第50回放送文化基金賞贈呈式開く 黒柳徹子さん「志があれば、テレビはまだ大丈夫」

編集広報部
第50回放送文化基金賞贈呈式開く 黒柳徹子さん「志があれば、テレビはまだ大丈夫」

第50回放送文化基金賞の贈呈式が7月9日にオークラ東京で開かれた。既報の受賞関係者が一堂に会し、それぞれに喜びを語った。このうち、「民放online」は民放連会員社の喜びの声を中心に紹介する。

エンターテインメント部門は最優秀賞、優秀賞、奨励賞の4作品をすべて民放が独占。審査委員長の桐野夏生さんは講評で「地方発エンタメの可能性を示した」と称えた。

▶エンタメ部門は民放が独占
最優秀賞のCBCテレビ『歩道・車道バラエティ 道との遭遇』は全国各地の珍しい「道」を紹介するレギュラー番組。横山公典プロデューサーは「グルメも海外ロケもない、進行役も一般の方......それが逆に視聴者から愛されて3年目に入った。今後も番組ならではの"道"を追求していきたい」と喜びを語った(写真㊦/壇上の写真はいずれも放送文化基金の提供)

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エンターテインメント部門の優秀賞は読売テレビ放送の『るてんのんてる』。若手ディレクターたちが週替わりでそれぞれが発案した企画を放送する挑戦型のバラエティ枠で、理想の人生と現実の人生をフェイクドキュメンタリーの手法で対比した髙橋優佳里ディレクターの企画が受賞した。「好きなことに挑戦できるというと聞こえはいいですが、つくる側にはかなりのプレッシャー。一般の方に密着し、フェイクドキュメントのパートでは演技をしてもらわねばならず、人探しに3週間。出演いただいたお二人に感謝します」と高橋さん。

同部門の奨励賞は熊本放送の『ななまるテレビ「今日、解決はしないけど。―熊本で生きるわたしたちのテレビ―」』と、琉球放送の『ラジオの神回テレビで語る』の2作。『ななまるテレビ』を企画・演出した熊本放送の松田望さんは「私を含めテレビは『わかった顔をして、わかった側に立って伝えてしまってはいないか』というのが企画の出発点。あえて答えを出さず、『テレビの向こうのみなさんも一緒に考えてください』と等身大であることを大切にした。実験的で手づくりの番組を評価いただき、手応えを感じている」とスピーチ(写真㊦)。松田さんはこの番組で個人に与えられる企画賞も受賞した(松田さんが同番組に込めた思いは「民放online」のこちらで詳しくお読みいだだけます)。

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琉球放送の『ラジオの神回テレビで語る』は、ラジオの面白さをテレビで再発見する新しい楽しみ方を提案した。飯島將太ディレクターは「ラテ兼営局のみなさん、このフォーマットはみなさんの局でもつくれます。ぜひ、一緒につくってみませんか? ラテ兼営局の新しい可能性が開けるかもしれません」と呼びかけた(飯島さんには「民放online」の「制作ノートから」に寄稿いただきました=9月6日追記)。

▶ラジオドラマで「特撮」?!
ラジオ部門は民放からRKB毎日放送の『空想労働シリーズ サラリーマン』が優秀賞、ニッポン放送の『星野源のオールナイトニッポン』が奨励賞に輝いた。『空想労働シリーズ サラリーマン』はラジオで特撮ドラマを実現するという、「無謀ともいえる挑戦心」(審査員評)に注目が集まった。企画・脚本・演出を担ったRKB毎日放送の冨土原圭希アナウンサーは「受賞のおかげで第2期の制作が決まりました。会社を動かしました。本当にありがとうございます」とあいさつ。主人公の「サラリーマン」も駆けつけ、場内を沸かせた(冨土原さんの喜びの声は「民放online」の「U30~新しい風に寄稿いただきました)。

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<RKB毎日放送の冨土原圭希さん㊨と「サラリーマン」(民放連編集広報部撮影)>

『星野源のオールナイトニッポン』は当初、収録済みの素材をオンエア予定だった1月2日の放送を、前日の能登半島地震を受けて急遽、生放送に切り替え、「いつもどおり」の放送で被災地のリスナーに安らぎを与えた。林佑介プロデューサーは星野源さんの発意に謝意を示すとともに、「不安な心を持っているリスナーの方や気持ちが落ちている方々にも寄り添って、笑顔になってもらえるような番組をこれからも」と語った。

▶PFAS問題に迫ったドキュメンタリー、"境界線"に挑むドラマ
ドキュメンタリー部門は沖縄テレビ放送の『OTV報道スペシャル 続・水どぅ宝~PFAS 汚染と闘う!Fight For Life~』が奨励賞に。人体への影響が指摘されるPFASの水質汚染に早くから着目し、子どもを育てる母親の立場から切り込んだ。平良いずみディレクターは「PFASは全国で汚染の実態が次々と明るみに出ており、多くの親御さんたちがお子さんの命を思い、胸を痛められているはず。沖縄の市民の姿が希望になると信じて伝え続けていきたい」と力強く語った。

ドラマ部門は優秀賞にテレビ東京の『初恋、ざらり』、奨励賞にTBSテレビ・TBSスパークルの『金曜ドラマ 不適切にもほどがある!』が民放から受賞。軽度知的障害を持つ女性を主人公にした『初恋、ざらり』の北川俊樹プロデューサーは「障害者でも健常者でもない境界線にいる人たち。うそもつけば、たばこを吸う、恋愛もする。そうした人たちをタブー視することで、ないものにしたくなかった」と振り返った。『不適切にもほどがある!』の磯山晶プロデューサーは「適切と不適切の境界線がますます厳しくなり、日々アップデートを強いられる。これからもいいテレビドラマを皆さまに届けたい」と抱負を語った。同番組に主演した阿部サダヲさんが演技賞を受賞し、喜びの声をビデオメッセージで寄せた。

▶放送文化、放送技術でも民放が健闘
このほか、放送文化部門で民放からは「30年にわたる手話を通した「情報バリアフリー」を目指す取組み」の岡山放送・情報アクセシビリティ推進部、「ラジオ講座によるアイヌ語の理解と継承」でSTVラジオの『アイヌ語ラジオ講座』制作チーム、「10年にわたり番組を通じて地域の農業・農家を盛り上げてきた実績」でRSK山陽放送の『笑味ちゃん天気予報』制作スタッフの3組が受賞。岡山放送からは中静敬一郎社長が手話を交えて謝意を述べたほか、STVラジオのパーソナリティ・渋谷もなみさんがアイヌ語を駆使しながら番組への思いを語った。RSK山陽放送は髙畑誠報道部長は「日本の農業はまだ元気です!」と番組を支えてきた農家にエールを贈った。

放送技術部門の民放関係は「ボリュメトリックビデオを用いたプロ野球中継」でプロ野球中継高度化検討チーム(日本テレビ放送網、キヤノン、読売新聞東京本社)と、「照明業務支援システムの開発」で照明業務支援システム開発チーム(朝日放送テレビ、パナソニック、森平舞台機構)の2組が受賞。日本テレビの篠田貴之さんは、わずか2台のカメラで始まった民放のプロ野球中継が、いまや100台のカメラで無限に近い視点を獲得できるようになったことを振り返り、スポーツ中継の未来に思いをはせた。朝日放送テレビの瀧本貴士さんは「かつて照明の仕事は屈強な男性でなければ活躍できなかった。しかし現在、照明業界に入る3分の2が女性。女性たちも活躍できるようなシステムでないと今後の発展はない。そんな思いで取り組んだ開発が実現した」と喜んだ。

▶黒柳徹子さんらに50周年記念賞
また、放送文化基金の設立50周年を記念した賞として、▷黒柳徹子さん(女優・ユニセフ親善大使)▷相田洋さん(ドキュメンタリスト)▷重延浩さん(テレビマンユニオン会長・ゼネラルディレクター)▷NHK連続テレビ小説制作班▷「かぐや」搭載ハイビジョンカメラ開発グループ及び番組制作グループ――に贈られた。それぞれが登壇し、喜びとともに放送への熱い思いを語った。

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<黒柳徹子さんを囲む50周年記念賞の関係者>

大トリで登壇したのが黒柳徹子さん。1953年2月1日のNHKテレビ放送開始からテレビ出演を続け、現在も『徹子の部屋』(テレビ朝日)が49年目を迎えた。「テレビを通じて平和な世の中になるのならと思って続けてきた」と振り返り、「志のある人たちが本当に面白いものをつくろうと思っていれば、まだまだテレビは大丈夫」と制作者にエールと送った。そして、「私も100歳まで続けます!」と話し、満場の拍手喝采を浴びた。

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