「沖縄のみなさん、おめでとーう」
2022―2023シーズン、初めてBリーグの頂点に立った琉球ゴールデンキングス。沖縄バスケの歴史をたどる60分番組は、チームを率いた桶谷大ヘッドコーチ の歓喜の声から始まります。バスケットボール文化が根付く沖縄では、熱狂的な琉球ゴールデンキングスファンも数多く、念願の日本一の称号を手にした喜びに街中が沸きました。
奇しくも今年は、世界中のスーパースターが沖縄アリーナに集うワールドカップイヤー。そんな記念すべき年に沖縄のバスケットボールチームが全国の頂点に立ったのです。
琉球ゴールデンキングスが沖縄に誕生したのは2000年代に入ってからですが、キングスが沖縄に根付いた土壌には、長きにわたり築き上げられてきた沖縄バスケ独自の発展の過程がありました。
番組は、あえてキングスという球団に焦点を当てるのではなく、沖縄バスケの土壌が出来上がるまでの歴史をひもとく構成にしています。その過程にこそ、沖縄の人々の困難に立ちむかう強さや、さまざまな文化を取り入れながら「沖縄らしさ」に昇華させてきたチャンプルー精神が表れていると感じたからです。
沖縄バスケ発展の歴史は、沖縄が歩んだ歴史と共にあります。戦前に沖縄にも伝わったバスケットボールですが、激しい地上戦が行われた沖縄では、戦後、物資も何もかもが失われました。しかし、米軍の払い下げ品や廃材などを使用して住民が自らバスケットボールリングを手作りし、さらには基地内の米軍とのバスケットボールの親善交流試合を通して、沖縄バスケは本場アメリカのバスケを体感しながら独自に成長を遂げていきます。
沖縄バスケは、このようなアメリカとの交流試合などを通じて、体格の大きな選手に立ち向かっていく戦術を編み出したほか、三線・カチャーシーなど独自の文化を大切に育んできた沖縄ならではの感性が沖縄バスケに体現される「独特なリズム」を生み出しました。沖縄の人々は、決して恵まれてはいない環境に屈することなく、独自の文化への誇りを持ちながら、むしろアメリカ文化の影響を大きく受ける環境をうまく利用し、沖縄らしいバスケットボールスタイルを確立してきたのです。
この沖縄の人たちの強さ、しなやかさ、たくましさに心を動かされ、私が番組を制作する原動力になりました。
そして、スピードや独特な感性を生かした沖縄らしいバスケットボールスタイルは、見る者の心も動かし、大ヒット国民的漫画『スラムダンク』にも影響を与えました。番組では、『スラムダンク』と沖縄バスケのつながりについても関係者のインタビューを交えて紹介しています。映画『THE FIRST SLUM DUNK』の大ヒットにより、さらに今年は沖縄バスケに注目が集まったのではないでしょうか。
また、番組の冒頭に触れていますが、沖縄県立芸術大学の張本文昭教授の最近の研究では、今年は沖縄にバスケットボール競技がわたって100年の節目であることも判明。
映画のヒットに始まり
琉球ゴールデンキングス初のBリーグチャンピオン
沖縄で初のFIBAバスケットボールワールドカップ開催
沖縄アリーナで男子日本代表48年ぶりの自力での五輪切符獲得
すべてが沖縄バスケ100歳の年をお祝いしているように感じます。
きっと、このたびの賞も沖縄バスケ100年を祝っていただけた賞なのでしょう。
沖縄バスケに携わる皆さま、100歳、おめでとうございます。そして、取材にご協力いただいた皆さま、心からありがとうございました。