5月19―21日、G7広島サミット2023(以下、G7サミット)が開催された。岸田文雄首相が議長を務めた今回は「ロシアによるウクライナ侵攻」「核軍縮」「AI」などをテーマにセッションが行われた。G7首脳の広島平和記念資料館(原爆資料館)訪問や、急きょ決まったウクライナのゼレンスキー大統領の対面参加など、印象的な場面が数多くあった。
中国放送(RCC)テレビ・ラジオ、広島テレビ、広島ホームテレビ、テレビ新広島、広島エフエム放送)NHK広島放送局はどう伝えたのか――。民放onlineは各局に当日の自社制作番組の放送などについてアンケートを行った。その結果を「期間中の放送対応」「周知・広報などの取り組み」に分けて紹介する。今回は「周知・広報などの取り組み」。「期間中の放送対応」はこちらから。
歌で機運醸成
開催前から各局は番組やイベントを通じてG7サミットの機運醸成に取り組んだ。RCCテレビは夕方ワイド『イマナマ!』で2月ごろからサミットに向けた取り組みや交通規制情報を取り上げ、RCCラジオでは5月14日に『おはようラジオ50周年企画 G7サミット直前スペシャル「広島の声」』(12・00―14・00)を編成し、市民のインタビュー音声を挟みながらサミットの歴史や意義を伝えた。NHK広島放送局は2月10日、『コネクト「私も参加できる?! G7広島サミット」』(19・30―19・55)を組み、広島から伝えたいことを、どうすれば世界に発信できるかの具体策を紹介した。また、民放テレビ4局とNHK広島放送局は共同キャンペーンスポットを放送。各局のアナウンサーが登場し、盛り上げを図った。
広島テレビは平和の祭典「#HIROSHIMAミライバトン」を広島県らで構成する広島サミット県民会議との共催で5月4日に開催し、1万2,000人ほどの観客がエディオンスタジアム広島に集まった。1,000機のドローンを使い、折り鶴などを表現したショー(=冒頭写真)やEXILEがサミット応援ソングとして書き下ろした「Reason」などを披露した。このほか、広島に縁のあるさまざまなアーティストが登場し、一部パフォーマンスには高校生たちも参加した。
広島エフエム放送は4月27日放送の特番『こどものミライをおもううた』で3つの歌をピックアップ。「Reason」、姉妹デュオのMebiusによる「ここにいるから」、映画音楽作曲家の世武裕子による「みらいのこども2023」それぞれに込められた思いを紐解いた。また、5月5日には特番『国連ユニタールと広島~知って伝える、僕らのHIROSHIMA』(17・00―18・00)を組み、G7各国出身で広島在住の若者が語り合うイベントの模様を、関係者へのインタビューとともに紹介した。
広島ホームテレビは、ポルノグラフィティと広島県がタイアップした応援ソング「アビが鳴く」を5月12日から番組やCMで使用し、サミットの機運醸成を図った。
中国放送は5月18日―6月11日、県内の企業25社と協力し、戦後復興や未来に向けた取り組みを紹介する展示会「Pride of Hiroshima展」をひろしまゲートパークで開催。広島で創業し事業を展開する各社による取り組みを紹介するパネルや各社が保存する貴重な品々を展示し、期間中に約1万7,000人が来場した。*¹
海外メディア向けにアピール
各国のメディアも広島入りしており、メディアの取材拠点となる国際メディアセンター(IMC)には国内外の記者が滞在した。各局は展示などで海外メディア向けに広島のPRを図った。民放テレビ4局とNHK広島放送局が共同で番組上映会を実施(=写真㊦)。各局が制作した核や平和に関連する番組に英訳を付与し、民放は7つ、NHKは14の番組を上映した。
NHK広島放送局はこのほか2つのブースを設置。立ち入りができない原爆ドーム内部を、VRで疑似体験できる装置を出展した。もう1つは「被爆者体験継承対話ブース」で、被爆者の女性に行ったインタビューを収録し、女性が映っている画面に質問すると、AIが適切な回答を選び、インタビュー映像を再生する装置も設置した。
広島ホームテレビは、「文化都市」としての広島の魅力を発信する映像展示「BARREL OF HIROSHIMA」を企画制作した。積み上げられた日本酒の酒樽にプロジェクションマッピングで、神楽や備後絣、もみじまんじゅうなど広島の伝統文化や名産を投影した。田村洋子編成グループ長は「国内外多くの人々が足を止め鑑賞してくれた。放送外でも広島の魅力を発信する一翼を担えた」と手応えを語る。
<「BARREL OF HIROSHIMA」>
広島テレビは2022年9月から県内の子どもや観光客、著名人らに折り紙で鶴を折り平和への思いを語ってもらう「折り鶴キャンペーン」を放送していた。IMCでも折り鶴をアクリルボックスに入れて展示した。
中国放送は、小学館と手塚プロダクションとともに2015年に制作した漫画「まんがで語りつぐ広島の復興」の英語版を「広島サミット県民会議」に300冊寄贈。漫画はIMCの一角に置かれ、持ち帰れるようにした。*²
放送に入りきらない情報を配信
YouTubeでライブ配信を行った事例も。広島ホームテレビはテレビ朝日とともに100時間連続で、広島テレビは日本テレビとともに85時間連続で配信を実施した。ゼレンスキー大統領の広島到着の場面などで、同時視聴者数が多くなったという。
テレビ新広島はサミットについて学べる特設サイトを運営。開催1カ月前からは住民が気になっていたサミット期間中の生活情報を独自に発信。特に交通情報には感謝の声があったという。サミットに関するニュースを記事化するほか、海外の人々に向け、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語の4言語でニュースを発信。同社の西山穂乃加アナウンサーをアバター化したAIアナウンサーが原稿を読み上げた。
中国放送は自社サイトとアプリで特設サイトを公開したほか、番組や中継を配信で実施。中村知喜コンテンツビジネス局コンテンツセンター長は「直前の発表や変更が多発する状況で、地上波の放送時間内に収まらない情報発信を配信でカバーできた」としている。
*
「期間中の放送対応」はこちらから。
*¹、*²は2023年6月21日に追記しました。