル以上、視聴時間にして1,000億時間以上のほぼすべてをカバー。脚本家組合〔WGA〕と映画俳優組合〔SAG-AFTRA〕のストライキでデータの閉鎖性が批判されたことも背景にあるとみられる。

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