日本テレビ『月曜から夜ふかし』に「放送倫理違反」 BPO検証委が意見書

編集広報部
日本テレビ『月曜から夜ふかし』に「放送倫理違反」 BPO検証委が意見書

BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会(=小町谷育子委員長、以下「検証委」)は1021日、日本テレビ放送網(以下、日本テレビ)が2025324日に放送したバラエティ番組『月曜から夜ふかし』に、「放送倫理違反があった」とする意見書を通知・公表した(意見書全文はこちらから)。

検証の対象になったのは、同番組内の街頭インタビューにおける中国出身の取材対象者の発言が恣意的な編集によって実際の発言とは全く異なる内容で放送されたシーン。番組本編だけでなくPRなどでも放送された。放送終了間際に、ソーシャルメディア上で取材対象者が放送された内容の発言はしていない旨を投稿したため事態が発覚した。なお、日本テレビは、放送日の翌日、番組公式ウェブサイトに日本語・中国語でお詫びを掲載したうえで、512日に再発防止策を公表。519日放送の番組内でMCによる謝罪を行った。

検証委は、▼番組制作過程の不正や番組内容に放送倫理上の問題点がないかをチェックする制作幹部の責任が不明確であったこと、▼インタビュー素材と対照して確認する作業が行われなかったことなど現場担当者による不正抑止のための仕組みの機能不全、笑いやオチへの一方的な期待や他国文化への配慮の不足などの不正リスクの軽視につながる組織風土があったこと――を問題点として指摘。そのうえで、インタビュー素材を恣意的に編集した事実に基づかない虚偽の内容を放送し、その結果、取材対象者がソーシャルメディア上で想定外の誹謗中傷等にさらされる事態となったことは、民放連放送基準および日本テレビ「取材・放送規範」などに反しており、放送倫理違反があったと判断した。

21日の公表時に行われた会見(=冒頭写真)で、検証委の小町谷委員長は「外国の生活様式や食文化を笑いの対象とする際は、民放連の放送基準やその根底にある『人権に関する基本姿勢』を踏まえて、多様性を包摂する人権尊重の精神に基づき、問題がないかをより一層慎重に吟味すべき」と付言した。また、大村恵実委員から「番組コンセプトの反映だけでなく、法令順守や放送倫理、制作過程の管理においてもクオリティコントロールが必要」、水谷瑛嗣郎委員から「視聴者の信頼を損ねただけでなく、取材対象者がソーシャルメディアで中傷をうけるきっかけを作ってしまったことを放送局には重く受け止めてもらいたい」、毛利透委員から「気づける機会があったにもかかわらず、恣意的編集が放送まで残ってしまったことは、番組制作組織において大きな問題があると思わざる得なかった」との発言があった。

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