アマゾンAVODサービス「Freevee」 ドイツでもサービス開始 当初計画を早めて競争激化に対応

編集広報部

8月3日、米アマゾンがドイツ市場で新たなサービス「Freevee」を開始した。これは、同社のプライムビデオと併設して提供される広告付きの無料動画配信サービス(AVOD)で、アカウントを作成すれば有料会員に登録することなく、無料で映画やテレビドラマを楽しめる。オンデマンドだけでなく、英BBCのテーマチャンネル(歴史、トラベル、料理......)などのストリーミング視聴もできる。

【サイズ変更済み】写真1 Freeveeコンテンツが表示されている画面 PC ブラウズ版.jpg

<タブレットやスマホ用のプライムビデオアプリ、アマゾンのFire TVスティック、
PC(ウェブサイト)経由で無料コンテンツにアクセス可能となる>

挿入される広告の量は、利用者の視聴時間数によって差をつけており、アマゾン.de(アマゾンのドイツ版サービス)の「Freevee」担当者は、1時間に9分間程度のCM挿入を想定していると話している。欧州では、番組放送時のCM量を1時間で最大12分と規定しているので、「Freevee」は放送並み、または放送より少しCMが少ないサービスとなる見込みだ。当然ながら、広告視聴を避けることはできない。

 無料で楽しめるコンテンツには、アマゾンのオリジナル作品のほかに、BBCの人気ドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』や、米CBSの『犯罪予知ユニット(Person of Interest)』など、ライセンス購入した作品がラインアップされている。この多くは映画・テレビ番組のデータベース会社・IMDbAVODサービス「IMDb TV」から提供されているが、これは同サービスが今年4月末にアマゾンプライムビデオのプラットフォームに統合されて「Freevee」と改名されたためだ。品揃えは有料のプライムビデオと比べてしまうと見劣りするが、アマゾンはAVODの拡充に力を入れており、年内にオリジナル作品の枠を7割増やすと発表している。

ドイツでの「Freevee」立ち上げは、昨年9月のイギリスに次いで、世界で2番目の海外展開となる。アマゾンはドイツ進出を当初の予定(2022年末まで)より早めたと言われている。この背景には、ドイツVOD市場の競争激化がある。NetflixDisney+に加え、年初にピーコック(NBC)とDiscovery+が市場に参入した。シェア争いが厳しくなるなか、プライムビデオは9月に料金値上げを行うことにしており、SVOD契約を解約する顧客をアマゾンのサービス環境にとどまらせるために「Freevee」の開始を急いだとも見られている。歓迎する声もある一方で、これまでアマゾンプライムで視聴できた作品が「Freevee」向けコンテンツとなり、「広告を見なくてはならなくなった」との声も出ている。

【サイズ変更済み】写真3 アマゾンPrimeVideoのHome画面から.jpg

<アマゾンでは動画コンテンツのオンラインレンタル(PPV)も可能。
作品紹介の左上に、「€(PPV)」「Prime(SVOD)」「Ads(広告入り)」との
ラベルが付けられており、一目で価格設定がわかるようになっている>

 「Freevee」では、英語制作のドラマでドイツ語(吹き替え)しか提供されず、字幕がつかない作品が多い。また、ストリーミングコンテンツに、いわゆるEPGがないため番組の開始時間を把握するのが難しいうえ、配信途中でアクセスした場合、アプリ上でコンテンツの巻き戻しができないなど使い勝手の悪さも指摘されている。

【サイズ変更済み】写真2 ipadのアプリ経由のスクショ メディチ1話.jpg

<タブレットのプライムビデオアプリ経由で、無料動画を視聴する場合の画面。
画面右上にFreeveeのロゴと、広告入りで無料視聴との表示がある。
人気英語ドラマ『メディチ』の言語は1(ドイツ語吹き替え)で字幕がない>

大手SVODの中ではアマゾンがAVODとのハイブリッド動画サービスを開始して先鞭をつけた格好だが、Netflixは来年から広告入りサービスを始めると発表し、Disney+AVODを計画している。アマゾンは、「Freevee」を「視聴者が待ち望むコンテンツを提供する最高のAVODサービスとして確立することを目指す」としているが、好実績を上げられるかどうかは今後の改善次第だろう。

※写真はいずれも稲木せつ子氏(ジャーナリスト・在オーストリア)提供

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