米国の第47代大統領となったドナルド・トランプ氏の2期目の就任式が1月20日、ワシントンD.C.の連邦議会議事堂で行われた。ニールセンによると生中継されたテレビの平均視聴者数は2,460万人。2021年バイデン大統領就任式の3,380万人から27%減、17年トランプ大統領1期目就任式の3,100万人から21%減と、過去2回から大きく減った。今回の視聴者数は同日10時30分から19時(米東部時間、以下同様)まで地上波とケーブル合わせて15局(ABC、CBS、NBC、Merit Street Media、Telemundo、Univision、CNBC、CNN、CNNe、FOXニュース、FOX Business Network、MSNBC、Newsmax、NewsNation、PBS)を対象に計測された(なお、2017年および21年と同一の局での計測ではない)。
視聴者数のピークは大統領が宣誓式に臨んだ12時15分前後で15局あわせて3,440万人。主要地上波・ケーブル局の11時30分~13時の視聴者数ランキング(以下、トータル/うち25~54歳の主要層)はトップがFOXニュース(1,140万人/240万人)。以下、ABC(490万人/120万人)、NBC(480万人/130万人)、CBS(460万人/110万人)、CNN(190万人/60万5,000人)、MSNBC(93万8,000人/14万8,000人)――の順だった。
トップとなったFOXニュースは保守系ケーブルニュース局でトランプ支持を前面に打ち出している。17年の就任式中継は12~12時30分の間で1,177万人(25〜54歳枠が299万人)だったので、わずかに及ばなかった。とはいえ、15局合計で過去2回から大幅減となった今回、17年比でほぼ横ばいだったのは唯一FOXニュース。21年のバイデン大統領就任式中継でトップだったCNNは81%減、MSNBCも75%減と振るわなかった。
地上波局のトップはABC。以下、NBC、CBSと続いたが3局とも21年の就任式中継を大きく下回っている。ABCはトータル視聴者数で36%減(25〜54歳で50%減)、NBCは同30%減(同45%減)、CBSはトータル、25〜54歳ともに24%減だった。
今回の就任式は保守派のFOXニュースと革新派MSNBCではっきり明暗が分かれたとニューヨーク・タイムズ紙(NYT)が報じている。トランプ支持者は楽しそうにFOXニュースの中継を視聴し、スタジオのアンカーらもお祭り気分。一方のMSNBCのスタジオでは、アンカーらが「なぜトランプが再選され、われわれはまたそれを中継しているんだ?」などとカメラの前で語り合い、その様子は「まるでお通夜だった(the funereal mood)」とNYTは書いている(冒頭画像)。FOXニュースとMSNBCの対照的な中継の様子は、政治的二極化がますます進んだ米国全体の縮図とも言える。
また今回の就任式はトランプ大統領につきものの「異例の事態」がいくつか見られた。いつもは野外で行われる大統領就任式だが、当日の気温が零下になったことから、トランプ大統領の希望で急遽、国会議事堂内で行われた。そして当日は、テスラ/スペースXのイーロン・マスクを筆頭に、Appleのティム・クック、Metaのマーク・ザッカーバーグ、Amazonのジェフ・ベゾス、Google(アルファベット)のサンダー・ピチャイ、OpenAIのサム・アルトマン、そして折しも米国での存続が注目されているTikTokのショウ・ジ・チュウと、巨大IT企業のCEOらが招待者としてずらりと並んだのも異例だった。日本からはソフトバンクグループの孫正義の姿が見られた。