毎日放送「教育と愛国」劇場版 5月13日から全国順次公開

編集広報部
毎日放送「教育と愛国」劇場版 5月13日から全国順次公開

毎日放送報道情報局の斉加尚代ディレクター(=写真㊤)が監督を務めるドキュメンタリー映画「教育と愛国」が、5月13日から東京のシネ・リーブル池袋などを皮切りに全国で順次公開される。2017年放送の「映像ʼ17 教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか」に新たな取材を加え、107分に再構成した。「映像」シリーズの映画化は「生き抜く 南三陸町 人々の一年」(12年、森岡紀人監督)に続き2作目。

番組は教科書の元編集者や執筆経験者らへの取材を通じ、「忖度」が求められる教科書検定制度や教育に向けられる政治的介入の現状を描写し、17年度のギャラクシー賞大賞を受賞した。映画では中学校の教員などへのインタビューや、日本学術会議の会員任命拒否問題、「表現の不自由展かんさい」など近年の動向を盛り込み、放送時よりさらに学問や表現が歪められていることに警鐘を鳴らした。中でも「日本学術会議の一件で人生最大のギアが入った」と斉加監督。コロナ禍で教育現場がますます疲弊し、教育が子どもの方を向いていないことへの危機感も後押しし、「これまでの自身の仕事に満足せずに挑戦したい」と映画化に踏み切った。

年間3本を制作する「映像」のルーティンからは一旦外れ、ニュース部門のディレクターが代役を担った。観客がお金を払って見る映画という形式へのプレッシャーはあったものの、番組制作で培った経験をぶつけた。コロナ禍を理由とした取材拒否にも多数遭遇。教科書が工場で印刷される場面の撮影なども断られたという。

本作のターゲットは、と問われると「全くない」ときっぱり。「いろいろな人に見て語ってほしいし、多様な解釈を歓迎したい。正解を提示できない苦しさはあるが、見る人を信じて、閉塞状況を変える議論につながってほしい」と期待を寄せる。さらに、ドキュメンタリー番組を映画化する近年の動向にも触れ、「表現の自由はここまでできる、と本作で示すことで、ひとつのモデルになれば」とも語った。

4月15日には、1年がかりで執筆した書籍『何が記者を殺すのか 大阪発ドキュメンタリーの現場から』(集英社新書)も刊行。「教育と愛国」を含む4番組の制作背景から、民主主義と報道の土台を問いかけた。「世界を揺るがす事態が次々に起きている。教科書を書き換えることが何につながるか。最悪は戦争だということを強く意識した」。

5月13、14日には、シネ・リーブル池袋およびアップリンク吉祥寺で、15日には京都・京都シネマや大阪・第七藝術劇場で、監督や澤田隆三プロデューサーらによる舞台あいさつなどを予定している。

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