8月1日中央審査[参加/ラジオ第1種22社=45本、第2種21社=31本、テレビ10社=19本]
審査委員長=入山章栄(早稲田大学ビジネススクール教授)
審査員=佐藤舞葉 (コピーライター/CMプランナー)、田中淳一(クリエイティブディレクター)、
松野みどり(サイバーエージェント次世代生活研究所上席研究員)、森 綾(著述家)
民放連賞CM部門は、他の広告賞とは違い、審査委員長が審査方針を決めるということはありません。審査員一人ひとりが広告効果、倫理性、独創性などの観点から「自分が良いと思ったものに票を入れる」シンプルな投票です。
バックグラウンドの異なる審査員が集まっているので、きっと評価はバラバラに分かれるだろうと予想していましたが、結果として票は集中しました。広告なので、マーケティング的にはターゲットやペルソナを考えて発信していると思われるのですが、心揺さぶられる表現というものは、案外共通しているものかもしれないですね。
私自身がひとつ決めていたのは、「地方のCMにしてはがんばっている」という票の入れ方はしないこと。地方のCMは、少人数・少バジェット(予算)。企画の強さにごまかしがききません。だからこそ立ち現れる、むきだしの「個」の力があるはずと審査を楽しんでいました。受賞作には、そんな「個」の強い企画や想いがカタチになったものが多く存在しました。
ラジオCM第1種
(20秒以内)
最優秀=エフエム栃木/三和住宅/企業CM/居留守
フリの部分でミスリーディングを誘い、オチで裏切る。というのはラジオCMの定型だが、本作品の場合、最後のオチの切れ味はさることながら、フリの部分も面白く聴かせる構造になっているところが巧み。20秒というわずかな時間の中で、ここまで面白みを凝縮できるのはプロの仕事と評価が集まった。
優秀=文化放送/よみうりランド/企業CM/ジェットコースター 篇
「つまらない人と行っても面白い」というコピーが秀逸で、この遊園地の良さをうまく表現している。男性が聴くといたたまれない気持ちになるのではないかという意見も出るくらい、いい意味で心がザワつく仕上がりになっている。
優秀=エフエム東京/聖教新聞社/企業CM/ただいま
同じ「ただいま」というセリフであっても、子どもの言い方やトーンの違いで気持ちを感じとれる。この表現に発見も共感もある。音声メディアであるラジオの特性を生かしていた。
優秀=エフエム東京/日本ゼオン/企業CM/同窓会 篇
「同窓会に行けないほど忙しい」という若者に共感のある設定の"あるある"と、「今世紀中に」という意外性のある言葉の"ないない"のギャップが良い。企業の長期的視点を訴求できている点も評価された。
優秀=新潟放送/新潟県森林組合連合会/企業CM/いいきになってる
聴いた瞬間にオチが読めるが、それでもなお面白く聴ける稀有な作品。繰り返し聴いても飽きない味わい深さが評価された。クライアントそのものに新しさがあり、そこもCMとしての強さにつながっている。
優秀=朝日放送ラジオ/ニチレイフーズ/焼おにぎり10個入/恋の貸しカリ 篇
「カリカリ好きは一定数いる」という一文がCM全体の得点を大きく引き上げている。このコピー1本で強引に商品に着地させている感じがいい。
優秀=エフエム熊本/オオスキ現場市場/工業用品ネットショップ「現場市場」/急に欲しくなる?
扱っている商品そのもので笑いをとっているのがCMとして強い。言いたいことを全て言いながらも面白く仕上がっているのがすばらしい。
ラジオCM第2種
(21秒以上)
最優秀=朝日放送ラジオ/中央軒/企業CM/記者会軒 篇
シンプルに面白い。実際の記者会見を思わせる、一発録りのような手法やテンポのあるやりとりがよい。もう少し短尺でも良いとの意見もでたが、繰り返しのしつこさも含めて味になっていて、これはこれでアリと思わせる強さがある。
優秀=STVラジオ/公共キャンペーン・スポット/街の音は道しるべ 一人で歩くということ
音声メディアの特性を生かしたCM。目の不自由な方の体験を追体験することができる。ラジオにはこういう使い方、役割があったのだという発見があった。
優秀=ニッポン放送/自社媒体PRスポット/ニッポン放送0時時報_支出 篇
「ついていない日」「うまくいかなかった日」は誰にでもある。そんな1日の終わりに、こういうラジオが流れたら心をつかまれるだろう。ラジオの時報ならではのクリエイティブ。
優秀=J-WAVE/自社媒体PRスポット/こどもみらいプロジェクト「おしごと幼稚園」 篇
実際の子どもの「生の声」を使って構成しているところが良い。継続しているプロジェクトであるところも評価された。
優秀=朝日放送ラジオ/中央軒/長崎皿うどん/11種類 篇
11人を聴き分けてというアイデアが秀逸。集中して聴いてしまう。結果、中央軒という店名が印象に残り、広告としての効果が高い。ナレーションが普通だったので、もう少し工夫があればさらに高評価だった。
優秀=朝日放送ラジオ/ニチレイフーズ/ミニハンバーグ/他意のない子供の手紙 篇
自虐風をおりまぜている、今っぽい作品。できあいの物を子どもの食事に使ってもいいというストーリーラインやメッセージは、子育てをする親世代を安心させることができるのでは、と高評価だった。後半のラジオCMについての表現はやや内輪向けな印象があるという意見も出た。
優秀=エフエム愛媛/レクサス松山城北/企業CM/「助手席」 篇
昨今、仲のいい親子が増えている。父親が聴いても娘が聴いても、共感を得られるのではないか。特に娘のいる父親世代には響くCM。車で親子というシチュエーションにあまり目新しさはないが、くさみがなく品よくまとまっていた。
テレビCM
最優秀=CBCテレビ/公共キャンペーン・スポット/「人生100年時代を考える」~きぬさんは"看護師"一筋80年
主人公である池田きぬさんに圧倒的存在感があり、引き込まれた。番組にすれば良い内容でもあるが、逆にこの短尺でまとめた構成力は見事。映像ときぬさんの言葉がきちんとリンクしていた。老後はのんびりしたいという人もいる中で、「定年制に反対」という側面にのみ光をあてた点が気になるという意見もあったが、まだまだ定年制がマジョリティである社会の中で、訴求を絞ったのは良かったということで最優秀に選出された。
優秀=CBCテレビ/自社媒体PRスポット/残す、伝える。~CBCドキュメンタリー on YouTube~
「伝える」というテーマでマイノリティを捉えたCMは、短尺のものを繋げることでそのメッセージ性が弱まってしまう傾向にあるが、今作品においては自社の公共的役割を訴求しつつ、YouTubeの取り組みのPRに落としこんでいたところが他作品との差別化に繋がった。
優秀=CBCテレビ/名古屋大学×TARVO×名声会/喉頭摘出者の音声再生プロジェクト/声をとる。あなたのために。
「声をとる」というテーマが、放送事業としてこのプロジェクトをやる強さを感じた。ハンディキャップのある人に向けた新しい可能性を訴求しており、社会的意義のある取り組み。このプロジェクトの完成まで入っていればなお完成度が高かった。
優秀=東海テレビ放送/愛知県/優しいAI ~愛知県 持続可能な農業への現在地~
「AIと農業」というテーマが興味深い。未来志向的な内容に好感が持てる。CMとして分かりやすく商品を訴求していたが、映像自体は想像を超えてはこなかった。新しい発見があるとなお良かった。
優秀=東海テレビ放送/公共キャンペーン・スポット/かわるPTA
メディアで取りあげられ始めた題材にいち早く着目した点は良い。このCMが今後の議論や取材のきっかけになるとよいと思う。子どもをもつ親や教師など、PTAに関わりの深い大人の目線のみで語られていたので、子どもの目線や、PTAをあまり知らない人からの目線など、もっと多様な視点があるといいのではという意見が出た。テーマは良いだけに場面の選定に工夫があるとさらに高評価だった。
優秀=中京テレビ放送/豊川市/市制施行80周年PR/豊川市制80周年記念キャンペーン「豊川って豊かだ」
CM全体を通して豊川市を楽しく訴求できており、豊川市の良さがよく伝わる。最終的に豊川市が良いところという印象が残り、CMとしては大成功なのではないか。自治体としてはチャレンジングな取り組みで、その実行力も評価された。本作品の受賞を通じて、エモーショナルなものだけではなく、面白いもの、目立つものもきちんと評価されるのだということを伝えていきたい。
・各部門の審査結果はこちらから。