2023年民放連賞最優秀受賞のことば(ラジオ報道番組) 北日本放送 KNB報道スペシャル 統一教会と富山政界

数家 直樹
2023年民放連賞最優秀受賞のことば(ラジオ報道番組) 北日本放送 KNB報道スペシャル 統一教会と富山政界

旧統一教会と富山政界の関係を調べ始めたのは、安倍晋三元首相銃撃事件から1週間ほど後のことでした。過去の選挙取材の中で教団名を聞いたという記者がいたからでした。2020年の富山県知事選挙で、新人候補(のちに当選・現知事)が"ある集会"で演説することを知り、撮影取材を申し出たところ、陣営側が拒んできたことを覚えていました。当時の取材メモを頼りに"裏どり"を進めました。"ある集会"とは、教団に関連する集会だったのです。

メディアがまだ声をあげない中、私たちが定例会見で知事を質したところ、知事は関連団体との関わりを認めた上で、選挙協力も受けていたと話しました。さらに、当時の教団トップと富山市内の選挙事務所で面談していたことも明らかにしました。富山を二分した知事選は、自民党が分裂して現職と新人が激しく競い合う戦いでした。新人候補が救いの手を求めた教団側は、選挙協力をきっかけに県政界に一層深く食い込んでいった構図が見えてきました。

知事選の翌春に行われた富山市長選、翌夏の高岡市長選でも、教団関連団体は新人候補の選挙活動に関わっていました。初当選した市長2人は、いずれも教団の支援を受けていたことをメディアの追及で認め、さらに富山県選出の国会議員や県議会議員、富山市議会議員の中にも団体と関わりがある者がいました。その広がりと実態を調べるため、約100人の政治家に緊急アンケートを実施した結果、「関わりがある」と回答した全てが自民党関連でした。保守王国の富山とはいえ、教団の存在感がこれほど増していることに驚きを感じ、なぜ政治家に近づくのか、富山で何をしようとしているのか、目的の根源に近づきたいと思いました。

その答えを持っているキーパーソンを突き止めました。教団側と富山の政界を広く、深く、濃くつないできた人物です。統一教会の広報局長を務めた元幹部で、関連団体の富山県平和大使協議会の事務局長の役割を担い、富山県に住んでいました。教団の幹部だったことは、インタビューの語り口、表情、振る舞いからも感じられました。自分たちの考え、行動に揺るぎない信念、自信を持っていました。

静かに淡々と語ったことは、教団組織内の役割分担、選挙協力の内容と規模、一貫して自民党を応援してきた理由でした。さらに、LGBTや同性婚への反対、神による世界平和の実現、そして積極的に政治家への働きかけをする目的についても言及しました。自民党の保守的な考えと、教団の反共思想や家庭を大切にする考えに重なる点が多くあることがあらためて浮き彫りとなりました。

2022年7月から継続的に調査し、その都度報道してきました。この番組は、一連の事象を"点"として捉えて伝えるだけではなく、点と点を結ぶことで新たに見えてくるもの、輪郭がはっきりすると考えて制作しました。教団と自民党の関係の深さ、行政に及ぼした影響、その広がりを点検、追及するとともに、政治家のあり方と責任も問いました。こうした私たちの思いを評価していただいたことに感謝を申しあげます。


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