2025年の春、放送業界に新たに仲間入りする新放送人に向けて、経営者や先輩たちからのメッセージなどを連続企画でお届けします。2回目は、エフエム福岡の愛智望美アナウンサーに新放送人への期待やアドバイスをご自身の経験を踏まえて寄稿いただきました。(編集広報部)
ラジオ業界に足を踏み入れてくれた皆さん、ようこそ‼ 今あなたはきっと「ラジオが好き」「ラジオって楽しい」という気持ちを胸に、これから始まる生活に期待を膨らませていることだと思います。初めにお伝えしたいのは、その気持ちの種をずっと持ち続けていれば、あなたの未来は必ず明るく切り拓かれるということです。
「ひとりで、みんなといる」
私がラジオを好きになったのは、エフエム福岡(FM FUKUOKA)のヘビーリスナーだった両親の影響でした。幼い頃から日常にラジオがあったなか、学生の頃に友達に面白いラジオ番組があると教えてもらったのが『SCHOOL OF LOCK!』(以下SOL¹ )。そこからの学生時代はSOLとともにありました。一番よく聴いていたのは、とーやま校長(グランジの遠山大輔さん)の時代。毎日同じ時間にラジオをつけると、そこにはもう一つの学校があって、校長や教頭がいて、全国のリスナー=生徒が集まってくる。かっこいい音楽がたくさん流れてきて、素敵なアーティストと出会える。そして、「ひとりで、みんなといる」という心地よさ。全てにおいて私の好きな「ラジオ」を体現してくれていました。
特に、とーやま校長の喋りが本当に大好きで、電話がつながった生徒と話すときも、ゲストのアーティストに愛を伝える時も、ふざけたり熱く語ったり、とーやま校長の素敵な人柄が100%表れる言葉と喋りに何度も心を打たれ、笑わせられ、救われました。音と声だけで人を惹きつける「ラジオ」というエンターテインメントの魅力にどんどんのめり込んでいくなか、元々アナウンサーの夢を持っていた私は、「ラジオに携わる仕事に就きたい」「ラジオで喋る人になりたい」と思うようになりました。
その後大学を卒業し、ご縁があってFM FUKUOKAに就職。編成制作事業部という、番組制作やイベント運営を行う部署に配属され、この春で9年目を迎えます。
<マラソンイベントでリスナーと交流(最前列左端が筆者)>
常に夢を持ち続ける
この仕事は、常に夢を持ち続けられ、それをかなえるチャンスがあると思っています。しかし、そのために乗り越えなければならないこともたくさんあります。
私が初めて生放送を担当した入社3年目。一人喋りでの生放送は、初めのうちは全然うまくいきませんでした。例えば、「今日は○○に行ってきます」というメールに対するリアクション一つとっても、「いいですね!」の先が出てこない......。ラジオの醍醐味である「リスナーさんとのコミュニケーション」が全く取れなかったんです。またある時は、小雨が降るなかサテライトスタジオの窓ガラスの向こうでジョギングをしている方がいて、「雨の中大変そうですね。カッパを着たらいいのに......」とつい口にしてしまい、「カッパを着て走れるわけがないでしょう。世間知らずにもほどがある。もう聴きません」というメールが送られてきたこともありました。毎週毎週、時には放送時間より長く反省会を行い、悔しくて涙したことも何度もありました。それでも、指摘されないと成長はない、今の頑張りは必ず自分の糧になると信じて、がむしゃらにトライ&エラーを続け、一つ一つの課題と逃げずに向き合い続けました。
その年が明けた1月のこと。当時SOLの"退任"が決まっていた、とーやま校長が全国のリスナーにお礼行脚をするということで、福岡にもお越しになることに。その時、私が担当していた『Weekend more radio ! 〜7サタ(ナナサタ)〜』にゲスト出演してくださったんです! 自分がこの仕事をするきっかけになった、人生を変えてくれた方を自分の番組に招いて一緒に喋るなんて、夢にも思っていませんでした。番組の最後に「"未来の鍵を握るRADIO"SOLのおかげで、とーやま校長のおかげで今この場所にいます」とお礼を伝えたら、とーやまさんは「一緒に探しただけで、自分で摑んだのは愛智さんですよ」と言ってくださり、目頭が熱くなりました。その時の放送は今でも鮮明に覚えていて、一生忘れられません。決して自分の力だけで摑んだものではないけれど、ひたむきに、貪欲に目の前のことに向き合い続ければ、その先で夢がかなう瞬間が訪れるかもしれない、ということを強く実感しました。その後もとーやまさんとは番組やイベントで何度かご一緒して、今ではありがたいことにお仕事の相談も聞いていただくほど、私にとってずっとずっと"校長"で、一生の恩師です。
学生がラジオを聴くきっかけに
私の働く原動力は「ラジオへの恩返しがしたい」という気持ちにあります。ラジオはリスナーさんとの距離が本当に近く、その日に起きた何気ない出来事や喜怒哀楽を共有できるところも大きな魅力です。ラジオが私の生活を彩ってくれたように、私も誰かの生活をほんの少し明るくできるかもしれない。ラジオが私の未来を切り拓いてくれたように、私も誰かの人生に少しだけ影響を与えられるかもしれない。私がラジオからもらったものを、今度は私がラジオに返す番なのです。
2023年には、中高生をターゲットにした番組『ナカニワスタジオ』(現在の放送日時は水、20:30 ~ 21:55)を立ち上げました。県内の中学校や高校に実際に足を運んで、学生が今頑張っていること、目標にしていること、学校生活のなかで感じていることなどを、マイクをとおして話してもらっています。この春3年目を迎える番組ですが、ありがたいことに「うちの学校に来てください!」と言っていただけることも増えました。
昨年末は、通勤中のラジオでこの番組を知ってくださったという福岡県立中間高校吹奏楽部の顧問の先生から取材のご依頼をいただき、部活動の時間にお邪魔しました。ちょうど放送日がクリスマスだったので、クリスマスソングを演奏してくれませんか? とオファーしたところ、快く引き受けてくださいました。皆さんが一生懸命練習して披露してくれた「ジングルベル」の演奏は、若いパワーに溢れて生き生きとしていて、胸がじんわりと熱くなりました。学生生活をさまざまな形で目一杯謳歌している皆さんのエネルギーを、ラジオをとおして多くの人に届け、心を動かせるような番組づくりを目指しています。
<中間高校吹奏楽部の皆さんと>
この番組のもう一つの大きな目的は、学生がラジオを聴くきっかけづくりをすることです。ラジオを聴く人は年々減っているのが現状です。ラジオの聴き方を知らない若者も多いです。でも私は、ラジオにしかできないこと、ラジオでしかできないコミュニケーション、ラジオからしか得られないものがたくさんあると思っています。その魅力を知ってリスナーになってくれたり、ラジオ業界に興味を持ってくれたりする若者が少しでも増えてくれるように、『ナカニワスタジオ』をとおしてラジオへの恩返しをかなえていきたいと考えています。
先ほどもお伝えしたように、仕事は楽しいことだけでは成り立ちません。日々の業務に追われるうちに目標を見失うこともしばしばありますし、やりたいことをやるためには、やりたくないこともやらないといけません。それは放送業界に限らず言えることです。そんななかで自分を動かしてくれるのは、やはり「ラジオが好き」「ラジオって楽しい」という気持ちです。今、その気持ちを胸に社会人生活のスタートラインに立っている皆さんには、どうかその思いの種を大切に持ち続けてほしいのです。
「楽しい」を形に
ラジオ業界・放送業界で働く一番の魅力は、「楽しい」を形にできるところだと思います。現在担当しているアニメ情報番組『あにぺろ』(火、20:30~21:55)ではアニメ・漫画・声優・アニソンを幅広くご紹介しています。好きなものの話をするってシンプルに楽しいですよね。このアニメが面白い! このキャラのこのセリフがいい! そんな話を、ラジオをとおして届けると、共感してくれる人からメッセージが届いたり、番組をきっかけに作品に出会ってくれる人がいたりする。「楽しい」ことを、番組という形にし、多くのリスナーに届け、心を動かすことができる。これほどわくわくする仕事はありません。その「楽しい」の種をまき、いかに育て、芽吹かせ、花を咲かせられるか――。それが、放送業界で働くうえで最も大切ことだと考えます。
この春社会人9年目を迎える私は、徐々に会社に後輩も増え、喋り手としてアドバイスを求められることも増えました。自分では正直、まだまだ一人前の喋り手には程遠いと感じています。それでもこうして、皆さんのような新しい仲間がまたたくさん増えると思うと、心からうれしく、気が引き締まる思いです。私はこれからも「楽しい」を、喋りをとおして形にして、やりたいことを貪欲にかなえ、ラジオへ恩返しをしていきます。
皆さん、ラジオでたくさんの「楽しい」を、一緒に咲かせましょう! いつかどこかで一緒にお仕事ができるといいですね!
¹ 『SCHOOL OF LOCK!』 エフエム東京(TOKYO FM)をキーステーションに全国のJFN系列38局で放送中(月~木、22:00~23:55/金、22:00~22:55)。"未来の鍵を握るラジオの中の学校"をコンセプトに、放送開始から今年で20周年を迎える、学生に人気の番組。