放送倫理・番組向上機構(BPO)は7月14日、設立20周年記念セッションを千代田放送会館で開催した。「変わる視聴者 明日の放送は」と題し、2部構成で実施。コーディネーターはいずれもフリージャーナリストの池上彰氏が務めた。
はじめに、大日向雅美理事長が「BPOは設立時の緊張感を忘れず、放送界と視聴者・リスナーをつないでいく」とあいさつした。
第1部は「SNS全盛時代!放送局は炎上やネット世論にどう対応していくべきか」をテーマに討論した。山口真一・国際大准教授がマスメディアの発信が個人への誹謗中傷の原因となることがあるとしたうえで「マスメディアは自身の影響力を認識すべき」と提起。瀬地山角・東京大大学院教授は放送局のジェンダー意識の遅れに触れ、CMも含め放送での表現は「社会の半歩先を行く必要がある」と意識改革の必要性を訴えた。曽我部真裕・BPO放送人権委員会委員長はSNSの誹謗中傷によって出演者が亡くなった事案を示し「放送局には出演者の身体的・精神的健康に配慮してほしい」と求めた。
第2部は番組制作者に小町谷育子・BPO放送倫理検証委員会委員長が加わって「オワコン化しないために難題山積の放送業界が取り組むべきことは何か」をテーマに討論。『サンデージャポン』などを担当するTBSテレビの久我雄三・情報制作局チーフプロデューサーは、「大事なことをニュースや報道で知ってもらうために(サンデージャポンのような)柔らかい情報番組がきっかけになるのでは」と述べた。
佐野亜裕美・関西テレビ制作局ドラマプロデューサーは、手掛けたドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』で性的シーンの撮影をサポートする"インティマシーコーディネーター"に初めて加わってもらったことを紹介し、「人権を守りながら撮影を進めることができ、演出も楽になった」と経験をもとに発言。
『ダウンタウンDX』などのバラエティ番組を制作してきた西田二郎・読売テレビコンテンツ戦略局専任部長は、「現場は忙しく、BPOの意見を受け止める時間がとれず、"対症療法的"になっている」と指摘したうえで、制作者の考えているプロセスを大衆に伝える必要があるとの考えを示した。