【メディアリテラシー】テレビ愛媛  戦後80年体験者の声拾い 高校生が記憶を未来へつなぐ

編集広報部
【メディアリテラシー】テレビ愛媛  戦後80年体験者の声拾い 高校生が記憶を未来へつなぐ

民放onlineでは、通年企画として各社が実施しているメディアリテラシー向上のための活動を随時紹介していく(過去の記事はこちらから)。今回は、テレビ愛媛が実施する「"自分で取材し事実を知る" SNS社会のメディアリテラシーと高校生が取材し伝える戦後80年」について取材した。なお、民放連の2025年度メディアリテラシー活動助成の対象事業に選定されている。(編集広報部)


戦後80年、高校生と共に記憶をたどる

戦後80年を迎える2025年、テレビ愛媛は愛媛大学附属高校の2年生と共同で、戦争体験者の証言を記録・編集するメディアリテラシー活動を展開している。テレビ愛媛報道制作局長の片上裕治氏は「若い世代のテレビ離れが叫ばれる中で、無理にテレビを見ろとは言えないが、テレビがどんなことをしているかは知ってほしいと考えた」と語り、企画の背景を明かす。

プロジェクトが始動したのは2025年2月。テレビ愛媛が同校の1年生(当時)を対象に、SNS社会における情報の見極め方などをテーマにメディアリテラシーに関する授業を実施。その中で、戦後80年に戦争体験者の声を聞き、映像コンテンツを制作する取り組みを提案したところ、23人の生徒が参加を希望した。ある生徒は「コロナ禍で広島への修学旅行が中止になったため、戦争体験者の話を直接聞いてみたかった」と参加の決め手を語る。

自ら取材先を探し、現地にも足を運ぶ

参加生徒はテレビ愛媛の見学を経て、5班に分かれ、6~7月に戦争体験者へのインタビューを実施。質問案も事前に練り上げ、一部の班は自ら取材先を探した。ある班は、戦闘機を隠すための「掩体壕(えんたいごう)」の話を聞き、実際に現地を訪れるなど追加取材も行った。片上氏は「高校生が当時はやっていた遊びなど、身近な視点から質問を投げかけ、話を引き出していた。こちらも学ぶことが多かった」と振り返る。

インタビュー動画の編集作業にも生徒らが参加。1時間程度のインタビューを25分に短くした動画から、それぞれが考える伝えたいエピソードをピックアップし、5~10分程度の動画にまとめ、ナレーションも自ら吹き込んだ。テレビ愛媛のスタッフからは「著作権への配慮」や「情報の出典明示の重要性」など、映像制作における基本を学んだ。最終的に、テロップや資料映像を加えた完成版は、テレビ愛媛のウェブサイト(※)で公開されている。

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<インタビューの文字起こしからどの場面を使うか議論、そのうえで動画を編集した 試行錯誤の跡が残る>

発表会で語られた学びと気づき

制作したコンテンツの発表会が7月31日に同校で開催された(=冒頭写真)。発表に際し、生徒からは、「多くの人に見てもらうために5分以内にすることを意識した」「視聴者に誤解を招かないような表現、分かりやすい表現を意識してコンテンツを制作することが難しかった」「取材から編集までに携わりテレビの裏側を知れて貴重な体験だった」などの感想が寄せられた。片上氏は「同じインタビュー映像を使っても、班ごとに異なる編集となった。それで良い。正解はなく、伝えたいことがあるのが報道だ。そのうえで、誰が作ったかを明示することが信頼につながる」と総括した。

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<テレビ愛媛の片上氏>

同校の吉村直道校長は「今や誰もがSNSで発信者となる時代。自分の関心だけでなく、その先にいる他者を意識して発信することは、良い学びのきっかけになる」と活動を評価する。

テレビ愛媛では8月15日午後6時9分から『EBCライブニュース』内で高校生らの活動をまとめたニュース特集が放送される予定だ。

※テレビ愛媛ウェブサイト えひめ戦後80年~未来に伝える~
愛大附属高×テレビ愛媛 戦後80年プロジェクト
https://www.ebc.co.jp/news/2025peace/

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