放送日誌 2025年1月

編集広報部

放送界の動きを中心に、行政や海外の動向もあわせ、1カ月の動きを日誌形式で記録します。
*2025年1月分を掲載。


【民放連】
1.17 2024年度第3回臨時総会で福田博之・日本テレビ放送網社長を理事に選任。あわせて遠藤龍之介会長が福田理事に知財委員長を委嘱した。

1.17 総務省の「電波利用料の見直しに係る料額算定の具体化方針案」に対する意見を提出。▶電波利用料の総額を抑制し、免許人の負担を軽減すべきだ▶BB(ブロードバンド)代替等支援事業を電波利用共益事務に追加することは妥当▶FPUの電波利用料の負担軽減をあらためて要望する▶激変緩和措置を含め、料額算定の基本的な枠組みを維持したことは妥当――などの内容。

1.22 「違法アップロードコンテンツと広告に関する実態調査」の結果概要を発表。大手広告主の広告が違法アップロードコンテンツに頻出している実態やYouTubeの違法アップロードコンテンツ(違法コンテンツ)によって多額の広告費が流出している可能性が明らかになった。本調査は2024年11月26日から12月25日に実施し、インターネット上のプラットフォームサービスなどに「民放コンテンツの違法アップロードの実態」と「違法アップロードコンテンツへの広告掲出の実態」を明らかにするためYouTubeとFacebook、TikTok、Xに加えて一般的なウェブサイトを対象に調査した。調査結果から違法コンテンツとともに表示されていた広告主の総数は約460社、このうち日本アドバタイザーズ協会〔JAA〕会員である「大手広告主」は84社だった。なお、同会員以外の大企業や地方公共団体の広告も多数含まれていた。YouTube上では190社の広告が違法コンテンツとともに表示され、このうち「大手広告主」は52社。Facebook、TikTok、Xでも同様の事例が多数確認された。

1.22 民放連の本橋春紀常務理事事務局長、総務省「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」の下部組織「デジタル広告ワーキンググループ(WG)」の第5回会合で行われたヒアリングに出席。民放連が同日公表した「違法アップロードコンテンツと広告に関する実態調査」の結果概要を踏まえ、民放の考え方を説明した。調査結果から、「限られた期間と範囲での調査であり、通年で調査した場合にはより多くの広告主の広告が表示されていると推定される。今回の結果は氷山の一角と考えている」と指摘。また、▶民間放送は広告主から受け取った広告費を制作にかかわる多くの関係者に還元することを通じて制作環境を維持している▶得られた経営資源により取材や編集にコストのかかる報道活動を維持している――といった民放のビジネスモデルを説明したうえで、「広告主が支払った広告費が、違法行為を行う者とプラットフォーム(PF)事業者に流れ込んでいる。違法アップロードが野放しになると、国民の知る権利に応える報道が困難になりかねない」と訴えた。

1.23 緊急対策委員会、フジテレビの出演タレントと女性に関する一連の事案への対応が批判を受け、民放全体への不信を招きかねない深刻な事態となっていることから対応を検討。民放連が2023年12月に策定した「人権に関する基本姿勢」および各社が定めた人権方針などを踏まえ、各社が自主的・自律的に対応していくことを確認した。

1.23 2024年度第8回理事会を開催。▶福田博之理事(日本テレビ放送網社長)を副会長に選定▶2025年度民放連事業計画案ならびに予算案▶FM放送用周波数の拡充に関する制度整備案の意見募集への対応▶第73回民間放送全国大会の開催概要▶「プロバイダ責任制限法」施行規則の一部を改正する省令案等に対する民放連意見――などを承認。このほか、人権に関する基本姿勢を踏まえた民放連の対応などを了承。

1.23 遠藤龍之介会長が定例記者会見。「フジテレビに関しては局の在り方自体が問われ、視聴者、広告主など各方面から厳しく批判されている。民放全体への不信を招いている事態と認識している」「民放連は本日の理事会で、2023年12月に策定した『人権に関する基本姿勢』および各社が定めた人権方針などを踏まえて、各社が自主的・自律的に対応することを再確認した」「共通の課題が見つかれば、民放連として検討する」「フジテレビが速やかに第三者委員会に調査を依頼して事実関係を明らかにし、その委員会が行った報告や提言を受け止めて、信頼回復のための取り組みを進めることを期待している。フジテレビの迅速な対応を求めたい」――と述べた。

1.23 総務省の「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律施行規則の一部を改正する省令案等」に対する意見を提出。ガイドラインの適切な解釈――などを求めた。

1.27 会員各社に対して、社内の人権尊重の体制や取り組みなどを自主的・自律的に確認・点検するよう文書で協力を要請。同23日に開催した緊急対策委員会の審議結果を踏まえ、フジテレビの出演タレントと女性に関する一連の事案への対応。

1.29 民放連研究所、「2025年度のテレビ、ラジオ営業収入見通し」を発表。地上波テレビ全社の2025年度営業収入は1.0%増と予測。地上波ラジオ全社の営業収入は0.6%増を見込む。

1.29 民放連研究所、「能登半島地震時のメディアの役割に関する総合調査」報告書を発行。(Ⅰ)能登半島地震時の被災地におけるメディア利用行動と評価に関する調査結果、(Ⅱ)石川県の放送事業者に対するヒアリング調査結果、 (Ⅲ)資料編の三部構成。 (Ⅰ)では、被災地における▶地震・津波からの避難行動▶各種メディアやコミュニケーション手段の利用行動や評価▶ジャンル別の情報へのニーズ▶発災後に出回ったデマ・フェイク情報とメディアの関係等について大津波警報が発令された能登地域13自治体のネットユーザー調査結果を分析した。(Ⅱ)では、能登地域を放送エリアに含む7放送事業者(県域民放5事業者、コミュニティ放送事業者、ケーブルテレビ事業者)を対象に▶同地震に伴う被災状況▶地震発生および震災直後の放送体制や報道内容▶同震災による放送等で得られた知見や放送の役割▶顕在化した課題等について、ヒアリング調査結果をとりまとめた。


【放送・マスメディア】
1.1 日本テレビホールディングスと日本テレビ放送網の代表取締役社長執行役員に福田博之氏が就任。

1.1 大阪放送、正式社名を「株式会社ラジオ大阪」に変更。長年親しまれてきたコミュニケーションネーム「OBC」は変わらない。

1.5 第82回ゴールデングローブ賞の授賞式で『SHOGUN 将軍』がノミネートされた4つすべてを受賞。同作はドラマ部門で作品賞に輝いたほか、主演男優賞に真田広之さん、主演女優賞にアンナ・サワイさん、助演男優賞に浅野忠信さんがそれぞれ選ばれた。

1.8 NHK、2025年度収支予算と事業計画を発表。事業収入は前年度比0.2%増の6,034億円、事業支出は同2.4%減の6,434億円。事業収支差金は400億円のマイナスで3年連続の赤字予算となり、還元目的積立金で補てんする。▶NHKは同日経営計画(2024-2026年度)の修正を発表。①放送番組の同時配信、②放送番組の見逃し・聴き逃し配信、③番組関連情報――の3つを必須業務として配信するとし、テレビを設置せずにインターネット配信のみを利用する場合の受信料は地上契約(月額税込み1,100円)として扱う。すでにNHKと契約を結んでいる場合は追加負担なく、インターネット配信を利用できる。▶2024年8月にNHKラジオ国際放送等で国際番組基準に抵触する事案が起きたことを受けて「情報空間全体の多元性確保への貢献として放送ネットワーク維持に積極的に対応していく」ほか、「2026年3月末に停波するNHKラジオ第2の教育番組はNHK-FMで原則放送する」――などを追加。

1.10 ジャパネットブロードキャスティング、新チャンネル「BS10」と「BS10スターチャンネル」をスタート。「BSJapanext」のチャンネルポジションと名称変更した。

1.17 BPO・放送倫理検証委員会、テレビ東京が2023年3月28日に放送した『激録・警察密着24時!!』に放送倫理違反があったとの意見書を通知・公表。同番組で不正競争防止法違反の疑いで逮捕された事業者が不起訴になっていたことに言及せずに犯罪者と決めつけたなどとした。こうした問題が生じた原因を指摘するとともに「チェックよりもバックアップ」と再発防止策が制作現場の負担にならないよう求め、各局の警察密着番組すべてについて、警察のPRに偏ることなく密着するためのスキルや見識、これまで以上のバックアップ体制の重要性を訴えた。

1.17 フジテレビが定例社長会見を開催。2024年12月中旬以降、番組出演タレントの中居正広氏の女性とのトラブルに関連した一連の報道を受け、第三者の弁護士を中心とする調査委員会の設置を表明した。この会見以降、▶調査委員会の独立性を求める声や会見当日の参加メディアの限定、動画撮影を認めないなど――同局の閉鎖的な対応に非難する声が高まった。また日を追うごとに、▶大手企業を含む幅広い業種の広告主が自社CM出稿を差し止める動きが広がり、同局の大半のテレビCMがACジャパンに差し替わる事態となり、同系列局にもこれが波及した。

1.23 タレントの中居正広氏が自身のファンクラブサイトで芸能活動の引退を発表。

1.23 フジ・メディア・ホールディングス〔FMH〕とフジテレビ、日本弁護士連合会〔日弁連〕のガイドラインに準拠する第三者委員会の設置を発表。2024年12月中旬以降の一連の報道を受けて、事実関係およびフジテレビの事後対応やグループガバナンスの有効性などを調査・検証する。

1.23 日本新聞協会、政府のAI戦略会議「AI制度研究会」の中間とりまとめに対する意見を内閣府に提出。報道コンテンツを無断利用する国外事業者に現行法の法令やガイドラインで対応することは困難だと指摘し、生成AI時代に即した新たな法整備を訴えた。

1.27 フジ・メディア・ホールディングス〔FMH〕とフジテレビが臨時取締役会を開催。「ガバナンスの立て直しと信頼回復に向けた緊急の対応に関する提言」を公表。その後オープンな形式で記者会見を開き191媒体437人が参加、テレビカメラや10分遅れのインターネット配信も認められた。▶FMH会長・フジテレビ会長の嘉納修治氏とFMH取締役・フジテレビ社長の港浩一氏の両氏が同日付でそれぞれ退任、FMH専務の清水賢治氏が28日付でフジテレビ社長に就任すると発表した。10時間を超える異例の会見となった。フジテレビは通常編成を変更し、この会見をすべてCM抜きで放送した。

1.28 フジテレビジョンの代表取締役社長に清水賢治氏が就任。港浩一氏は1月27日付で退任した。

1.28 『週刊文春』が文春オンラインの電子版記事の冒頭でおわびと訂正。2024年12月26日発売の2025年1月2日・9日号の記事で中居正広氏と女性との会食について、「女性はフジテレビの幹部社員に誘われた」などとして報じたが、「女性は中居氏に誘われた」ことがその後の取材でわかったという。

1.28 朝日放送テレビが清水厚志取締役の辞任を臨時取締役会で了承。2024年度に約116万円の交際費を不適切に使用していたとの申し出によるもの。

1.30 フジテレビとフジ・メディア・ホールディングスがそれぞれ臨時取締役会を開催。フジテレビの清水賢治社長は、「第三者委員会からの調査に協力した役員と社員の保護」「新たな経営刷新に向けた委員会を設置」を記者会見で公表。


【行政・海外】
<行政等>
1.23 総務省、フジテレビに対し第三者委員会において早期に調査を進め、その結果を踏まえ、適切に判断・対応していただきたい旨を情報流通行政局長から口頭で要請(行政指導)。

1.27 衆議院本会議の代表質問で亀井亜紀子議員(立憲民主党)が元タレントの中居正広氏と女性とのトラブルの週刊誌報道をめぐる問題に対し、「これは女性の人権問題であり、企業統治の問題」とし、放送業界全体でこうした人権に関わる問題が起きてこなかったのかを把握し、問題があれば放送業を所管する総務省を通じて改善させる必要があるのではないかとただした。石破茂総理大臣は、「人権に関わる問題の把握については、日本民間放送連盟において(民放事業者に)共通の課題がみつかれば、委員会の設置などを検討することなどが確認された」とし、注視するとの見解を示した。

1.30 政府、フジテレビの一連の対応をめぐる現下の状況を鑑みて同29日時点で同局がかかわる広告4件(内閣府の政府広報は2件、厚生労働省と国税庁が各1件)をすべてを取りやめたと発表。林芳正官房長官が記者会見で広告出稿などを当面見合わせる方針も併せて表明した。

<海外>
1.7 米Meta社が過度な検閲を避け、"自由な表現"を尊重するために国内でのFacebook、Instagram、Threadsのファクトチェック機能を廃止すると発表。これまでMetaのプラットフォーム上の投稿をファクトチェックしていた企業団体International Fact-Checking Network所属の複数企業との契約を更新せず、Xに準じたユーザー主導の「コミュニティノート」モデルに置き換えるという。

1.20 第47代米大統領にドナルド・トランプ氏が就任し、第2次政権を発足。同日の就任演説で自由な米国を取り戻す――ことを宣言。優先政策分野における優先事項の通信・放送分野ではSNS上の言論の自由を侵害する行為やAIリスクに連邦政府が関与することを禁止する――などの大統領令を発令した。

1.29 米連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員長が非営利団体の公共ラジオNPR(National Public Radio)と公共放送PBS(Public Broadcasting Service)に対し、連邦法で禁じている営利団体のCMを放送したとして同法違反の疑いがあると主張。

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