放送界の動きを中心に、行政や海外の動向もあわせ、1カ月の動きを日誌形式で記録します。
*2025年5月分を掲載。
【民放連】
5.2 「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス(案)」に対する意見を総務省に提出。▶デジタル広告市場の課題はデジタル空間のみの課題にとどまらない旨の明記▶広告主が年次報告書や自社のホームページで公表することが望ましい取り組みの例示▶広告主が望ましくないと判断した媒体を配信先から除外できる機能の充実が広告仲介プラットフォーム事業者に求められる旨の明記――などを指摘した。
5.14 2025年春改編の「青少年に見てもらいたい番組」を公表。総数992番組(140社)を選定した。
5.16 会員社におけるフジテレビ同様事案の有無についての自主調査結果(第1次集約分)を公表。5月9日までに民放連に報告があった117社分をまとめた。フジテレビ同様事案(番組出演者や出演者の関係者との会合において、「性暴力」による重大な人権侵害を起こした事案)はなかった。
5.19 民放連とNHK、8回目となる「視聴覚障害者等向け放送に関する意見交換会」を都内で開く。放送局側は大型生番組への生字幕の付与やAIによる字幕生成導入に向けた検証など字幕放送・手話放送・解説放送の取り組みの最新動向を紹介。障害者団体からはユニバーサルサービス放送の拡充に謝意が示される一方、字幕の規格の共有や統一などへの期待が述べられた。
5.22 2025年度第1回臨時総会を開催。早河洋氏(テレビ朝日会長)と、長谷川洋氏(テレビ朝日経営戦略局渉外担当局長)を理事に選任。
5.22 2025年度第1回理事会を開催。▶早河理事(テレビ朝日会長)を会長に選定▶長谷川理事(テレビ朝日経営戦略局渉外担当局長)を常務理事に選定▶代表理事の職務代行者の選定▶2024年度民放連事業報告および決算▶定時総会の開催▶人権尊重・コンプライアンスに関する理事会決議とこれらへの対応――などを承認。
5.22 「人権尊重・コンプライアンスの徹底に関する理事会決議」「民放連・緊急人権アクション」を公表 。理事会決議はフジテレビの人権侵害事案により、「民間放送全体に対する視聴者・リスナーやステークホルダーの深刻な不信を招いている」としたうえで、「放送法にもとづく放送の自律の精神を踏まえて、真に人権が尊重される社会の実現に向けて、努力を重ねていくことを誓う」としている。信頼回復の具体策となる「民放連・緊急人権アクション」は、▶「人権尊重・コンプライアンス等特別委員会」(委員長=早河会長)の設置▶「ジェンダー平等推進プロジェクト(仮称)」の設置▶民放各社のフジテレビ同様事案に関する自主調査および人権尊重・コンプライアンス徹底に関する取り組み状況調査の実施と公表▶「民間放送におけるビジネスと人権対応ガイドブック」の作成と会員全社での共有・活用▶民放業界全体としての人権救済メカニズムの検討▶経営トップを対象とした人権に関する講演会を実施――などに取り組み、今後1年の間に緊急かつ自主的に進める。
5.22 早河洋新会長が就任記者会見。民放連・緊急人権アクションなどについて「本日の理事会で民間放送への信頼を回復するために、人権を尊重し、コンプライアンスを徹底することを決議した。具体的取り組みとして、人権尊重・コンプライアンス等特別委員会を設置し、私自身が委員長として責任を果たすことになった。今後1年の間で民放連の全会員社が緊急対応していく覚悟を表明したものだ」と説明。「こうした閉塞的な状況を一日も早く正常化したい。それが民放全体のために私に課せられた仕事だと思っている」と決意を表明した。
5.29 早河洋会長、自民党「情報通信戦略調査会」会合に出席。今後の放送業界のあり方をテーマとする民放連へのヒアリングに対応した。2025年度第1回理事会で決定した、「人権尊重・コンプライアンスの徹底に関する理事会決議」と「民放連・緊急人権アクション」について説明。
5.― 放送基準審議会、「放送人基礎研修(民放連とNHK共催)」をオンライン形式で開催。2日間の同一プログラムで実施(5月16~17日、同23~24日)。民放とNHKから入社間もない若手社員を中心に第1回は154人、第2回は155人が参加した。民放連、NHK、BPOの担当者が放送の自主・自律、法規制と自主規制、公共性と人権――などの基礎的な講義を行ったほか、▶テレビ朝日から「ニュースの現場から考える報道の責任とルール」▶テレビ東京から「バラエティ番組とコンプライアンスの現状」をそれぞれ説明した。
【放送・マスメディア】
5.1 北海道の民放4局(北海道放送、札幌テレビ放送、北海道テレビ放送、北海道文化放送)とNHK、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震時等の航空取材の協業(北海道モデル)に関する覚書」を締結。北海道沿岸で大津波警報が発表された際にヘリコプターの運用を分担し、災害時の取材映像や音声を共有する。
5.14 関西テレビ放送、喜多隆元専務取締役の辞任(5月7日付)に関する週刊誌報道を受け、「このような事案について疑念を持たれる事態に至ったことについて、極めて重く受け止めており、人権尊重・コンプライアンス重視を徹底する」旨のコメントを発表。
5.22 日本新聞協会メディア開発委員会、NHKの放送受信規約の変更に対する意見をNHK経営委員会に提出。2025年10月から必須業務として始まるインターネットを通じた番組の配信などついて、未契約者でもサービスを利用できるフリーライドを防ぐ実効的な措置を求めた。
5.30 フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ、フジテレビで発生した人権・コンプライアンスに関する事案を受け、再発防止の強化策について信頼回復に必要な対応の進捗状況等を総務省に報告。
【行政・海外】
<行政等>
5.9 村上誠一郎総務大臣、フジテレビとフジ・メディア・ホールディングスの社長が4月30日に総務省に対して一連の問題をうけた再発防止策を報告した際に、新たに行政指導を発出したことを明らかにした。主な内容は、▶視聴者やスポンサー等の反応などを分析し、信頼回復に必要な対応を行うこと▶取引先や取材先との間に見られた悪しき慣習を一掃すること▶それらの対応の結果について5月中に総務省に報告すること――など。
5.16 「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案」が参議院本会議で可決・成立。同年5月23日公布。成立にあたっては、衆議院・参議院ともに附帯決議が採択されたほか、施行期日を政府原案の「公布日から1年以内」を修正し、来年の春闘に間に合わせることを念頭に、「2026年1月1日」とした。
5.28 「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI新法)が参議院本会議で可決・成立(6月4日施行)。AIの活用に際し、国民の権利侵害が生じた場合、国が開発事業者らを調査・指導することを明記するとともに事業者には国の調査などに協力する義務が課されるものの罰則規定はない。政府による人工知能(AI)分野に特化した日本で初の法律。
<海外>
5.1 米トランプ大統領が公共放送PBSと公共ラジオNPRへの助成金を打ち切る大統領令に署名した。NPRは「憲法修正第1条が認める権利への侮辱」と厳しく批判、あらゆる手段で大統領令に異議を唱えるとの声明を発表した。PBSも「違法な命令で、50年以上続いてきた教育番組の提供が危機に瀕する」と懸念を示した。